「まるであなたは日陰に咲く野菊のようだ。」場末の飲み屋でそんな口説き文句を使ってみたいが、畦(あぜ)を歩くと、逞しくも可憐な雑草花に出会うこうがある。
名も知らぬ雑草花たちであり、時には草刈機にクビチョンパされる雑草花たちである。
そんな雑草花にもそれぞれの人生(草生)がある。緑の畦に散りばめられた雑草花たちは宝石のように美しい。そんなけなげな雑草花たちを紹介する。
解説:5時からNPO「たかまん商事」富樫さん。
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[名称]
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セイヨウタンポポ 西洋蒲公英
キク科タンポポ属
明治時代初期に札幌農学校のアメリカ人教師が野菜として持ち込んだという説があるそうだ。サラダにするといいらしいが,うちではもっぱら飼ってるウサギのえさである。
頭花を構成しているのはすべて舌状花で,みな雄しべと雌しべを持っている。しかし,受粉せずに自然に成熟し種子をつくることができるという。これを無性生殖とかクローン繁殖と呼ぶらしい。
花粉が必要なカントウタンポポの結実率は70%なのに,セイヨウタンポポは96%で,しかも1年中花を咲かせ,綿毛は在来種より小さく飛びやすい。これじゃ在来種はかなわないなぁ。
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[名称]
[解説]
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ヒメオドリコソウ 姫踊り子草
シソ科オドリコソウ属
明治時代中期の1893年に東京で確認されたのが最初といわれるヨーロッパ原産種で,日本全土及び世界中に帰化している越年草である。初夏になると枯れて,秋に発芽し越冬するため,冬作畑ではしばしば雑草となるようだ。
在来種のオドリコソウに似て小さいことからヒメがついたといわれている。花穂が鹿踊りの姿に似ていることが名前の由来と思われると書いてある本もあった。
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[名称]
[解説]
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オオイヌノフグリ 大犬の陰嚢
ゴマノハグサ科クワガタソウ属
ヒメオドリコソウよりやや早い1880年ごろ東京で確認された西アジア,中近東原産で,日本全土及び世界中に帰化している越年草である。花は直径7〜9mmのコバルトブルーの4弁に見えるが,付け根付近でつながっている。
フグリとは犬の陰嚢すなわち睾丸のことで,実の形が似ているということからつけられた在来種のイヌノフグリに由来することは有名な話である。でもどちらのイヌノフグリもまじまじと見たことがない。
タチイヌノフグリやオオイヌノフグリなどの帰化植物の登場により紅紫色の花をつけるイヌノフグリは国・宮城県で絶滅危惧U類に選定されたまれにしか見られない花になってしまったからである。
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[名称]
[解説]
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タネツケバナ 種漬花,種付花
アブラナ科タネツケバナ属
前年のうちに芽生えて冬の間に生長し,春早く花を咲かせる在来種の越年草又は一年草。花は日が当たらないと開かないらしい。
稲作では種籾を蒔く前に発芽しやすいように水に漬ける。タネツケバナが咲くのはちょうどその作業に適した季節であるというのが一般的であるが,実が熟すと種がパチンと四方八方にとび散り,いたるところで発芽させる繁殖力の強さから「種付け馬」の意味合いを借用し名前がついたと書いている本もあった。
帰化植物としてコタネツケバナや宮城県から進入したと伝えられているミチタネツケバナという非常に良く似た種もあるようだ。
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[名称]
[解説]
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ヘビイチゴ 蛇苺 バラ科ヘビイチゴ属
花を見ると生育環境が同じであるキジムシロ属のオヘビイチゴに似ているが,ヘビイチゴの花の直径が2倍近く大きく,花期も早いようである。
ヘビイチゴの実は赤くおいしそうだが味がなく水分も少ないことからおいしいとはいえない。それを知ってか知らずか子供たちに食べてごらんと言ってもなかなか食べようとはしない。名前はヘビが出そうな環境に見られるからとか,実がまずいからとか,茎がヘビのように這うからなどいろいろ説があるようだ。田植えの季節はあぜを彩り美しい花である。
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[名称]
[解説]
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ムラサキサギゴケ 紫鷺苔
ゴマノハグサ科サギゴケ属
最初に白花が見つかり,発達した下唇がサギソウの唇弁に似る苔のような花ということでサギゴケと名づけられた。その後,母種である紫の花が見つかりムラサキサギゴケと名づけられたが,両者を区別しない考えもあるらしい。
ヘビイチゴと同じ時期にあぜを色鮮やかに彩っている。雌しべの花柱の先が大きく広がって2裂し,その内側が柱頭になっているが,柱頭に触れたとたん花柱の先が閉じ,しばらくすると再び開く。もらった花粉をしっかり受け止めるためという。よく似ているトキワハゼは花が咲いている期間が長い。
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[名称]
[解説]
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ハコベ 繁縷 ナデシコ科ハコベ属
ミドリハコベともいい,コハコベ・ノミノフスマ・ウシハコベ,皆ハコベに似ている同じ仲間である。
春の七草でおなじみのハコベラであり,鳥の餌として売られている。我が家のウサギちゃんも大好物。
小さな花を良く見ると10枚あるように見える花弁は,深く裂けた5弁であることがわかる。夕方には花を閉じるが,その際花の中で行われる雄しべが雌しべの柱頭に花粉をつける「同花受粉」は,確実に種を残すための生き残り戦略である。
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(参考文献)
「山渓ハンディー図鑑1 野に咲く花」」1996年 林弥栄,平野隆久
「小学館フィールド・ガイドシリーズ18 野草のおぼえ方 上」1998年 いがりまさし
「POINT図鑑 花の顔 実を結ぶための工夫」2000年 田中 肇,平野 隆久
「日本帰化植物写真図鑑」2002年 清水矩宏,森田弘彦,廣田伸七
「山渓名前図鑑 野草の名前 春」2004年 高橋勝雄
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