
2年前くらいに発症して自分では「大阪病」と診断を下していた鼻づまり、ものすごく辛いというほどじゃないので放っておいた。でも、寝ているときにイビキをかくらしいのである。この間、朝起きたら「コウのイビキで一睡もできなかった」とポチが言った。一睡もできなかったというのはウソだと思う。ジジイになったから目が覚めやすくなっただけじゃないかと私は思う。しかし、「今週は絶対に病院に行ってきて」とコワい顔で言うので仕方なく前に行った耳鼻科とは違う耳鼻科に行ってきた。
前に行った耳鼻科は体の乾燥によって起こるものだからとにかくたくさん睡眠をとりなさいと言って風邪薬をくれた。その診断はともかく、花粉症とかじゃないのは明らかである。自分でも花粉症の自覚はないし、花粉症の人とかの症状に比べれば明らかに軽いし、大阪に行ったときだけちょっとヒドくなるのを我慢すればいいやと思ってやりすごしてきた。
病院は嫌いだ。できればどんな病院も行きたくない。それに、花粉症でもアレルギーでも病院へ行ったからといってすごくよくなったという人をあまり見たことがない。よくなったように見えてときどきものすごく具合が悪そうにしているのを見ると「病院へ行ったって同じじゃん」としか思えない。
私が子どものころ、母と弟は耳鼻科へ通院していた。6人家族の中で鼻が悪いのは母と弟だけで、父はよく「鼻が悪いやつは頭が悪い」と言っていた。生まれつき鼻の悪い人はわりと多いんだろうか。それとも昔は多かったんだろうか。同級生でも耳鼻科へ通院しているという子がわりといた。母と弟もすごく特別な人という感じではなくて、今日は耳鼻科でだれそれさんに会った、あそこのだれだれちゃんもあの耳鼻科に通っている、どこの耳鼻科がいい悪い、そういう耳鼻科話がわりあいフツーにされていて耳鼻科への通院は流行っていたような気がする。
だから父が「鼻が悪いやつは頭が悪い」と得意気に言うたび、耳鼻科に通っている子を数人思い浮かべることができた。そして「なるほどなあ」と納得することができた。私が「そういえばそうだね」と言うと父はますますうれしそうだった。
母は私が小さいころからずうっと耳鼻科に通院していたにもかかわらずいつも父に「イビキがうるさくて眠れない」と叱られていた。イビキがうるさくて眠れないと言うわりに父は睡眠不足の顔をしていなくて、そう言う父が楽しそうに私には見えた。母は70歳の今もイビキをかく。私が帰省すると必ず父は「おかあさんのイビキがうるさくて」とやっぱりうれしそうに言う。母は耳鼻科に今も通っているんだろうか。
もしかして遺伝の鼻の悪さが今ごろになって発症したんだろうか。という気もしてきた。意を決して耳鼻科へ行った。ノドとかを検査して女医さんは花粉症じゃないですねと言い、鼻の穴をのぞいて「ああ、鼻が曲がってますね」と言った。
イビキがうるさいとき、ポチは私の鼻をつまむと言っていた。もしかして、強くつままれて曲がったんだろうか。それ以外に鼻が曲がるようなことをした覚えはない。
「鼻が曲がるような事故とかにはあってないですけど」
私がそう言うとそばかすの目立つ女医さんは
「だいたい思春期に曲がっちゃうんですよ」
と笑って紙に鼻の絵を描いてくれた。
鼻が曲がっていると鼻水だか空気だかを通す道をふさいでしまうのだという。私のはフツーよりもちょっと曲がりが強いけれどものすごくヒドいわけじゃないと女医さんは言った。ものすごくヒドい場合は手術して直す方法があるようだ。図解はわかりやすかったが、でも、どうして思春期に曲がったものが40歳を過ぎて突然鼻づまりの原因になるんだろうか。病院は原因を追求したり説明したりしてくれるところじゃないし、通院することになったらイヤだから聞くのはやめた。
