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挨拶と「萩大名」「萩代議」の
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現代狂言
−狂言とコントが結婚したら−

2006年7月2日(日) 大槻能楽堂

−感想−


「狂言とコントが結婚したら」という副題が付いていますが、この結婚は見事に成功したようです。
そして、その成功の1番の功労者は仲人の「演劇」であり、脚本と演出を担当した壌晴彦さんだと思います。
今回の現代狂言は野村万蔵さんや南原さんをはじめたくさんの方々の力があってこそ成立したものですが、特に大蔵流に師事して狂言に携わった経歴を持ち、演劇の演出家であり役者である壌さんなくしては成立しなかったのではないかと感じました。
南原さんの発想やアイデアを、狂言と現代劇の両方を熟知している壌さんが1つの形にまとめ、それを万蔵さんや南原さんたち演者が膨らませていく。
それで、あのように素晴らしい舞台になったのだと思います。
東方朔の「良い人と出会いました」というセリフは、南原さん自身の感想ではないでしょうか。


「萩大名」「萩代議」「連句」の3つの作品が、実は全て繋がっている見事さ。
狂言から始まり狂言が少しずつ崩れていってまた狂言に戻るという構成と、狂言の衣装を着ていても「コスプレ」という名目で許される街・秋葉原が舞台という設定の上手さ。
古典の言葉で解り難い「萩大名」を現代を舞台にして現代語で解り易くした「萩代議」ですが、先に「萩大名」を見ているからこそ内容が深く解ります。
「萩大名」の大名が萩の庭を見る場面で、本当に客席に庭があるような気にさせてしまう所作の見事さには溜め息が出てしまいました。
現代版の「萩代議」は言葉の意味は良く解りますが、残念ながら所作で庭があるようには見えませんでした。
でも、「萩大名」での野村万蔵さんの所作がルー大柴さんの所作を補い、「萩代議」の現代語が「萩大名」の解り難い言葉の意味を補っている。
そして、「萩大名」と「萩代議」という2つで1つのものを見た後だからこそ、より「連句」の内容に深みが増します。
「連句」のラストで東方朔が「こころ 萌え 優しき人は今いずこ 胸いっぱいに 夕焼け小焼け」と句を読む場面、オタク青年たちがジェスチャーで東方朔に伝えるところで「萩大名」と「萩代議」と「連句」が1つに繋がる素晴らしさ。
やはり、何においても脚本が大事なんだな〜ということを痛感しました。


そして、音楽が秀逸でした。
軽やかで心が弾む曲から涙腺を刺激する物哀しい曲まで、バラエティーに富んだ数々。
肩を震わせて笑いながらも、見事な演奏を聴かせてくれた楽士お三方に拍手です。
まさか、三味線で奏でる「六甲おろし」を聴くとは思いませんでした(笑)。
ラストの「夕焼け小焼け」の何と美しいこと!
あんなに物哀しくて胸に染みる美しい曲とは思いませんでした。
和楽器、恐るべしです(笑)。


演者が全員素晴らしかったのにも拍手でした。
ビックリしたのがエネルギーのお2人で、所作も発声も見事でした。
特に、秘書役の平子悟さんは若手の狂言師と紹介しても通じるのではないかと思いました。
着物に袴姿という踊り難い格好で踊ったタンゴもステキでした。
経験者の天野くんは本当に良い声ですね〜(笑)。
暴走するウドちゃんに対するツッコミもさすがでした。
ルーさんは予想外に声が通っていて、オーバーな演技も舞台向きで良かったです。
ギャグもTVで見るより面白かったし(笑)。
ドロンズ石本くんは、いい加減な業者の役がピッタリで笑ってしまいました。
個人的に1番笑ったのがウドちゃん。
何を言ってるんだか解らないし、わけが解らないのにツボにハマってしまって・・・。
一体何なんでしょう、あの人は(笑)。
終演後、ウドちゃんが販売していた毛が生える商品名の「アミノ酸入り磁気ネックレス高級羽毛布団アルカリイオン水」が頭の中をグルグル回って困りました(笑)。
南原さんの所作の美しさには本当にウットリとしてしまいました。
ウリナリ狂言部の時に身につけたものに加えて、「義経」で学んだ所作や「ユーリンタウン」の時のボイストレーニングが生かされていたのではないかと思います。
今まで学んだことを違う形できちんと現せる南原さんの凄さを、今回改めて感じました。
久しぶりにタンゴを踊る南原さんが見れたのも嬉しかったです。


舞台では良くあることですが、いくつか大阪向けのご当地ネタがあったことも嬉しかったです。
ハガキの差出人の住所が「富田林市」とか、ルー代議士が登場の音楽が「六甲おろし」とか。
私が1番ウケたのは、ラストの東方朔と天野氏の帽子交換の場面。
帽子を差し出した天野氏のセリフの「これアキバ限定の帽子、でんでんタウンのは持ってるから」。
でんでんタウンって・・・(笑)。


南原さんは最初の挨拶で、「(観客は)コントと狂言が結婚して生まれる子供を取り上げる助産婦さんになる」と話していましたが、南原さんたちが生み私たち観客が取り上げた愛しい子供である「現代狂言」が、この先どんな風に育っていくのか。
それを、これから先もずっと見続けることができるよう切に祈ります。



※でんでんタウンとは、東京の秋葉原と同じ電気街でオタクの街である大阪の日本橋の電気街の名称のことです。



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