6、前兆 俺は城に帰ってきた。…だが、当然の事ながら、俺の名を呼べる者はいない。 「カエル」として再び自己紹介をする。 王妃様は俺に気を使ってくださったのか、俺に直々の用心棒になるようにとおっしゃってくださった。こんな姿の俺が騎士団に入るとつまらぬいざこざが起こりかけない。そう配慮してのことだろう。元々騎士団になど入る気がなかった俺にとっても、それは都合がよかった。 城のものには良い目をされなかったが、そんな俺に王妃様は変わらず話しかけてくださった。それが救いでもある。 そして城の中には俺が城から出入りすることすら嫌悪を覚える奴らがいた。 ことの始まりは、俺が城に出入りするようになって3ヶ月ほどたとうとしている時だった。 謁見の間に、騎士団とその他戦力になりうる者たちが集められた。もちろん、俺も例外なく。 赤いカーペットの上にふさぎこむように座った騎士達。 …俺は、サイラスを思い出していた。 そして、まさかあんなことになろうとは、俺はこのとき思ってもいなかった。 続く 小説版カエル物語 後編へ |