エロスとアガベ　　　松林 幸二郎

　その２
　Mさんのお話しを聴いて私は大変感銘をうけるとともに，容姿やエゴが中心の男女の恋愛や，親の子に対する情愛といった自然愛（ギリシャ語でエロス）と，条件なしの無償の愛（アガベ）の決定的な差を考えました。有島武郎の小説に「愛は惜しみなく奪う」がありますが，題名の愛はこのエロスのことで，その性格を現すものでしょう。男女はお互いの容姿，誤解や思い込みによる相互の性格に引かれ，これをアガベの愛と錯覚しますが，これは私の欲求を満たし満足させてくれ（そのために，自分の全てを与えよう）という極めてエゴイスチックな情愛がほとんどではないでしょうか。それゆえ，長続きしない“恋”が現実生活のなかで消滅してしまうと，もともと希薄だった“愛”が無くなったと錯覚して離婚や別れに至って不幸を味あうことになります。
　親の子に対する“愛“は自分の犠牲をいとわないアガベに近いところもありますが，我が子の容姿の良さ，優秀さ，他に自慢できる学歴や社会的地位を強く望み，自己の欲望の実現を子に強い，自分の子さえ良ければ，というエゴに支配される愛つまり“エロス”で，Mさんのもつ“アガベ”とは異なるように思えます。ドイツ語では，“恋”も“愛”も共にLiebeですが，日本語は“恋”と“愛”の分かれ，そこに先人の知恵をみますが，問題はアガベは自己の意思ではなかなか持ち得ないことです。Mさんは，アガベそのものである神を信じるクリスチャンですが，昨年夏北ドイツでお会いし，あの波風にも書いたこともあるホームズ恵子（戦時中，日本軍に虐待された元捕虜を訪ね，日本に迎えるという謝罪の旅を永年続けておられる）と同じ信仰をもっておられるところに，受けることしかできぬアガベの性格があると思いました。

天女の花オオヤマレンゲ自生地
　　　　　　　　　　　　　　　尾野 益大

　四国の山で極めて珍しく，徳島県版レッドデータブックで絶滅危ぐ類に指定されたオオヤマレンゲの大規模な自生地が，三好市の剣山山系の国有林で見つかった。奈良の大峰山系（国指定天然記念物）の自生地をのぞき一般に大群落は形成しないとされるが，高ノ瀬でも比較的狭い範囲で花が咲いた株が九十四本確認された。四国最大の自生地と見られる。
　確認されたのは，剣山の西約五kmにある高ノ瀬（一七四〇.八m）から西の一七三八m地点付近まで続く尾根約八百mの区間の北斜面。剣山国定公園内に含まれ，四国森林局指定の貴重な動植物の保護エリア「緑の回廊」の範囲内にある。
　確認したのは愛媛県四国中央市のＮＰＯ法人剣山クラブ会員，石川道夫さん＝山岳写真家。石川さんは剣山国定公園の監視活動の一環で友人と約八時間かけて同山を往復。高ノ瀬付近では斜面で，花が咲いた株を一本ずつ確認した。根元から数本に分かれた株も一本と数えた。急傾斜の斜面は下れず数えられなかった株が多数ある。
　オオヤマレンゲは，奈良の大峰山系で発見され自生地百八haが一九二八（昭和三）年，国の天然記念物に指定された。四国では徳島の剣山や三嶺，樫戸丸，石立山，矢筈山のほか，愛媛の石鎚山，瓶ケ森，東赤石山，高知の白髪山，大川嶺，中津明神山など深山に分布するが，それぞれ最大で十数本ある程度とされる。ファンの間では「天女の花」と呼ばれ，梅雨の中，深山を訪ね歩く人は少なくない。霧に浮かぶ純白の花を見つけ，間近でにおった甘い芳香は忘れられないという。
　石川さんは「高ノ瀬の株は数が多いだけでなく他の山と比べて樹高が高い。四国屈指の縦走路が近くを通るが剣山，三嶺と違い高山植物がなかった。オオヤマレンゲは全国に誇れる剣山の新しい目玉になるのではないか」と話している。
　地元の自然に詳しい三好市文化財保護審議委員の中野寛さん＝三好市東祖谷山菅生＝は「十本程度あるとは聞いていたが百本近くもあったとは驚いた。現地調査をして今後，保護策について検討する」と話し，県立博物館の小川誠学芸員も「かなりの自生数と思われる。地形など生育環境が興味深い。他の珍しい植物もある可能性がある。シカの食害を受けている恐れがあり，保護する必要があるだろう」と話している。

変化っヽ(○´∀｀)ノ 　　　hana♪ 出越 恵子♪

「戦争はやめろ！」　北島 健司