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ナンちゃんの落語会

2005年7月16日(土) ヤマハホール
「大銀座落語祭2005」
−お楽しみ企画A 第1部−


古典落語
「代脈」

−完全ネタバレですのでご注意ください−


◆「代脈」に限りませんが、大筋やオチは同じでも噺家のアレンジによっていろいろなところが違っています。
以下は、今回の落語会で南原さんが披露した「代脈」に補足を加えたものです。


江戸時代には医師の国家試験などはなく、希望すれば誰でも医者になれました。
それ故、名医からヤブ医者まで医者としての腕は幅広かったといわれます。
通常は名のある医者に弟子入りして修行をし、数年後に師匠の許しを得て開業していました。

ある日、ある名医の大先生が、居眠りばかりしているデキの悪い弟子の男(名前は州達ですが、銀南という名前の場合もあります)を呼びつけます。
この男は、大先生が医者を怖がる子供を宥める道具としてお菓子を持って行くのを、「うちの大先生はお菓子を食べながら診察に出かける」と思い込んで人に話すような男です。
大先生は男を代脈に遣わすと言い出します。
この時代の診察とは主に脈をとることで、先生の代わりに弟子が診察に行くことを代脈といいました。
蔵前の伊勢屋のお嬢さんが具合が悪く、普段は大先生が診察に行っていたのですが、今回はこの男に代脈として行ってもらうのです。
そこで、大先生の細かい医者としての行儀作法講座が始まります。
適度に貫禄を持った態度で挨拶をし、中に通された後に出てくる茶菓子の羊羹は、食べ飽きているという顔をして勧められたら一切れだけ食べるなど、着いてからお嬢さんの部屋に入るまでを、順番に事細かに大先生は教えます。
寝ているお嬢さんの脈をとって一通り診察するまでを説明した大先生は、医者にはとんちが必要と、お嬢さんの下腹部にあるしこりを押した時の話をします。
以前、大先生が何気なくそのしこりを押すと、お嬢さんはおならをしました。
お嬢さんが顔を赤くして恥かしそうにしているので、大先生は何もなかったように掛け軸を見つめました。
側にいるお母さんに手を洗うよう勧められた大先生が、「ここのところ自分は耳が遠いから大きな声で喋ってください」と話すと、お嬢さんはおならを聞かれなかったと安心したという話です。
話終えた大先生は男に自分の着物を着せ、普段使う駕籠を呼び、男を代脈に出しました。

駕籠かきにバカにされながら、男は駕籠に乗って伊勢屋に向かいますが、道中で眠ってしまいます。
駕籠は伊勢屋に到着し、駕籠かきに起こされた男は迎えに現れた伊勢屋の手代と共に中に入ります。
男は「大先生がおっしゃるには、煙草が出るということでしたが」などと大先生が説明したことをそのまま口にして、煙草やお茶や羊羹を催促する始末。
挙句に1切食べた後の残った羊羹をくれるように催促し、自分が持ってきた紙に自ら包んでそのまま帰ろうとしてしまいます。

ようやく診察のためにお嬢さんの寝室に入った男ですが、布団の中に手を入れてお嬢さんの脈をとるはずが、猫の手を掴んでしまいます。
気を取り直して、お嬢さんの脈をとり胸から腹へ診察した男は、大先生が話していた下腹部のしこりをみつけます。
男は、大先生が押したのに自分が押して悪いわけはないと思います。
大先生は何気なくスッと触ったのですが、この男は最初から押す気で押したので、大きな「ブ〜ッ」という音が響き渡ります。
押した本人は、掛け軸を見るのも忘れて大慌て。
側にいたお母さんに手を洗うよう勧められ、ようやく落ち着いた男は、大先生と同じように「ここのところ自分は耳が遠いから大きな声で喋ってください」と話します。
「大先生も耳が遠いようですが、若先生も?」と聞かれた男が一言。
「ええ、遠くなりまして、今のおならも聞こえません」


参考文献 「古典落語(下)」 興津要編


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