26日に発売になる、枡野浩一さんの
『僕は運動おんち』(集英社文庫)がおもしろい。
http://masuno.de/blog/
17歳の主人公「うんちゃん」は運動音痴だから「うんちゃん」なんだけど、
なぜか水泳部に入部させられてしまう。
柔道もやるけど詩も書くという宇佐田くんや
長い髪をシニヨンにしている柔道女子、波多野さんとか
同級生とのやりとりが85年の出来事を盛り込みながら
キュンキュンって感じで展開する。
わりと実話に近い話らしいんだけど、
高校生男子のオトコノコ話が興味深かった。
映画になったら誰が演じるのか
想像したくなるほど光るサブキャラ、宇佐田くんは
オナニー好きの柔道男子でありながら趣味は詩を書くこと。
詩を書くくらいなんだから漢字をよく知っていそうなのに
童貞を「どうさだ」と読み間違えていたりする。
「うんちゃん」は彼の読み間違いをいつどうやって指摘してやろうか悩む。
私も漢字には弱い。
ポチといっしょになるまでずっと読み間違えていた漢字がたくさんある。
どうして今までだれも指摘してくれなかったのよお
と他人のせいにしたくなるほどたくさんある。
故夏目雅子が伊集院静と結婚することに決めたのは
伊集院静が「薔薇」(ばら)と書けたから
という話を聞いたことがある。
私も目の前で「薔薇」を書いてみせられたら
好きになるかもしれない。
本を読んでいてルビなしの難しい漢字を見つけて
「これ、何て読むの?」って聞いて
即答してくれたときもものすごい快感だったりする。
そういう快感を経て最近は「辞書を調べてっ」と怒鳴られてもスキ。
漢字の読み間違いと言えば、
ソーイングでは「ぬいしろ」という単語を使う。
漢字で書くと「縫い代」。
中学や高校の家庭科で習っているはずなのだが、
「縫い代」を「ぬいしろ」と読めない人は多い。
出版社や本によっては「縫いしろ」と表記しているが、
あれはたぶん読めない人が多いせいだからだと思う。
教室では、
私は「ぬいしろ」とハッキリ発音して実演している。
型紙を広げて「ぬいしろというのはこの部分」と説明する。
縫い代を読めなくてもフツーだし、
縫い代が何なのかわからない人は多いという前提でのぞんでいるつもりだ。
意識して「ぬいしろ」を繰り返し発音しているつもりなのだが、
「ぬいだい」に縫いつけるんですよね、などと言う人は必ずいる。
この前もいた。
そのたびに教えてあげようと心では思う。
でも、口がどうしてもうまく動かない。
この前も、気になりながらとうとう最後まで指摘することができなかった。
「ぬいだいじゃなくて、ぬいしろですよ。のりしろって言うでしょう」
とやさしく笑って教える準備をしているつもりなのだが、
いざとなるとダメだ。
「うんちゃん」は宇佐田くんと絶交して仲直りして友情を深めたあと、
王貞治は「おうさだはる」と読むけど、
童貞は「どうさだ」じゃなくて「どうてい」と読むんだと教えてあげる。
宇佐田くんは教えてくれてありがとうと感謝する。
帰省を「きしょう」だと思い込んでいる年上の知人がいて
ずっと気になっていたりするけど、
漢字の読み間違いってかなり親しくないと教えてあげられないような気がする。