十ニ、乱撫
 「麻希はその言葉の後、あの家出の日からのことをこう言っていたわ。
 『あの日、父親との喧嘩の後、暴力を受けた私は家を飛び出して、渋谷に向かったわ…。何か…そう、何か私は呼ばれた気がしたの。誰にも連絡なんてしたくなかった…誰も信じられなかった…。私に暴力を振るい、自由を奪った父親、それをただ怯えながら見ている母親と妹達…、自由な翼を持っている恵美とサークルの皆…、そしてこれからも何不自由無く生きていく奴ら…、そいつらが創る未来…そしてそれから生まれる命…。全てが信じられなくて、憎くて、狂いそうだった…。ただの私怨、嫉妬と言われればそうかもね。 でも、あの時の私も…今の私も、そんな理屈は通用しないの。だって、狂っているもの…ふふふ…。渋谷という街は賑やかよね。人がたくさんいすぎるわ。どこを見ても人、人、人。朝も昼も夜も絶えることなく人がいる…。私は持っていた少しのお金で数日間をある公園で過ごしたわ。生まれて初めての野宿ってやつ。それなりに楽しめたわ。そして数日後の夜、いつものようにその公園で寝ていると、何人かの若者が私の所にきたの。そいつらは私に一人か?って聞いてきたわ。私はそうよ、と答えると、体を押さえつけられ、服を無理矢理に脱がされ…強姦された…。一瞬何が起きたのかよく理解できなかった… でも、すぐに理解したわ。私は犯されているってね。そうしたら大きな声が勝手に出た。悲鳴が。でもその口もすぐに男のアレで塞がれたわ。長い長い時間…消えそうになるくらいの長い時間だったわ。若者達が満足して帰っていくその後姿を見ながら、私は嘔吐を繰り返した。全てを吐き出したかった。今起きたこと、私が親に自由を奪われたこと、全てを…。でも何も変わらなかった。いくら吐いても、何も変わらなかった。…当然よね。私は脱ぎ散らかされた服を着て、その晩はずっと泣いていたわ…。泣いても泣いても出てくる涙を枯らすまで。 そして翌日の晩、私は昨日の恐怖と憎しみ、悲しみが拭えない状態で寝ていたわ。そんな中、公園の隅で声がしたの。私と同じように、帰る所が…自分の居場所が無い人達…。ホームレスってやつよ…。しばらくすると、彼らは私の存在に気付いたみたいで、何人かやってきたわ。そして、食べ物をくれた。同じ仲間同士、困ったときは助け合おうって言ってね。私はその時、いつの間にか涙を流していたわ。それは憎しみや恐怖からくる涙じゃなかった。嬉しくて嬉しくて…泣いていたのよ。久しぶりに人のやさしさに触れた感じがした。あんなことがあったから、なおさらね。 食べ物も食べて、お腹が少し膨らんで、食後の休憩を取っていたところ…またさっきのホームレスの人達がやってきたの。私は、まず食べ物のお礼を言った。ホームレスの人達はお礼なんていらないよって…言った途端、私に覆い被さってきた…!そして、私の服を脱がし…いえ、破っていった。私は混乱した。何が何だか理解できなかった。何が起きているのか…この人達は何をしているのか…分からなかった。言葉のお礼なんていらねえよ、体で示せよ。若い女とやれるなんて、最高だねえ…って耳に微かに聞こえたわ。私はまた、昨日に引き続き犯されたのよ!そして裏切られた!また裏切られた!! 私に食べ物を与えたのは、私とするため。そして体力を持たせるため…!そのレイプはほぼ一晩中続いたわ…。まさに地獄だった…。居場所を失ったホームレスにさえも強姦されて…私は、私自身という存在が一体何なのか、分からなくなった。このまま消えてしまいたい…。でもただ消えるだけじゃ駄目だ…それではこの気持ちがおさまらない…!復讐してやる…家族に…友達に…そして生きている奴ら全てに…!この世界に!私に自由を与えなかったこの世界に!なんと言われようと私のこの気持ちはおさまらない!力が欲しい…!この憎悪を形にできる力が…!! その時よ…どこからか声が聞こえたの。何か…そうね、頭の中に響いてくるような声…。その声は私にこう言ったわ…
 『力が欲しいか?力が欲しいか!?…ならば…くれてやる!!』ってね。この時知ったわ。私はARMSに選ばれし者だってことが。…なんてね、嘘よ。そんな声なんて聞こえなかったわ。でも何か体の中からいつもと違う何かが溢れてくる気がしたわ。私はもう何も聞こえなかった。何も聞きたくなかった。私はその公園を後にして…ボロボロになりながら街を歩いたわ。街のやつらは私を見て、何か言っていたりしていたわ。そうよね。服はボロボロ、お風呂も何日も入っていなくて、レイプされた体だもんね。 私は周りの奴らが、私を見て何を思おうと、何を言おうと、何も感じなかった。ただ、ただ歩いていた。どこに行こうとしているのか、自分でも分からない。足が勝手に進むのよ。まるでその先に何かがあるみたいに。この先にあるには安らぎ…?それともまた裏切り?憎しみ?絶望?もうなんでもよかった。何が待ちうけていようとどうでもよかった。しばらく歩いていると、何かにつまずいた…たぶん小石か段差ね。そこまで注意がまわらなかったのよ。そして、倒れそうになった私を誰かが支えてくれた…。20代半ばの男…。私はその男に誘われ、近くにあったベンチに座った。その男はAV男優だと言った。ただし、自主制作のAVだけどね。

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