不思議なスイッチ

車検には手順がある。

まず、検査員が車検車両の状態をチェックする受け入れ作業から始まる。

それから部品出し、整備、修理をへて、完成検査というのが大まかな流れ。

受け入れ検査
  ↓
車検整備前の部品出し
  ↓
整備および、修理
  ↓
完成検査
  ↓
洗車や仕上げ作業
  ↓
納車

最近では効率重視の為に、これとは異なった順番や、
2つの手順が複合している場合も多い。


そして、これからの話は、とある日に入庫したスターレットの話である。



一見走り屋仕様のスターレットの受け入れ検査中に、俺はあることに気づいた。

ハンドルコラムの左下のパネルに、白いスイッチ? のようなものが跡付けされていたのだ。

最初は深く考えなかった。



整備作業に移り、あらかた終了して、完成検査待ちになる。

ほかの完成検査車両が、まだ検査中であり、俺は終わるのを待っていた。

時間に余裕があったので、そのスイッチがなんなのか気になりだす。

押すのでも引くのでもなく、回すタイプのスイッチ。
そう、ぱっと見、二層式洗濯機のタイマーのようだ。










俺はぴんときた!


「まわしたれ〜」
くいっと回すと、二層式洗濯機のタイマーよろしく、「じじじじじ」と音を出し始めた。
洗濯機が出す音そのものだ。
そのスイッチはゆっくりと時を刻んでいるようだった。


感のいい人なら、もうおわかりだろう。




確信を持って俺はエンジンキーをロックの位置まで戻した。

エンジン止まらない。

キーを抜いたって、止まるはずもない。


笑いをこらえながらタイマーを最初の位置まで戻してみると、予想通りエンジン停止。

一人で笑い出した俺を不信がる他のメカニック。













だって、洗濯機のタイマー

そのまま
ターボタイマーにしてるんだぜ?

笑うなって方が無理だ。



金が無いのか、受け狙いなのかわからないが、おそらく後者だ。


検査員I.Kさんにも教えたところで、一緒に爆笑。

「すげーよ。こんなの始めて見たよ」

I.Kさんも大喜び。

こんなタイマー考えた人に、このときはほんとに脱帽した。
ある意味素晴らしいセンスだと思ったよ。



*ターボタイマーについて*


ようするにターボタイマーは、エンジンキーの配線を乗っ取るところが基本。
乗っ取ったあとのスイッチの形状はどんなものでも良いということだね。
普通は市販のコンピューター制御のものを使う。

高いターボタイマーは、決まった時間にエンジンを始動させたりする機能までついている。
無線で遠方にある愛車のエンジンを始動させたりできるものだって存在する。
だが、そんな機能使うのって、雪国だけじゃないか?

安いターボタイマーってのも問題。
安いとは言え、そこそこ値段が張る。
それなのにエンジンをキーがOFFになった一定時間後に停止させるだけ。


さて、洗濯機のスイッチを考えてみよう。
この場合はコンピューターの代わりに、洗濯機のタイマーを使っている。
単純だが、
実は非常に合理的で安価なターボタイマーになっている。
配線さえ間違えなければ、ほぼタダでターボタイマーが実現できるのだ。
(二層式洗濯機のタイマーがいくらするかについては関知しないが)

エンジンを停止する前に自分で時間設定をしなければならないが、
二層式洗濯機の時間設定並に簡単にできてしまうのは、非常に便利だ。
なおかつ、ターボタイマーが必要なほど熱い走りをしてるなら、
エンジンやばいときは判るはず。そこでめいっぱいスイッチを回そう。
小ざかしいデジタルなターボタイマーで設定するのが、馬鹿らしくなるのが請合い。



さあ、受け狙い&実用性十分なこの技を、あなたも、れっつとらい!


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