阿波と古事記 第二巻を推す

          古代阿波研究所長 堀川豊平

 古事記は,表と裏を同時に表現したような文章が並んでいる。学者の解釈はたいていどちらかだけを取り出して単純化しているから深みがなく,謎解きに取り組もうとしない。
 古代阿波研究所は,三村隆範さんの熱心な援助で古代阿波通信を復刊,再三研究発表と県下市町村巡回の古代展をひらくことができた。論より実行の人だけに,天香具山シンポジュウムの成功も三村さんの尽力なくして実現しなかった。
 今回の「阿波と古事記 第二巻」は,黄泉国からの大脱出の物語をわかりやすく小冊子にまとめたものである。
 三村隆範さん原田史朗さんと私の三人で,実地調査した日々のことが思い出される。神山町の高橋支さんに,旭の丸に「黄泉事解男命」が祀られていることを聞いたのが,その発端だった。ふつうは高天原の聖域に,黄泉国の物語が重複するとは考えない。が古事記は違う。どう違うかは,三村隆範さんのこの本で読み取って下さい。目からウロコが落ち,阿波の古代への興味が倍増すること間違いありません。そこに新しいあなたがいます。


編集後記

 平成九年に初版を出してから随分日が経ってしまった。古事記の神代の物語を書き終えるまでに,あと何年かかるのだろうか。考古学の分野は,日増しに阿波の重要性が語られ「大和朝廷は,阿波・讃岐・吉備を抜きにして語れなくなっている」というのに……。
 古事記などの文献からみれば当然の事であっても,長く間違った歴史観念を正すのに,また,時間を必要とするのだろうか。
 古事記を読んでいても読めない。大きな流れに乗って「偉い人が言ってるから」とか「みんなが言うから」と,なかなか考えや習慣は変わらない。変えることは面倒で,いつものように生きるのは気楽なことだ。しかし,マンネリ化すると逆に,違ったことがしたくなる。
 自分が何を感じて生きているのか,よく見て,考えて生きていきたい。


 古事記の神代の 物語を色濃く残している所は,島根県(出雲)や宮崎県(日向)ではありません。すべて阿波一国内のことです。
 次号は,古事記,最初のやま場,天岩戸の物語です。
 古事記の物語は,いよいよ高天原と出雲を舞台にダイナミックに展開します。阿波のどこに高天原があり,天岩戸はあるのでしょう。
 天岩戸の後は,阿波の祖神,永遠の象徴,大宜津比賣神の物語。大宜津比賣神が古事記に登場するのは,これで三度目になります。これらの物語は,現在に発展した日本の心の原点を伝えるものです。
 『阿波と古事記』第三巻 天岩戸篇 乞うご期待!
 ガイドブック「阿波と古事記」を片手に家をでかける,あなたは,「阿波にこんなモノが合ったのか!」と声を大にするでしょう。阿波には,そんなものが,まだまだ埋もれ眠っているのです。