「グレン。俺についてきてくれるか?…危険な旅だとわかっていても。」
 あの日のサイラスはそう言った。
 「…あたり前じゃないか。誰かがやらなくちゃいけないんだ。」
 幼い日の俺はこう答えた。

 ガルディア城の重々しい扉がゆっくりと開いていく。そして俺達はここから旅立つんだ。青い空の下へ。…あんな事になるとは、知りもしないで。…重い扉をくぐって。
 サイラスの役に少しでもたちたい。
 誰かを守りたい。
 すべての期待を背負って、俺達は重い扉をくぐっていった。

 「グレン!」
 旅立とうとした俺の後ろから、美しいその人が近づいてくる。…ただひとつ、俺が旅立つ事を迷わせた「その人」が。
 「…気をつけて。」
 振りかえるとそこにはいつも、貴女の笑顔があることが嬉しくて。
 俺はこの人を守りたいと思った。たとえ、かなわぬ想いだとしても。この人だけは守りたいと。

 サイラスの背中を追いかける。貴女が俺の後ろにいる。それだけが俺の戦う理由になっていた。


 そして俺はまた、ふりかえる。


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