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2009/06/03

加工貿易

またまた「プロムナード」の話。
昨日、6月2日付け日経新聞の「プロムナード」は、
私が楽しみにしているフランス文学者・鹿島茂さんの番。
タイトルは「加工貿易」。

日本の文化の本質は、たとえば漢字を輸入して
ひらがなやカタカナを発明したみたいに、素材を輸入し、加工して
独自なものを生み出してから逆輸出する「加工貿易型」なのだ、
という話だった。

言われてみれば、自動車も「輸入」して
日本ならではの小型車を「発明」したわけだし、
野球も、ベースボールを「輸入」して
日本ならではの野球を「発明」して
イチローを逆輸出したと言える。

そういう日本の文化の本質からすると、
現在の文学や漫画や映画の日本ブームみたいなものは、
日本人の内向き姿勢の結果であり、あまり喜ばしいことではない、
と鹿島茂さんは書いている。
次回に続く内容なので来週の火曜日がすごく楽しみ。

私の最大の関心事は「日本人と洋服」だ。
『クレイジー・ヤン』でも
自分で自分に連載を依頼しているくらいの関心事である。
内容は迷走中なので、現在製作中の10号では、連載休止の可能性大。

ホントはぜんぜん関係ないのかもしれないけど、
鹿島さん(知り合いじゃないけどさんづけ)の「加工貿易」を読んで、
私は思った。私がずっと違和感を抱き続けているのは、
「日本人には所詮洋服が似合わなくて、日本人に最も似合うのは着物だ」
という「結論」である。

解決したかに思えることを解決してないことにして考える、
解決していないように見えることを解決したことにする、
というのが考え方の基本だ、と書いていたのはだれだったか
忘れたんだけど、そういうことです。

自分で自分の服を作ることにこだわる理由を問われて、
「日本人と洋服について考えたいから」と答えたことがある。
そしたら、相手は
「それはもうとっくの昔に解決していることじゃないか」と言った。
「日本人に洋服は似合わない」というのは、山口瞳や伊丹十三など、
わりといろんな作家が本に書いている。
そういう意見というか結論があるのを私だって知らないわけじゃない。

特に、最近の着物ブームというか和風ブームで、
やっぱり日本人は着物がいちばん、という意見がある。
というか、昔からある結論を再び持ち出して
「日本人と洋服」問題に決着をつけようとしているんだと思う。
でもでもでも、なんかどうも私にはしっくりこない。

しっくりこない最大の理由は
「日本人に似合うのは着物」ってことで落ち着くと
それで話が終わってしまうから。
たぶんそれは正しい結論なんだろうけど、
じゃあどうしてみんな着物を着てないの?と思う。
絶対に似合わない洋服をかっこよく見せようとあれこれ工夫して
着ているのはなぜなの?
同じような理由で、ユニクロで決着をつけるのもイヤなの。

たぶん、服の自作は日本の文化だと私は思っているわけですね。
ある出版社に服作り本の企画を売り込んだときに編集者に
「本というのは、絶対に売れるという確信があって出すものと、
売れないけれど文化として残したいから出すもの、この2種類しかない」
と言われたことがある。そして、
「あなたが、服作りを文化だと思っていることは理解できましたけどねえ」
と言われました。

ホントはそんなふうに思っていなかったんだけど、
へえ私ってそう考えているのかもってことで、そういうことにしといた。
でまあ「加工貿易」を読んで無理矢理こじつけ、
日本人には絶対に似合わない洋服を海外から輸入して加工して
独自なものを生み出そうと努力している点が日本の文化っぽい、
ような気もしてきた。

逆輸出って点になると、
チョウチョや着物スリーブ、ケンゾーの色使いみたいなものに
なってしまうのかもしれないけど、そうじゃなくて、
廃れたように言われてはいるけど、
たぶんこれだけ服作りする庶民が多い国ってほかにはないと思う。
民族衣裳は別よ。
長くなったので今日はおしまい。