コウコラム、できるだけ更新しようと努力してますが、
なかなかうまく更新できず、
新聞ネタが続くことをお許しください。
21日付けの朝日新聞、読者投稿欄に
「最近の衣料品は寿命が短い」という投稿が載ってました。
「多くの人がうすうす感じていたことをはじめて明確に指摘した意見」
って感じで採用された、という匂いがします。
クレヤン10号177ページで告白しているように、
私は朝日新聞の読者投稿欄がわりと好き。愛読してます。
確かに、今までこの手の投稿はなかったような気がする。
投稿文の内容はだいたいこんな感じ。
スエットパンツのゴムが伸びたが、
ゴムが縫いつけられているから穴を開けて新しいゴムを通した。
ゴムが縫いつけられているのは
ゴムが伸びたら捨てよということなのか、
最近のタンクトップは伸びるし、Tシャツの色落ちは激しい。
こんなことでは安物買いの銭失いだ。
安いだけでなく、長持ちする良い品質の物を作ってほしい。
最近の衣料品の寿命が短い、
というのは真実ですが、
日本人の着る洋服が既製服主流になった1970年ころから、
つまり40年くらい前から
売ってる服の寿命って短かったはずです。
今60歳くらいの人は
「そもそも既製服って粗悪品って認識だった」ってよく言うでしょう。
それに、スエットやTシャツみたいなものは
そもそもが既製服なわけで、ああいう短時間で簡易に作れるもの、
サイズ展開を必要としない服が既製服なんですよ。
ユニクロの社長さんがさかんに
「安くて高品質な服を売っている」と宣伝するのは、
既製服は品質が悪いものだという前提があるから。
ものすごく品質が悪いのにたいして安くなかった
昔の既製服よりはマシになった、
と言っているんだと私は理解しています。
品質が悪いのを寿命が短いのとイコールだとすれば、
そもそも既製服は寿命が短い。
素材的、縫製的だけじゃなくて、
ファッション的に寿命が短いもの。
寿命が短いものだから「オシャレ」なんだし、
寿命が短くなくちゃ毎年新しい既製服を売れないですよね。
寿命の短いことが本質であるものの品質は、
ちょっとよくなったとしてもそんなによくなるはずがない、
と私は思ってます。
既製服が安くて品質のいいものだったら商売として成立しません。
だから、安くて品質のいい服なんて売られているわけがない。
私はそう思っています。
それから、
「安物買いの銭失い」は女性の求める快楽のひとつです。
だから、既製服が洋服の主流になったのだし、
既製服は存在し続けられるんです。
投稿文は、
母親が服に開いた小さな穴を繕ってくれたことを書き、
新しいゴムを通してスエットパンツを使う自分は時代遅れなんでしょうか、
と結んでいます。
まあ、時代遅れというよりも、
上下1980円で買ったスエットパンツのゴムを入れ替えて
はき続けようっていうのは、
単なるケチなんだと私は思います。
あ、ケチは悪いことじゃないですよ。
私もケチです。
ゴムの縫いつけられた1980円のスエットの上下なんて
高いなあと思って買いませんから。
私がなんだかいやあな感じがするのは、
投稿者じゃなくて、ああいう投稿を採用する朝日新聞のほう。
朝日新聞や(もうひとつ具体的に挙げたい組織名があるけどやめときます)
そういう主義っぽいところの
「手づくりっていいよね、繕って使うっていいよね、
そういうモノを大事にする気持ちを忘れちゃいけないよね」
みたいな偽善的な匂いが私はイヤでたまりません。
それを素人の投稿でもって強調するっていうのが。
繕ってまで着るなんてケチだし、
1980円のスエット上下を着るなんてそもそもダサい人です。
でも、そういうダサさが平気だって感覚に
私は救いを感じます。
私が、自分で服を作るのは、
最先端がかっこいいという空気に、実践をともなって対抗したいから。
私の場合、
たまたま結果的に「オシャレ」な服が作れてしまっているだけで(笑、
ソーイングすると
「最先端がかっこいいという空気についていかなきゃいけない」
という空気を無視できる勇気と知識が身につきます。
今どき、服を自作するのはダサいことなんですよ。
そのことに自覚的でないとやばいと思う。
だからこそ、かっこいいことだと私は信じているんですけどね。
手づくりっていいよね、なんて感覚はヤらしいよ。
投稿者には親近感を感じます。
スエットパンツを
縫いつけられたゴムが伸びるまで着続けるって
ファッションを追うことには興味がない人なんでしょう。
私もファッションを追うことには興味がないんで。
伸びちゃうタンクトップや色落ちするTシャツを買っちゃうのは
布地に対する知識が少ないからですねえ。
ソーイング、やられているんでしょうか。
ソーイングすると布地の勉強をしないわけにいかないんで、
するといいと思います。
伸びや色落ちに無頓着な人のほうが多いから、
すでにそういう点を気にしているっていうのが
ソーインガーの素質がありますね。
朝日新聞は、
偽善的に環境問題っぽくああいう投稿を採用するより、
今こそ(再び)ソーイング欄を設けるべきだと思いますね。
そのほうが売れるんじゃないですか。