すべての思いを家族に 3   田上 豊

 今年は台風に新潟中越地震等,日本列島が大変な災害に見舞われました。
 災害で家族の絆が強くなった家庭もあります。「災い転じて福来たる」の方もあると聞きます。一つのショック療法でしょうか,ですが地震国日本,何時,何処で災害に会うか解りません。大自然の働きは我々人智の遠く及ばぬ所にあります。
 ここ数年日本の伝統的な行事,又,伝統的な家庭が少なく成ってきました。家族の絆が弱まり「家庭の崩壊」が心配されます。親孝行が死語になり,自分中心の考え方,行動を民主主義と履き違えている人は居ないでしょうか,心配されます。
 親と子の絆を考える時に,私達には両親が居てこの世に生まれてきた現実を直視しなければいけないでしょう。両親,又,その親,何代も,さかのぼればもの凄いご先祖がいます。この代々の親達は,皆自分の子供を幸せにしょう努力してきました。それは昔も今も変わりがありません。
 今,子供達が親の価値観を認めないのはどうしてでしょうか? 又,親達が子供の価値基準が解らないのはどうしてでしょうか? 共に考えたいものです。

『無言館』を訪ねて        陶久 敏郎

 平成16年11月3日の夕暮迫る頃,長野県上田市塩田平の丘に建つ『無言館』を訪ねた。朝9時に能登半島最北端の「ランプの宿」を出発し,高速道路を走り続けてたどり着いたのがこの時間である。
 平成9年5月1日に開館したこの美術館は,信濃デッサン館の館主である窪島誠一郎氏が画家野見山暁治氏とともに,日本各地の大東亜戦争の戦没画学生のご遺族のもとを探し訪ね,その遺作や遺品,資料300余点を展示している異色の美術館である。
 私の父も祖父もすでにこの世にいない。父や祖父の世代の日本人は,当時二十歳前後の彼らの出征に際し,「靖国神社にきっと会いに行きます」と固い約束をして戦地に送り出した。死地に赴く若者と交わした今生の契りを,私は日本人として守り続けたいし,そのことを私の3人の子どもにも伝えたい。
 涙でかすんでよく見えなかったこの詩を,後日『無言館』の事務局にお願いして送ってもらった。

あなたを知らない   窪島 誠一郎

遠い見知らぬ異国(くに)で死んだ 画学生よ
私はあなたを知らない
知っているのは
あなたが遺(のこ)したたった一枚の絵だ

あなたの絵は 朱い血の色にそまっているが
それは人の身体を流れる血ではなく
あなたが別れた祖国の
あのふるさとの夕灼(や)け色
あなたの胸をそめている 父や母の愛の色だ

どうか恨まないでほしい
どうか咽(な)かないでほしい
愚かな私たちが あなたがあれほど私たちに
告げたかった言葉に
今ようやく
五十年の経ってたどりついたことを

どうか許してほしい
五十年を生きた私たちのだれもが
これまで一度として
あなたの絵のせつない叫びに
耳を傾けなかったことを

遠い見知らぬ異国(くに)で死んだ 画学生よ
私はあなたを知らない
知っているのは
あなたが遺したたった一枚の絵だ
その絵に刻(きざ)まれた
かけがえのないあなたの生命の時間だけだ


 左から稲村さん,篠原さん,筆者
【別所温泉:かしわや本店にて11月4日撮影】

 笑 顔 の 力      南谷 幸久

 今年のプロ野球は西武ライオンズの日本一で幕を閉じましたが,セ・リーグでは中日ドラゴンズの,落合監督が就任1年目で5年振りの優勝に導いた。さしたる補強もせずに選手たちを信頼して,失敗を恐れずに送り出し,能力をフルに引き出し,あの強力打線を誇る巨人を押さえての優勝は見事とか言いようがありません。監督のダッグアウトの姿は,いつもほほえみ,苦笑い,無表情で,シーズン中に怒ったところを見せなかった。ピンチの時にはマウンドに行き,明るく笑顔で選手に接し,かるく言葉をかける姿はなんとも言えない雰囲気があり,選手はリラックスして自分の力をフルに発揮して,ピンチをしのぎ,守り勝つ野球を身に付けたことが,優勝に繋がったといっても過言ではないと思います。
 今,球会はパワー志向を一段と高めておりますが,先ず守りを固めることが何よりも大事だと思います。このことは野球に限らずすべてのことに言えるのではないでしょうか。徳島出身のエース川上憲伸も自己最多の16勝をあげ中日優勝に大きな貢献して,守り野球の要になりました。来年も今年以上に活躍され是非日本一になって,監督を胴上げしてもらいたいものです。

 芸術は爆発だ!!  森 直哉

 「芸術は爆発だ!!」先月,お話した岡本太郎について,もう少しだけお話します。
 今はもう亡くなっていますが,芸術に対する影響力は,日本人の中でもっともすごいひとだったといえるでしょう。
 岡本太郎の芸術テーマは「芸術とは,心地よくあってはならない」です。だから,すべての絵,彫刻にいたるまで尖っています。何か攻撃的で,暴れているような印象を持ちます。
 以前「座ることを拒む椅子」に実際座ってみました。見たことがある方はわかると思いますが,座る面に顔があります。牙をむいて,いかにも座らせないぞ,といった感じのする椅子です。
 座ってみました。はっきりいってそのまま。すわり心地がよくない。お尻が痛い。見た目も座りたくないような感じの椅子でした。でも,よくみると愛着のあるかわいい顔をかたどっています。この作品には,攻撃的な面と愛着のある面の2面を感じ,なんとなく,バランスをとった作品だと思いました。
 実は太郎はフランス語,英語,日本語べらべら・・・ピアノまで弾くことができます。実際,フランスの歌を歌いながらピアノを弾く岡本太郎の映像が残っています。このことは,意外と知られていません。僕が,岡本太郎は,すごい人だなぁと思うひとつであります。
 あるテレビのリポーターが,「あなたは,画家ですか,それともデザイナーですか,音楽家ですか,陶芸家ですか,建築家ですか」と尋ねたそうです。その答えとして,「私は人間だ!!」と答えたそうです。
 この意味は様々でしょうが,僕の中ではこの答えは「人間はなんにでもなれる」という意味だと思っています。可能性を秘めている。そういいたかったのではないのでしょうか・・・。
 時々テレビに出たりして,不思議なおじさんである岡本太郎。実は日本を代表して世界に通用する立派な芸術家であることをすばらしく思います。
 あの世界の北野たけしが師事する岡本太郎は本当に天才的な人だと思いました。