大自然の温もり 道路が舗装され,交通量が多い所を多少歩くにせよ,数多くの大自然を目の当たりにする。そして,普段の喧騒から離れて,静かな田舎町を歩く事により,季節の変化に敏感になり,感性を磨く事ができる。例えば,畦道に咲く彼岸花。赤いビロード模様が田園風景に広がり,コスモスと棚田の景観を共演している。そして,後ろを振り返ると,丸く色艶よく育った富有柿が,カラスにやられまいとしっかり枝にしがみつき,早生みかんと共に芳香を放出している。人と話すのをやめて,耳を澄ませば遠くで鐘を突く音が聞こえて,昔にタイムスリップした感覚を覚える。このように,大自然の雄大さが本来持ちえた感性の豊かさを,思い出させてくれる。
地元の親切な人々 「ふるさとの里さかもと」に第一陣で着いた後,時間に余裕ができたので学校の周りをゆっくり散策した。その時,地元の人と話す機会が得られ,様々忙しいのにも関わらず,懇切丁寧に質問に答えてくれた。棚田で,分担して稲穂を干している老夫婦。蒟蒻のあまり物を加工し,糊に使う作業に勤しむお婆さん。野菜畑で草抜きに余念を許さない,おばさん。暗い埃かぶる倉庫の中で,蚊取り線香の元となる材料を,自然の植物から加工しているおじさん。皆が,満悦の笑顔で受け答えをしてくれ,そんなに人生焦らなくてもいいぞと,暗黙に教えてくれた。
数多くの史蹟・名所址 お遍路の間,多くの史蹟を目撃し,いつの時代に,何のために建立されたか分からないが,趣深さを随所で感じた。時々,苔に覆われた史蹟を手で触れ,文字を読もうと試みるもうまくいかず,悔しい思いもしたが,何百年も前の人が,何かの理由で立てたと想像するだけで,楽しくなった。おそらく幾つかの重要な史蹟もあったのだろうが,そのような文化遺産に気軽に接近できるのは,他では類を見ない。