九州の重文民家を訪ねて(1)
                三木 信夫

 昨年十一月知人と4名で,九州の重文民家を訪ねる四日間の旅をしました。初日は,十二時博多駅で待ち合わせてレンタカーで出発。
 先ずは福岡県の横大路家と佐賀県の山口家、翌日は佐賀県の西岡家・土井家・旧川打家・吉村家と熊本県の旧境家,三日目は熊本県の江藤家と大分県の旧矢羽田家・行徳家・神尾家,四日目は福岡県の永沼家の計十二軒の行程でした。
 レンタカーは新車でしたが,カーナビの地図情報が古く,助手席で地図を見ながらの人間ナビで,二日目三日目はハードな行程でナビに苦労しました。
 九州の民家は他の地区では見られない屋根の形に特徴があります。直屋(すごや)は普通に見られる建物ですが,曲屋(まがりや),鍵屋(L字型寄棟造り),漏斗(じょうご)造り(ロ字型寄棟造り)や雁行型(折れ曲り寄棟造り),くど造り(コ字型寄棟造り)では前谷型二つ家系の建物と後ろ谷型二つ家系の建物が見られました。屋根に特徴がある珍しい民家だけを記載します。

 横大路(よこおおじ)家

 十七世紀中頃まで遡ると推測される建物で,当初「くど造り」の家で,「御成間」を備えた屋敷から「文化・文政年間」に現在の土間部の広い「曲屋」に縮小改造された分棟型から発展したもので,屋根はL型寄棟造りの茅葺で,九州の民家では最古のものです。
 同家には,天台宗の開祖である最澄から授かったという「火」を千年以上も守り続けているという伝説から千年家と称される農家でした。

(つづく)

梅の花               天羽 達郎

 耕やする人逝きし畑に来てみれば
        荒れたる中に梅が満開

 世話をする人はなけれど梅の花
        青き実と成れ香り気高き

祠官の独り言 天香具山神社宮司 橘 豊咲

 今年の長月の誕生日がきて喜寿となる大和の祠官ですが,如何にして生きながらえることを考えるのではなく,神縁のある限り,一年でも長く祭典奉仕を望んでいます。何処の神社でも,祭典斎行後直会(なおらい)の席に,神社総代,役員等と宮司が,和やかに杯を重ねながら,その地域の神社のこと,町内の出来事などを話し合いながら,飲食をすることが,氏子の結束につながることは論をまたない。
 杯ではなく,湯呑茶碗で飲むこともありますが,無遠慮なマナーは慎むべきで,床の間に座っている宮司を役員等が注目しているので,無礼であってはならないと思います。役員等が,まあまあと言って,サービスの気持ちで酒やビールを勧めたりしますが,他社の祭典が歳旦祭のように,1日に5社,2日に4社の祭典がある場合,ラストは別として,直会で飲み過ぎると,次の神社に移動のため送って貰うので,心得るべき事は,高齢であること,トイレに度々行くことは自重すべき事で,醜態を見せないように留意することが肝要で,直会は祭典次第に箇条書きで書いてあります。一人になると酔いのまわるのが早く,千鳥足(ちどりあし)になることは目に見えている訳です。役員の機嫌を損じない程度に,短い言葉を継ぎ足しながら,間(ま)をもたせるように,笑(え)みを浮かべてお開(ひら)きになるのを待たねば,役員から評定されることになれば,宮司更迭(こうてつ)もありうることです。宮司,神職は,神と人との仲執持(なかとりもち)の立場で何事も考えないと,平成8年の5月下旬に辞令がでて11年目に当たりますが,祭典の時刻に遅れて,注意されなくても,総代が酩酊(めいてい)した折に言われることが,過去に何度かあって以後肝(きも)に銘じるようになりました。
 「神主の替り,希望する人が何神社の氏子に居ますから」と言うのである。神主いや宮司として誰にも負けないと思っても心すべきことで,1年でも長く宮司として14社の祭典を奉仕いたしたい所存です。

節をつける時期     月岡 功

 三月は実にあわただしい時期である。
 学校にいる人たちはいやおうなくこの時期をもって社会へ出て行く。社会人の中には,異動のある人や第二の人生を目指して再出発する人も居られる。企業なども決算の時期を三月に定め,企業活動の一区切りの時期としているところが多い。
 それらの渦中にないものにとっても年度の区切りをきちんとつけることは仕事や生活の上で大切なことに違いない。
 まずは日記の上で決算を行ってみる。ずいぶん色々な貸借を発生させていたものだと思う。日ごろは損得が気になりやすいが,貸借を計ることによって新たな目標や取組が生まれてくることも期待できる。返さなければならない図書館の本,見てこなければならない地所の様子,ご無沙汰している親戚や友人知人の近況確認などいくつも思い当たることがある。
 次に身辺整理を行いたい。毎日片付けているようでもいつの間にか周りに不用品が堆積している。日常はそれらが普通のこととして目に映っており堆積の状況が異常として認識できなくなっている。
 見回してみるといかに不要品が多いかに驚かされる。整理整頓が行き届いた生活空間は能率がよく,気分も爽快である。上質のアイデアも湧こう。
 三月は気合を入れて節を作る時期であると己の中に位置づけておきたい。

モネの家