即ラッキーな私に  橋本 節子

 「ラッキー!」と言う事は,自分を明るくし,自分のろうそくに火を付けた事になると言うことが少しずつ判って来ました。
 他人が私をいくら明るく照らしてくれても,その人の明かりが消えてしまうと元の暗闇に戻ってしまう受け身の私は,すぐ何にも見えなくなって暗くなってしまいます。
 ですが,私が自らのろうそくに火を灯していれさえすれば,私の周囲は確実にいつも明るく見えるのです。だから,どんなことが起こっても,まず声に出してすぐ「ラッキー!」と云うと,即ラッキーな私になります。
 この「阿波風」に書くことも同じことですね。

「効果がないから」と 三村 美知代

 ケアマネジャーと私が話しているところへ,息子が青汁を持ってやってきました。
 「お母さんが,心を開いて話してくれないのです。」とケアマネジャー話してくれるよう懇願した。
 私は,話したくないわけではない。今までに「何でも言って下さいね」と言うので,いったのですが,いくら言っても,「それはできません。それは出来ません。」と言うばかりですから,ほかの入所者だって何も言わなくなってしまった。
 息子も,ケアマネジャーと少し話していましたが,「こりゃ〜だめだ」と思ったのか,私の部屋に荷物を置きに行って帰ってこなくなりました。
 私どもの年代は,暮らしのなかで耐えることばかりの連続でしたから,そう言うことには慣れています。言ってもだめでしたら,みんな黙って,それでやっていくのです。
 歳を取って衰えていく身体に,「不自由な所を直しましょうね」と言い,私のしたいことは,「そんなこと,効果がないから」とさせてくれない。

遠くの娘に送る楽しみ      山本 シズ子

 秋は実りの多い季節である。
 今日は,カブ・大根・里いも・りゅうきゅういも・何でも入る。そして,また,コーヒーのセット・シャンプー・等々入れて,自分は幸せな気持ちである。いつも心のどこかで子供の幸せ,一家がどうか幸せでありますように・・・,
 そして婿さんは,優しくしてくれているだろうか,きっと優しい人だと信じている。そして娘との話の中で,こんな事言うたとか,こんな物を買ってもらったとか聞くと,自分の事のように嬉しいものだ。
 親とは,ちょっとの事で幸せを感じるものです。
 我が家に来てくれた嫁も,実家の御両親にとってはかけがえのない大事な大事な娘さんだ。大事に思い,両親には安心してもらいたいと・・・,文句など言うと罰が当たると思い,自分に言い聞かせる今日この頃です。
 この阿波風も,一緒に荷物にしのばせて送ろう。

紅葉を求めて          吉川 直子

 今月も富士山の近くの山中湖へ行きました。今回は実母・実姉・実姉の孫達というメンバーです。富士山を間近で見たことがないという実母に親孝行の真似事をという気持ちで行ったのです。しかしお天気ばかりは自分の意のままになりません。祈るような思いで朝を迎えました。
 老齢の母のことです。何時ものように夜明け前に起き出してゴソゴソしています・・・。窓を遠慮しながら開けている様子です。寒い朝なのに部屋の中へなかなか入ってきません。母の丹前を持って私も外へ出て見るとそこには夜明け前なのに冠雪した富士山が凛とした姿で聳えているではありませんか。
 母に丹前を羽織らせて『来て良かったね!』と声を掛けました。ショートスティに御願いして預かってもらった父に素晴らしいお土産話が出来ました。長く外にいては風邪を引くといけないので部屋のカーテンを開け放して富士山を見ることが出来る位置に母を座らせて熱いお茶を勧めました。

阿波鳴門(一)               野口 一夫

 私は鳴門の堂浦(ドウノウラ)で生まれ育ちました。古くから鯛等の1本釣りの漁法に丈,四国,瀬戸内海,九州の各地域にテグス等と共に技法を伝えたと聞いています。
 向の島(島田島)に阿波井神社がありオオゲツヒメ(阿波の別名),フトダマノミコト(忌部の祖神)を主宰神としています。元の社は岬を廻った所にお堂があり,その裏の方向にある村で堂浦の地名が付いたそうです。
 前号で上一大粟神社の宮司さんがオオゲツヒメ研究の重要性を記載しておりましたが,記紀等を参照し,私なりに古代史の解釈をしたいと思います。
 まずオオゲツヒメを分解しますとオオは賛辞,ゲは食物,ツは何々の,ヒメは高貴な女性と解釈されます。鳴門には大毛島(オオゲ)があり,島内の地名には福池(大塚国際美術館周辺),大毛,黒山,野,土佐泊があります。この内,大毛には神社がありません。板野郡史(以前は鳴門も含む)に阿波井神社の変遷に年代不詳(古代のため)として「向の島より勧請」と記載されています。お堂のあった場所から正面に向の島の大毛山が見えます。記紀にはイザナギノ命がアワギハラで禊ぎ払いをする前にハヤスイノナト(鳴門海峡),アワノト(小鳴門海峡)へ行きましたが潮が速すぎて橘に帰り禊ぎ払いおし三貴子が生まれたとあります。
 そこでハヤスイノナトへ行ったときオオゲツヒメが生まれたと考えても不思議ではないと思います。そして大毛から今の阿波井神社へ勧請し,神山の上一宮大粟神社に祭神されたと思います。