冬期湛水水田のデコボコメンバー、「草」諸君を紹介する。なぜデコボコチームなのかは「冬期湛水水田水稲生育状況/ホタルイ君」を参照いただきたい。掲載情報については随時内容を追加、更新していく予定です。
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[名称] |
イヌホタルイ |
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[特性] |
菅原水田に繁殖するホタルイは正式には「イヌホタルイ」と言う。水生雑草であり、稲の最強のライバルと思われたが、病気にかかるという弱点があった。種子を付け繁殖するが根茎からも繁殖するらしい。菅原水田では、5月頃から小さいのが姿を現し始め、7月初旬まで猛威を振るった。(H15.8.5記) |
[一言] |
当初は稲最大のライバルと目されたホタルイであるが、その性質をよくよく観察していみると、思ったほど稲作に害を与えているわけでもないようだ。
菅原水田で最もホタルイが繁殖したのは、田植え時期に部分的に水田表面が湛水しなかった水田であるので、冬期から田植え以降まで継続的に湛水するのがホタルイ抑制のポイントかもしれない。また水田に撒く肥料もホタルイ繁殖に一役買っている可能性もある。(H15.8.5記)
今年の菅原水田について言うと、稲刈りまでにすっかり枯れてしまったホタルイである。そのスレンダーな姿のため、特にコンバインのカッターに絡むなど、稲刈りにも支障を与えることもなかった。
ホタルイは種子をつけるが、多年生の草であり、根茎から増殖するほホタルイのほうが背丈が高く頑丈に育つようだ。(H16.1.19記)
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[名称] |
クログワイ |
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[特性] |
見た目も、特性もホタルイと瓜二つ。ただし、茎の中に房があり、指でつぶすとポキポキ鳴るので、ホタルイとの違いが分かる。またホタルイが主として種子で繁殖するのに対し、クログワイは根茎で増殖する。
根茎は数年間生き続けるので、根茎を除去するのが最も効果的な除草方法と言われている。このクログワイもホタルイと同じく病気にかかりやすい特徴を持っている(H15.8.5記) |
[一言] |
ホタルイに隠れて、あまり存在感を感じさせないクログワイであるが、生命力の強い根茎を持っているため今後の動向が注目される。(写真右の右側がホタルイ、左側がクログワイの断面)(H15.8.5記)
ホタルイは稲刈り時点で大部分が枯れてしまったが、クログワイは最後まで青々としていた。最後まで青々としているので、稲刈り時期の黄色い稲穂の中で、クログワイは容易に確認できるようになる。この時期、あちこちの慣行水田でもクログワイを確認することができたので、除草剤に対する抵抗力が強いのかもしれない。(H16.1.19記) |
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[名称] |
イボクサ |
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[特性] |
畦畔脇から水田に侵入し、繁殖する。上下方向の背丈はないが、横方向へ成長していく。茎の節々から分けつしていき、茎の再生力も大きい。稲刈り時には、稲刈り機械にからみつき、稲刈り作業に支障をきたす。病気にかかると茎や葉が赤く変色する。(H15.8.5記) |
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[一言] |
背丈もあまり大きくなく、地味な存在とも言えるイボクサだが、重心の低いイボクサはなかなかの根性の持ち主で、冬期湛水水田の寝技師的存在である。
横方向への繁殖力が強いが、深水管理で稲作を行えば、横方向への繁殖を抑制することもできる。(H15.8.5記)
イボクサは稲刈り時にコンバインのカッターに絡みつき、コンバイの稲刈り作業を何度か中断させた。9月初旬まではそれほど背丈の伸びなかったイボクサだが、落水後、急激に背丈が伸びたようだ。またイボクサは菅原水田の稲を負かした唯一の草でもある。(H16.1.19記)
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[名称] |
タイヌビエ |
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[特性] |
菅原水田に繁殖するヒエは正式には「タイヌビエ」と言う。タイヌビエの他にイヌビエと言うヒエもあるが、こちらは水田のように湛水している場所にはあまり生えず、畦畔や湛水していない休耕田に多い。
タイヌビエは水田雑草では最もポピュラーな草であるが、稲と同じイネ科であるため、稲と良く似た特徴を持っている。
6月〜7月頃の生育中期には稲と姿がそっくりなため、見分けることが難しい。8月になると稲より大きくなり、稲とは異なった穂をつけるので容易に見分けることができる。また、土中の養分をイネと競合して吸収してしまうので、稲の収量に与える影響も大だ。
ヒエは乾田を苦手にしているらしく、排水の良い田んぼにはあまり生えてこない(H16.1.19記) |
[一言] |
水田雑草と言えば、まず最初にヒエを想像する人も多いと思う。それだけ稲の大敵として意識されることの多いヒエであるが、今年の冬期湛水水田の結果を見る限り、除草剤を用いなくても、ヒエはあまり勢力を拡大しなかった。
これは冬から継続して水田を湛水状態にする冬期湛水水田の効果とも考えられ、発芽に酸素を必要とするヒエにとって冬期湛水水田は発芽し難い条件となっている。とは言いつつも菅原水田では少なからずヒエの繁殖帯が見かけられが、これは田面の高い部分に十分に水が行き渡らなかったためと考えられる。
(H16.1.19記) |
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[名称] |
ガマ |
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[特性] |
風に乗って種子が飛来し繁殖するが、一度根茎が根付けば、根茎からも繁殖する。除草対策には耕起が最も効果的と言われているが、残念ながら菅原水田は不耕起を継続しているため、耕起により除草は行えない。しかも病気にも強いとの情報もあるので要注意である。ただし面的には繁殖しないため、一本づつ引き抜いていけば除草はできる。(H15.8.5記) |
[一言] |
上下方向の背丈が大きく、水田の草の中では目立つ存在。菅原水田では不耕起で稲作を行っているので、効果的な除草対策はない。地道に一本々抜いていこうとも思うが、とりあえず当面の期間、その動向を見守る予定である。(H15.8.5記) |
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[名称] |
コナギ |
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[特性] |
ホタルイ、クログワイと同じ水性雑草であり、窒素吸収力も旺盛で、種子生産量も多い。そのため無農薬水稲栽培では最も問題となる草である。コナギに良く似た草にミズアオイという草があり、こちらは絶滅危惧種に指定されている。
(H16.1.19記) |
[一言] |
無農薬水稲栽培では最も問題となるコナギであるが、菅原水田には少ししか生えていない。これば、冬期湛水水田に形成されるトロトロ層が、コナギの発芽を阻害したためと考えられる。冬期田水水田の抑草効果、面目躍起といったところであろう。(H16.1.19記)
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[名称] |
セリ |
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[特性] |
夏には白い花をつける多年草の草である。畦畔側に多く見られ、水田の奥には侵入しないようである。(H16.1.19記) |
[一言] |
春の七草として食用にも供されるセリである。血圧を下げる効能もあるようなので、田んぼに盛大に草が繁殖し、草達の勢いを見て血圧が上がったときには、セリのお世話になろうと思う。
田んぼでも畦畔側に多く、なぜだか田んぼの奥ではほとんど見ることができない。根茎は1m以上ありそうで、そこから枝のように茎が伸びている。この根茎が複雑にからみあいながら群生しており、まるでセリのアミダクジのようである。(H16.1.19記)
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[名称] |
アオウキクサ |
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[特性] |
田んぼでは最も身近なウキクサである。生長した稲が、日光から水面を遮るようになると、増殖が盛んになる。
(H16.1.19記) |
[一言] |
アオウキクサが増えすぎると水温を下げ、稲の生育を害すると言われる。しかし水面を覆うことで、水中に日光が届くのを遮断し、雑草の発芽を抑制する効果もある。さらに付け加えると、水中に酸素を供給し、水面下の生き物を活発にさせる効果もある。アオウキクサは稲作にとって良い効果と悪い効果の両方をもたらす。何事も一刀両断には割り切れないのは、人の性格も、草の性格も同じである。(H16.1.19記) |
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[名称] |
ウキクサ |
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[特性] |
このウキクサもアオウキクサと同じく、田んぼでは身近なウキクサである。アオウキクサと混生して繁殖している場合が多い。(H16.1.19記) |
[一言] |
アオウキクサと良く似た性格であるが、アオウキクサと混生しながら共生しているようである。(もしかしたら知らないところで競合しているかもしれない。)アオウキクサより葉っぱが二周りほど大きいので容易に区別がつく。
(H16.1.19記) |
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[名称] |
イチョウウキゴケ |
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[特性] |
環境庁レッドリスト種のうち絶滅危惧T類にランキングされているイチョウウキゴケ。コケというくらいだから、コケの仲間であり、イチョウの葉のような形をしている。
(H16.1.19記) |
[一言] |
菅原水田ではシャジクモの次に確認された絶滅危惧種である。草でなくコケであるイチョウウキゴケであるが、注意して観察しないかぎり、他のウキクサと区別することもない。田んぼにはいろいろな草があるもんだと感心させられる。
(H16.1.19記)
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[名称] |
シャジクモ |
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[特性] |
環境庁レッドリスト種のうち絶滅危惧T類にランキングされているシャジクモ。同じ藻類のアオミドロに比べて色が濃く、一本々の茎も太い。(H15.8.5記) |
[一言] |
長期間湛水状態にある菅原冬期湛水水田はシャジクモの絶好の繁殖地になっているようで、シャジクモの姿を見かけることも多い。
シャジクモは水生動物の絶好の産卵場所にもなるので、「来る者を拒まず」主義の冬期湛水水田にとっては欠くことの出来ない存在でもある。(H15.8.5記) |