最近、街を歩くと嫌でも耳に入るようになってきた。
ジングル・ベル。きよしこの夜。
赤い服に赤い帽子の売り子も多く見かけるようになる。
あちこちに飾られるツリー。ドアにはひいらぎのリース。
気合の入ってる家は、庭やら塀やらも電飾で飾り立てている。
あっという間にやってきた12月は、あっという間に半ばを過ぎて。
どこもかしこも、残り少ないイベントに全精力傾けて。今年も最後の最後まで楽しもうという意思が感じられる。
――そんな、風に。思った。
いつもと変わらない夕食後のまったりした時間に。
俺と。居候その1と。居候その2が。
テレビをつけっぱなしにしつつ、今日のことや昨日のことや明日のことを話しながら、わいわいやっている、
そんなときに。そんなことを、思って。
「なあ。」
「んー?」
「んあ?」
この時期は特番ばっかで、楽しいけどちょっと困るよねぇ、とか。
年賀状もそろそろ書かなあかんなぁ、とか。
そんなことに対する反応よりも、なによりも。ふと思い浮かんだことを、言ってみたくなった、だけなんだ。
「お前ら、25日は空いてんのか?」
一瞬の沈黙。
え? という疑問の声。
「…そりゃあ、…うん? いまんとこ空いてる、よ?」
「また警部から協力頼まれたんか? けど、オレだけやのうて快斗まで引っ張り出すっちゅーのは…」
「違うって。ほら、せっかくのクリスマスなんだからさ、パーティーでも――」
がたがたり。
椅子が倒れる。二つ同時。
揃って立ち上がった二人は、揃って同じように顔を引き攣らせている。
引き攣りまくった顔で、恐ろしい物でも見るような目で見つめられること数秒。
快斗が駆け出して電話に飛びついた。
服部は顔面蒼白のまま大慌てで俺の額に手を当てる。
「たたた大変だよ哀ちゃんっ!!? 新一がおかしくなったっ!!!!」
「熱は出とらんなっ!? そしたらあれか、なんやおかしなもん拾い食いでもしたんかっ!? それとも今日帰ってくる途中事件に巻き込まれて頭思いっきし殴られたかっ!!?」
……その後、リビングが戦場と化したのは言うまでもない。
「で?」
にこにこ。
俺の真正面には、きっちりと手を組み、足を組み、非の打ち所のまったくない笑顔を浮かべた男が座っている。
「……だから、な? その後はいつもの如く、売り言葉に買い言葉で、」
「ほほう」
「……だったら俺がテメーらも驚いて腰抜かすような盛大なパーティー開いてやる、と、」
「ちなみに今月は12月で師走なんだが、なんで 『師走』 って言うんだったかなー」
にこにこにこ。
完璧な笑顔は1ミリも動く気配がない。
――なんだ、その、…うん。
これは非常に、気まずい。
右を見る。左を見る。生憎と味方になってくれそうな人はいない。俺とこいつの二人きり。
腹を、くくるしかないということは、嫌ってほどわかっているんだが。
……わかっちゃ、いるんだが。
「で? 今日はいったい何の用で来たんだ?」
「……う、」
どうにも言い出すことが出来ずに口篭っていると、すっと笑みが引っこんだ。
ひやり。冷えた空気に鳥肌が立つ。
ぎぎぎぎぎ、と首を動かして逸らしていた視線を合わせる。合わせざるをえない。
……うあ。
目がマジだ。
「答えろ、工藤新一。――この 『草壁』 の尚也に、このクソ忙しい時期に時間潰させてまで、何を望む?」
「25日のパーティーの準備手伝ってくださいお願いします」
普段がいかにおちゃらけていようと、バカだったりアホだったり無闇に純情君だったりするとしても。
こいつもれっきとした 『草壁』 の一員なんだということをありありと見せ付けられて、俺は恥も外聞も投げ捨てて机に額擦り付けそうな勢いで深々と頭を下げる。時間にして10秒ほど。
ふう、と溜息。あたりの空気が若干柔らかくなる。
頭を上げてみると、尚也は組んでいた手と足とを解いて、代わりに腕を組んで難しい顔をしていた。
「……報酬は」
「あ、やっぱ必要…だよなぁ…」
「依頼ならな。ただのお願いで動けるほど今は暇じゃない」
「…………うーん」
なんとなく、そんな予想はしていたが。だからといっていいアイディアが浮かぶわけもなく。尚也と同じように俺も首を捻ってしまう。
金、で解決するのは間違いなような気がするし、そんなことをしたくない。俺が。
うーむ。けど。なぁ。代わりに何で支払えばいいのやら。
こいつらの基準なんて、俺は知ってるようで実は知らない。
ふう、と溜息もう一つ。あたりの空気はさっきよりやや重苦しくなったように、思う。
もっとも、そう思ったのは俺だけなのかもしれないけど。
沈黙が続く室内でだんだん居心地が悪くなってきて、ぽりぽりと頬を掻いたり視線を彷徨わせたり。
そうこうするうちに、俄かに外が騒がしくなる。
ドアの方に目を向ける。耳を澄ませれば階段を上がってくる足音が聞こえる。どうやら出掛けていた人が帰ってきた、ようで。微かに聞こえる話し声からすると、どうやら有希もいる――ようで。
…………それは非常にまずい。
「おい、尚――」
「有希にまで内緒にしろって? そりゃ無茶だろ」
だよ、なぁ。
無茶なお願いはその全てを口にする前にばさりと切りすてられて。
俺は顔を引き攣らせたまま、遠く窓の向こうに目をやった。
がちゃりと真後ろでドアの開く音がする。
「ただいま、尚君♪ …それと…こんにちは、工藤君v」
「あ、どうも…」
なにやら上機嫌のマリアが、長い金の髪を揺らして俺の横を通り過ぎる。
俺が居ることに大したリアクションを見せないのは、ドアを開ける前からこっちの存在に気付いていたせいだろう。
「マリア。さっきのディスクをかなちゃんに」
「はいはい、解析してもらうのね」
「そう。多分30分もかからないと思うから、それまでは待機で」
そして。背中の方から。たぶん、ほんの数歩分くらいしか離れてないところから。
今、一番、顔を合わせにくい人物の声が響く。
はいはーい、と。やっぱりなんだか上機嫌のまま、マリアが奥のドアを開けて姿を消す。
こつり。一歩、背後の人物が近付いた。
平常心平常心、なんて心の中で念じてみても。じっとりと手の平に汗をかくのは止められない。
「損得勘定は済んだのか?」
よく、わからないことを。言って。
有希は少し笑ったようだった。
思わず首を巡らせかけたところに、今までじっと考え事をしていた尚也が、急に立ち上がる。
「悪巧みをするのはいいが、あまりハメを外しすぎないようにな」
「わかってますって。――ほら、行くぞ。工藤」
「え、」
机の引き出しから取り出したのは、車のキー。
ぽんと肩を叩かれる。
くるりと方向転換をさせられて、そのまま背中を押されて。外へ出る。
反論もなにも言うことができずに。
かろうじて確認出来たことといえば、そんな俺達の姿を見て、有希が声を立てて笑っていたこと――だけだった。
□ ■ □ ■ □
車を走らせながら、尚也は時折トントンとハンドルを指で叩く。
特に音楽をかけているわけではないのに、まるで何かのリズムを取っているようだった。
「どんなパーティーにしたいか、具体的なイメージはできてんの?」
「…………どんな…って言われても、」
「どっか広いとこを借り切って、客も大勢招いて豪華絢爛なパーティーにするのか。それとも身内だけの小規模な奴でいいのか」
「それは――後者で」
「場所はお前んちで、呼ぶのも大体いつもと同じメンバーってことだな」
「そう、なると、…………ていうか」
俺は助手席に座りながら、いったいどこに連れて行かれるんだろうとうろうろ視線をあちこちに向ける。
どうにも今日は立場的に弱い。非常に弱い。
一々口篭ったり、迷ったり、躊躇ったりしながら、恐る恐る聞いてみる。
「…手伝ってくれるってことなんだよな…? これは」
「なにを今更。じゃなきゃこんなこと聞かねーよ」
「報酬は――」
「それは俺の中でちゃんと決着ついた。少なくともタダ働きにはならないからな。料理を作ってやるのは俺がそういうの好きだからやるんだし、アドバイスくらいならいくらでも」
「……、ちょっと待て」
聞きならない言葉に思わず突っ込むと、尚也は 「なんだよ」 という目をこちらに向ける。信号はちょうど赤。
「アドバイス、だけ、なのか?」
「料理も作ってやるっていってんだろが」
「や、それはありがたいけどなっ、けど――!」
信号は、まだ赤。
尚也はじとりと半目になって、これみよがしにはあっと大きな溜息を吐いた。
「お前さあ。」
「……ハイ」
「平次と快斗に自分がなんて言ったのか、もしかして忘れてたりする?」
「……………忘れてねーけど」
『俺が』、と。確かに、言いはしたが、…でも。
信号が青に変わる。車がゆっくりと動き出す。
「――あのな。パーティーってのは、『盛大な』 だけでいいなら、金さえつぎ込めば誰にでも作れるんだよ」
とりあえず一方的にだらだら喋ってやるから黙って聞いてろ。
と。そんなことを言われてしまったので、大人しく、黙って聞く。
「けどな、いくら派手に飾ったって、いくら高級料理並べてみたって、それは 『お前』 が作ったことにはならねぇだろ。そんなのはただの 『金』 で作ったパーティーだ。それが悪いとは言わねぇが、あの二人を驚かせるのは絶対に無理だな。断言してやる」
ウインカーが点滅。ハンドルが切られる。
横からかかるGを感じながら、うろうろさせていた視線を、正面で止めた。
ふわふわと、思い浮かぶ何かがある、が。それを形にするには、まだ足りない。
「お前だってそれは分かってるんだろ。さっき、そういう派手なパーティーよりも、小さなホームパーティーを選んだんだから。そっちの方が楽しいって、知ってるんだよな」
そう、それは――そう、だ。
パーティーを開いてやる、と啖呵を切ったときにも。さっき尚也に聞かれたときにも。パッと描かれたのは、今までうちで何度も何度も、時には俺の意思なんか完全無視で開かれたバカ騒ぎの光景で。
けど――――だけど。
「けど今までと同じじゃ、なにも面白味がなくてあいつらを驚かせるなんて無理だ、とか思ってるんだろうが」
まさにその通り。
「でも、実際問題としてあいつらは驚いた。お前が 「パーティーしようか」 って言った時に」
それも、…その通り。
「なら深く考えることもない。目標達成のために必要な要素はたった一つだけだ。――なにかご質問は?」
必要な、要素。
質問、は? ――わかってんのか、俺?
本当に、ちゃんと、理解できてんのか?
「ちゃんと出来んのかな、……俺に」
「まずは呼びたい奴に招待状を書く。飾りつけ用のアイテムは快斗が大量に買い込んでるからそれを使えばいい。料理は俺が全部やってやる。お前が考えなきゃいけないことは、そう多くはないはずだぜ?」
「……なんか、一番難しいとこが残ってるような気がすんだけどなー…」
「アドバイスはしてやるってんだから、それを最大限利用すりゃいいんだよ。それに――別にな、『ちゃんと』 してる必要もないんだぞ。パーティーなんてのは」
車が速度を落とした。路肩の小さな駐車スペースに止まる。
窓の外に目をやれば、そこには小さいながらも洒落た雰囲気の花屋…というか園芸店、なんだろうか。
尚也が車を降りる。俺も後に続く。この状況ではついていく以外の選択肢がない。
「客が楽しんで、ホストも楽しめればそれで十分。あと、ほんのちょっとのサプライズな」
店先で並べた鉢植えに水をやっていた女性が、こっちに気がついて声をあげる。
柔らかな笑顔。「あら、藤堂君。今日はなんのご用?」。柔らかな声。
尚也は彼女に会釈を返す。
俺は。
小さな鉢植えや、綺麗な切花を眺めて。
例えばこんなのがテーブルの上に置いてあったらいいんだろうか、と。
――そんなことをぼんやり考えていた。
□ ■ □ ■ □
そして。あっという間に12月25日はやってきた。
ここ最近は日本各地で吹雪だなんだと大騒ぎな毎日で、東京も凍えるような寒さが続いているから、仮にホワイト・クリスマスになったとしても今年はそれほど驚かれも有難がられもしないだろう。
ともかく、寒いのが嫌いな自分としては室内温度をがんがん高めたくなるんだが。
それも――今日は控えめに。
暑すぎず、もちろん寒すぎずの(一般的な)快適な温度設定。
キッチンの方からは美味しそうな匂いが流れてくる。
尚也は、自分で言っていた通りに。実に楽しそうに手の込んだ料理の数々を作っている。
そして俺は、
…………やっぱり、なんとなく、居心地が悪い、というか、……少々照れくさい思いをしている。
「わぁ〜、すごい! 本物のツリーだ〜v」
「これ、今日のためにわざわざ? もしかして産地直送だったり――」
「…いや、俺は単に尚也に教えてもらった店で買っただけで、産地がどうとか、細かいことはよくわかんね」
お招きいただきありがとう、と。純白にイラストをワンポイントあしらった招待状片手にやってきた蘭や和葉や青子、園子、白馬と紅子、それに博士、灰原といういつものメンバーが。それぞれ反応の違いはあっても、一番最初に注目したのがコレだった。
あの日。尚也につれていかれた店で、こんなのもいいんじゃねーの? とオススメされた一本のモミの樹。
たとえ小ぶりではあっても。
…飾りつけがちょっと、いまいちではあっても。
生のツリーというのは珍しいらしくて、――尚也が言うところの 『ほんのちょっとのサプライズ』 の役割を見事に果たしているようだった。
(……なんでこんな照れなきゃいけねーんだ。別に俺が誉められてるわけでも……)
わいわいとツリーを囲んで楽しそーにしている一団を、遠巻きに眺めながら。
なんとなく。あっちへ、こっちへ、視線をうろうろさせてしまう。
「ところで工藤君。居候の二人はどうしたの?」
「――あー。あいつらなら、準備するのの邪魔になるから外に放りだした。…そろそろ戻ってくんじゃねーの?」
嘘、じゃあない。
邪魔になるから放りだした。というのは事実だ。
ただ。――尚也に手伝ってもらっているのを知られたくなかった、という部分が欠けているだけだ。
そんな言葉を返すと、灰原は 「ふうん」 と意味ありげな微笑を浮かべて、俺のことを上から下までじいっと見つめてきた。…バレている可能性、80%オーバーといったところか。
なんだかまたじわじわと気恥ずかしさがこみ上げてきたので、目を逸らす。ぐるりと室内を見渡す。
…飾りつけ、は。はっきりいって地味だ。ツリーと一緒に買った花と、小さなキャンドルがいくつかテーブルの上に。天井や壁はほとんど手付かず。いろいろ助言してもらいながらあれこれやってみたが、正直俺にはこれが精一杯、といったレベル。
それでも尚也は――上出来だと、言ってくれたけれど。
俺にしてみれば、やはり快斗が作り出すあの空間には及ばないと思うわけで。
及ばない、なんて思っていればそりゃあ憂鬱にもなるさ。
はあ、と溜息。楽しげな雰囲気を壊さないよう、こっそりと。
「――さあってと。ミッションコンプリート!」
と。キッチンから得意満面な顔して、尚也が出てきた。
両手に持った皿の片方を俺に押し付けて、にいっと笑ってみせる。
「これはそっちのテーブルに置いてー、――あと蘭、外に飲みもん冷やしてあるから取ってくれるか?」
「はーい。全部中に入れちゃう?」
「ん、最初は二、三本でいいや」
思う存分好き勝手に料理作れて満足げな顔。……というにはちょっと、おかしい、ような。
けれどそれを問いつめる前に、手渡された皿を置いてしまわないといけなくて。
自然と、視線もテーブルの方へ縫い止められるわけで。
蘭ががらりと窓を開ける、その音にも背中を向けていた。
「「めりーくりすまーす!vvv」」
手が滑る。皿が落ちそうになる。すかさず横から別の手がすっと伸ばされて、それを支える。
あの日、見せていたのと同じ顔で。
「ちょっ…、快斗君に服部君!? どうしたの、その格好――」
「まあ見たまんま、出張サンタでーす♪ 良い子の皆さんにプレゼントをお届けにまいりましたー♪」
「さすがに煙突はあらへんからな、庭から邪魔するでv」
ぎぎぎぎぎ、と首を回す。開いた窓の向こうに、赤い影二つ。
不法侵入者として警察に突き出してやろうか、とかちらり考えてしまったのはこの際見逃せ。うん。
「プレゼント? なになに?v もしかしてその袋の中身全部そうなの?」
「そや。っちゅーても、ぜーんぶ快斗が選んだお菓子なんやけどなv 好きに手ぇ突っ込んで持ってってええでー」
「ああ、あと尚には特別に一品プレゼント持ってきた♪ なんせこの忙しい時期に時間割いてくれたんだもんねv」
「おー。そりゃどうも」
――――。
待て。
この見事なタイミングといい、このセリフといい、
それは、つまり。
頬をひくひく引き攣らせながら、尚也を、見る。
憎ったらしいほどにさわやかな笑顔。
「………………お前、」
「口止めされた覚えはねーしなぁ。それに言ったろう? パーティーにドッキリはつきものだって」
にこにこにこにこ。
とてつもなく、満足げな顔。なんか 「してやったり」 と書いてあるようにも見える。
つまり。…つまりそういうことだ、
『損得勘定』。『悪巧み』。
大きな袋を担いだまま、似非サンタが二人庭から上がりこむのを傍目に。
俺はゆらりと重い足取りで尚也のすぐ側まで行って、真正面から目を合わせて、がっしとその肩を掴む。
「……つまりはこれがお前にとっての 『報酬』 ってことか」
「いやあ、予想以上に笑えるリアクションありがとう♪」
「ははははは、いやあそれほどでも」
大きく息を吸って、深呼吸。
肩を掴んだままの手にどんどん力がこもるが、尚也はまったく表情を変えない。
いやもう。ここまで見事にはめられると、いっそ清々しいというか。
「…くっそ、要するにお前の一人勝ちってことじゃねーか…」
「や、そうでもないと思うけど」
え。
と、一瞬力を緩めた隙に、手を振り解かれる。さりげなく距離を取られる。
「新一〜? あんまり尚のこといじめるなよなーv こんなに立派なパーティー用意してもらったんだからさーv」
「――――、え。」
「招待状出して部屋飾って、おまけに料理まで作ってくれたんやもんなぁ。ほんま、お人よしっちゅーか…」
「ううん、それはちゃうよ? 確かに料理は全部藤堂君が作っとったけど、飾りつけしてたんは工藤君やで?」
「「…………、え?」」
一瞬、沈黙がおりる。
「うそ、ぉ」
「嘘じゃないわよー。このツリーも、テーブルの花も、全部新一君」
「僕からも証言しましょう。実は今日は少し早めに来てしまったもので、最後の仕上げをしているところを目撃してしまったんですよ」
「そうそう。ツリーのてっぺんに星つけるかつけないか悩んでたんだっけ? …なんだか工藤君らしくなくて、ちょっとかわいかったな〜v」
「じゃ、……ほんまにほんま、なんか…?」
「これ全部、新一が…? …うっそぉ、」
サンタ姿の二人が、間の抜けた顔して辺りをぐるりと見回す。
尚也はやっぱり笑っていたが、俺の視線に気付くと、こっそり、唇を動かした。
(これで本当にミッションコンプリート。御満足いただけたかな?)
…やっぱり、お前が一人でいいトコどりってのは変わらないじゃないか。
「――さあ、ドッキリはここまでだ。後は普通にパーティーを楽しもうぜ♪」
でも。
完全にしてやられたけど。
なんか、
「シャンパンを開けるのは工藤の役目だな。窓、割らないように」
「…心配すんなって。それは、慣れてる」
…いいや。
なんか、楽しくて笑えてきたから。
クリスマスプレゼントという言葉に甘えて、奪取して参りました(笑)。
リンク部屋にも書いた通り、留意は六神さんが書かれるオリキャラさん達が、大のお気に入りなんですvv