プロローグ 水の音がする。 激しく水が叩きつけられる音だ。 それもたくさんの水が。 …水の音がする。 体がやけにだるい。 僕は一体どうしたのだろう。…どうなってしまったんだろう。 目をあけた。 目の前には水が激しく動いて滝をつくっていた。自分が草むらに寝そべっている事に、その時、ようやく気がついた。 僕は一体どうしたのだろう。 ふと滝を見つめていると、何か光る小さな物体が目に付いた。 少しずつだが、滝の上から僕に近づいてくる。今にも水に巻き込まれ見えなくなってしまいそうなほどの小さな「何か」。 僕は起きあがる元気も無く、草むらの上から「何か」を目で追っていった。滝壷に消えたかと思うと、やっぱりそれは僕に近づいてきていた。…一体なんだろう? ゆっくりと水に押され、光る「何か」の正体が明らかになってくる。 「…バッチ…。…勇者の…。」 それは間違いなく、親友サイラスが勇者の証として身につけていた「勇者バッチ」であった。 次のページへ |