新宿の『浪漫房』で年下の友人ふたりと飲んだ。
ふたりは30代の独身女性である。
婚活やらダイエットやら好きな男性のタイプなどの話で盛り上がった。
「デブって言えば、婚活サギのあのふたりですよ。
ふたりともあの体形だっていうのが、驚きますよね」
「そうそう、よくあれで、服とか、どこで買ってるんだろうって」
「15号だっけ?」
私はスポーツ、ニュース、映画以外のテレビをほとんど見ないので、
婚活サギについては新聞記事以上のことは知らない。
でも、女性週刊誌の新聞広告の見出しに
15号という単語があったのは覚えている。
「ええっ、あれって、15号じゃないですよ、絶対」
「そうですよ、こんな、ですもん」
とAは樽を抱えるような手つきをした。
確かに、15号はそれほどたいしたデブじゃあない。
ダイエット前の私のウエストは80センチ近くあった。
サイズで言ったら15号くらい。
うちの母と妹は17号だ。
デブの中で育ったせいで感覚が麻痺しているのかもしれないが、
言われてみれば、15号のひとつ上の母も妹も
まだ「樽」ではない、ような気がする。
そしたら、
今朝の新聞の女性週刊誌の広告には「LLサイズ」って。
ということは、15号はLLサイズということだけれど、
号数表示と正しく連動させるならば、LLサイズは13号である。
しかし、多くの人に与える「LLサイズ」の印象は
「すごいデブ」だろう。
AやBのように、「あれは15号じゃない」と思った女性たちの
意見をくんで「LLサイズ」の表記に改めたんだろうか。
私は、型紙のサイズ表示でいつも悩む。
JIS規格の寸法に照らして的確に言えば、
私がデザインするワンサイズの型紙は「Lサイズ」である。
でも、「Lサイズ」と表示すると、
とても大きなサイズだと思い込む人が多く、
17号くらいの人まで「自分も入るサイズだ」と誤解してしまう。
だから、やや大きめのMサイズと言ったりしているのだが、
そうすると今度は、「やや大きめ」にはあまり目を向けず、
「Mサイズ」だから小さくてとても自分には無理だと思い込む人が増える。
サイズの表示ってホントにむずかしい。
このあたりについて私は、
洋服についてちゃんと勉強していないのが原因だと思っている。
ちゃんと勉強しないのは、
洋服のサイズなんてどうでもいい問題だからだ。
ユニクロのひとり勝ちで、今後ますます
日本人の洋服に関する知識は少なくなると思う。
オシャレのセンスという面でも後退し続けるだろう。
「洋服とはどうでもいいもの」という洋服の本質をついているから
ユニクロの洋服は売れているのだ。
私のデザインしたワンサイズの型紙は、
私のデザインどおりならば、バストが92センチでも入る。
つまり、号数で言ったら13号なのだ。
JIS規格並びに若者向け洋服の基準寸法は、
9号でバスト84センチ、11号でバスト88センチ、
13号でバスト92センチである。
9号をM、11号をL、13号をLLとするのが正しいはずだが、
Tシャツやストレッチものなど伸縮する生地で作られた衣料では、
M、L、LLそれぞれの許容範囲が広い。
そして、現在の衣料は伸縮素材のものが多いから、
サイズについての知識はうやむやにされている。
うやむや、これは日本人の本質だから、
伸縮素材の衣料やアッパッパ服は今後ますます増えるはず。