吸血生物。



一口に吸血生物といって思い浮かべるのはなんだろう?

俺が思い浮かぶのは、まず蚊や虻、それから蚤などの昆虫。
昆虫ではないが、ヒルなんかも思い浮かぶ。
それから吸血コウモリ。
さらにチュパカブラや吸血鬼なんていう空想の産物も。


実際に蚊にさされたことの無い人なんて、まずいないだろう。
だが虻(アブ)に刺された経験のある人って、意外に少なそうだ。





アブに刺された経験。

子供のころ、俺はアブに手の甲を思いきり刺された経験がある。
オヤジと一緒に渓流釣りに行った時のことだ。
普通にロッドをふった瞬間、手の甲にぴとっとハエのようなのがくっついたのは今でも鮮明に覚えている。
チクっとした鋭い痛みを感じ、ぶんぶん手をふって振り落とそうと思ったのだが、ガッチリくっついたハエのような昆虫はビクともしない。


そのころの俺の年齢は、まだ10歳に満たなかった記憶がある。
実はその時まで虻という昆虫の存在を知らなかったのだ。


見る見る青ざめていく(ように見えた)手の甲を、近くにいたオヤジに見せると、オヤジは俺に近づいてきてあっさりとアブを叩き落した。
いや、あっさりというか、2〜3度叩かないと落ちなかったんだが。

そのアブは、実にしぶとかった。
一回叩いたくらいではひるまない。
2度3度叩いてようやく俺の手の甲から落ちた。

落ちたと思ったら飛んで逃げてったのには驚いたが。
普通ならツブれて死ぬだろうに。





毒があったりしたら嫌なので、刺されたばかりの傷口から口で多少の血を吸い出して川に吐き捨てた。
だが、既に1円玉くらいの腫れができていた。
すぐに消毒はしたが、痛いわ痒いわでかなり辛かった。
釣りを終えて家に戻った時には、その腫れが10円玉大にふくれていた記憶が残っている。




家に戻る最中に、オヤジがアブについて教えてくれた。
主に家畜から血を吸う昆虫であって、蜂とは全く違う昆虫だと。
牛なんかがやる砂浴びは、そういう虫を身体から落とす意味があるとかなんとか。
家畜に限らず、大型の哺乳類はどんな種類でも被害にあう可能性があるみたいなことも言っていた気がする。




その後、昆虫図鑑(子供向け)でアブのことを調べてみると、なんでもメスが産卵のために血を吸うということがわかった。
子供だった俺は、まさか自分の手に卵でも産み付けられているのではないかとビビった記憶がある。
ただ、日本の蚊や虻は、どうやら養分として動物の血液が必用となるだけであって、血を吸った対象に卵を産み付ける種は少ないらしい。

実際1週間もしたら、腫れは奇麗さっぱりなくなったし。






その手の甲にアブ事件以降、幸いにも刺された経験は無い。
(蜂はあるけど)
そして、その類の刺す昆虫についての知識は増えた。

ツェツェ蝿とか、恐怖の対象としての昆虫。
ツェツェ蝿に刺されると、眠り病にかかって死ぬことがあるとか。
この蝿のことを知ったのは中学生くらいの時だったろうか。
寝たまま死んでいくという怖い病のイメージが強い。
マラリア原虫を運ぶハマダラ蚊も怖い。

ただ、これらの怖い昆虫は、主に亜熱帯から熱帯にかけて生息しているだけで、日本にはいない。



心底日本に住んでいて良かったと思う。
あのときのアブが、ツェツェ蝿だったら、俺は眠りながら死んでいったのかもしれないのだから。


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