思いやり 三木 信夫
阿波風が2004年10月に創刊されてはや3年が経過し,新年で40号が上梓されるまでになり,編集に当たる三村隆範氏の継続してこられた労に感謝するしだいです。
私はこの3年間,主に『阿波忌部』をキーワードにして,私なりにいろんな角度から研究・調査したことを一部重複しながらも書いてきました。今まで阿波忌部については体系的に研究発表されたものがほとんどなく,関連する古文書は,三木家の中世文書が唯一最たるものです。
阿波の忌部氏族は,フロンティア精神を持って日本各地に進出して開拓し,技術等を伝播して土着しておりますが,進出にあたり先住民との紛争がありません。これは忌部氏族がやさしいだけでは考えられず,根底に「仁」の哲学を持っていたからではないだろうか。簡単にいえば「相手の立場になっての思いやり」があったと考えられます。現代での「思いやり」は,自己中心的な「押し付け思いやり」が多く,「相手の立場になって」が抜けている事に気が付かず,相手が迷惑している事が多いようです。今日の社会は日本人の精神性の喪失・堕落は目に余るものがあり,子供が親を殺したり,親が子供を殺したりで,毎日のように報道されています。日本人が古来より持っていた「仁・徳・礼節・義」が失われてきています。本当の生き方を教えるためにも,小学生のうちに地域の伝統や文化・歴史を教えて,日本人の精神性を教えておく事が肝要です。
|
大和の老祠官の独り言
天香具山神社宮司 橘 豊咲
阿波古事記研究会の皆様,「阿波風」に投稿されている皆様にはお変わりなく,それぞれのお仕事に余念無く,家庭の雰囲気も和やかにお過ごしの事と思います。
愈々今年も師走に入りました。祠官にも,迎春準備がありますので気忙しい事は,ご多聞に洩れません。喜寿を迎えてから四ヶ月,来年も頑張って香具山地区十四社の祭典奉仕をする決意です。祭典の後の直会も,私の限度,二合ぐらい,雑談をしたり唄ったりするとアルコール分も発散しますが,軽い耳鳴りがするので,吾ながら老いたものだなと思います。しかし来年九月の阿南市鎮座の古社の祭典には,是非共参列して下手な竜笛の奉仕を致し度思っております。
祠官(神主)は老いても古代史の勉強を怠らずに,現在月に一度は十人余の「古典を語り合う会」で約二時間,橿原市公民館の一室で,時には会長の補佐役で,下手な弁舌をすることもあります。天岩戸神社の崇敬者で,数年前に知己となり,時々文通をして著書を贈ってもらった方は,歴史学者で,東京都在住の内山直文氏で,本年十一月二十日(第一刷)の,「卑弥呼,邪馬台国は初期ヤマト政権」発行所−株式会社近代文芸社刊で,余暇に何頁でも読んでいます。祀官は意識のある限り古代の勉強を続けます。
皆様方には健康に留意されて越年なさいますように。天香具山,天岩戸,國常立の三社の新嘗祭,師走九日,歳旦祭,一月二日に祈念をさせていただきます。
|
波波迦の木 天羽 達郎
天の香具山に生えている波波迦の木を昨年もらって来ました。三村さん野口さんに連れられ行ってきました。勝手に枝を切ると祟りがあるというので橘豊咲宮司さんに枝を切って頂き,それを大根に突き刺して持帰り接ぎ木して本年12月9日神山町元山の天岩戸立岩神社に植樹しました。枝を切った香具山の元の木はその後枯れてしまいました。なんだか不思議ですね。「空より降り下った元山が欠けて奈良の香具山になった」と阿波国風土記に書かれている様に阿波の天岩戸のミニタイプの岩が天の香具山の天岩戸神社にある。そこの波波迦の木は阿波に子孫を返して,もう自分の役目は終わったとでも思ったのでしょうか。枯れてしまったのです。この上は我々がこの波波迦の木を大切に育て,新居バイオさんに培養して増やしていただき,全国に広めてあげましょう。
|
鉛筆削り 島川 文代
さっきまで私をイライラさせていたのは,鉛筆削り器。何度鉛筆を差し込んで削ってみても,先がポキッと折れて詰まってしまう・・・。
私が絵を描く時に使っている色鉛筆は,芯が軟らかいので折れやすいんです。
「イライラするくらいなら,や〜めたっ。」
そう,こんな時はカッターナイフで削るのです。やっぱりカッターナイフで削った鉛筆は使い心地が抜群です。
面倒くさい時はしませんけどね。(笑)
自分の癖に合わせて調節できるから,しっくり手に馴染むんです。
最近,鉛筆をカッターで削る人は少ないんだろうなぁ。
鉛筆を使う人も少なくなってるだろうし・・・
鉛筆をきれいに削れたときは気持ちいい!
その達成感は,ちっちゃな幸せです。(ホント,ちっちゃいなぁ〜。)
並んだ鉛筆がでこぼこな姿もおもしろい。
ところで,最近はナイフを使って何かを作るってことも少ないんでしょうね。
なんかもったいないなぁ・・・
手で何かをつくるって,なんでかな。あったかい気持ちになれるもの・・・。小さな達成感は,積み重なれば大きな自信につながるもの・・・。
そんなことを自分自身に言い聞かせながら・・・
シャカシャカシャカ・・・鉛筆を
削りながら,あれこれ思う夜でした。
|