お遍路と私(4)    秋山 容洋

大自然の温もり  道路が舗装され,交通量が多い所を多少歩くにせよ,数多くの大自然を目の当たりにする。そして,普段の喧騒から離れて,静かな田舎町を歩く事により,季節の変化に敏感になり,感性を磨く事ができる。例えば,畦道に咲く彼岸花。赤いビロード模様が田園風景に広がり,コスモスと棚田の景観を共演している。そして,後ろを振り返ると,丸く色艶よく育った富有柿が,カラスにやられまいとしっかり枝にしがみつき,早生みかんと共に芳香を放出している。人と話すのをやめて,耳を澄ませば遠くで鐘を突く音が聞こえて,昔にタイムスリップした感覚を覚える。このように,大自然の雄大さが本来持ちえた感性の豊かさを,思い出させてくれる。
地元の親切な人々 「ふるさとの里さかもと」に第一陣で着いた後,時間に余裕ができたので学校の周りをゆっくり散策した。その時,地元の人と話す機会が得られ,様々忙しいのにも関わらず,懇切丁寧に質問に答えてくれた。棚田で,分担して稲穂を干している老夫婦。蒟蒻のあまり物を加工し,糊に使う作業に勤しむお婆さん。野菜畑で草抜きに余念を許さない,おばさん。暗い埃かぶる倉庫の中で,蚊取り線香の元となる材料を,自然の植物から加工しているおじさん。皆が,満悦の笑顔で受け答えをしてくれ,そんなに人生焦らなくてもいいぞと,暗黙に教えてくれた。
数多くの史蹟・名所址  お遍路の間,多くの史蹟を目撃し,いつの時代に,何のために建立されたか分からないが,趣深さを随所で感じた。時々,苔に覆われた史蹟を手で触れ,文字を読もうと試みるもうまくいかず,悔しい思いもしたが,何百年も前の人が,何かの理由で立てたと想像するだけで,楽しくなった。おそらく幾つかの重要な史蹟もあったのだろうが,そのような文化遺産に気軽に接近できるのは,他では類を見ない。

                 (つづく)

Baan Nok Kaminのこと 松林 幸二郎

 11月のはじめアッぺンツェルには初雪が降りました。我が家で夕食を摂り遊んだ後,日もたっぷり暮れた戸外に出た2人のタイ人の少年,生まれて初めての雪に遭遇して驚喜しながら走りまわるクリスト君(10才)とピース君(6才)。その2人を優しく見つめているのは,里親のスイス人,東スイス ヘリサウで生まれ育ったエルビン グレブリ(70才)さんと奥さんのエレンさん。タイ中部スコタイに住み,私たちとはもう20年も前からの友人です。
 エルビンさんは,かって花形職業であったスイス航空のシェフ スチアードで,独身貴族を謳歌していたものの,その人生に疑問をもち,ベアテンベルグ(ベルン州)の神学校に40才を過ぎて入学しました。卒業後,タイで学生の間に福音を伝えるミッションを与えられ,1982年46才のときタイに渡り,語学取得のため大学に通い始めました。しかし,首都バンコックで彼がみたのは,ドラッグ,アル中,犯罪による家庭破壊によって放置された無数の浮浪児(ストリート チルドレン)で,見て見ぬ振りの出来なかったエルビンさんは浮浪児たちを連れて帰り,食事と寝床を与え,彼らの汚れた服の洗濯を始めました。
 彼の小さなアパートでは面倒をみれる子どもの数は限られていますので,85年家を借り,その後,スイスの宣教団体や,個人の支援を得て,施設バンノークカミン(Baan Nok Kamin 巣を失った鳥の意味)を設立し,さらに多くの子どもたちの親となって面倒をみることになります。
 91年に,サングトガーレン市で看護婦をしていたエレンさんが,エルビンさんの仕事に伴侶として加わり,多くのストリートチルドレンがバンコクに三軒,そして,中部スコタイにマンゴ農園や農場を抱いた一軒に,飢え,恐怖,孤独から開放された大家族(Grossfamilie)として暮らしはじめます。私もエルビンさんたちの私心を投げ打った働きに深く心を動かされ,93年に私のリトグラフ作品を多く抱えバンコクに Baan Nok Kaminを訪れ,エルビンさんたちと子どもたちの暮らしぶりをつぶさに見る貴重な体験をする機会を得ました。リトグラフ展は,ネッスル社が全面的に支援をし,スイス日本両国大使がスピーチをして大成功を収め,その売り上げ全部をBaan Nok Kaminに用いていただけたのは誠に幸いでした。
 その後,タイ国に認知され,スイスにも更に多くの支援者を得ながら,Baan Nok Kaminは,94年,南タイのファタルングにも建てられ,一昨年の大津波による孤児を,中部スコタイには,麻薬患者のリハビリ施設,そして性的虐待にあった女の子たちを庇護する家が建てられます。それぞれの大家族をタイ人のリーダーに完全に任せたものの,70の齢に達しながらも,虐げられる子どもらのために,夢の実現に奔放するグレブリさんの小柄背筋を伸ばした美しい姿は,昨年秋,恵那で会った小野田寛郎元少尉の凛々しい姿を彷彿させてくれたものでした。

余裕のよっちゃん  橋本 節子


 新年明けましておめでとうございます!
 うれしい事に,今年は暖冬な上,穏やかなお正月を迎える事が出来てほんとに良かったと思っています。
 その上,春には我が家も二人目の孫が産まれる予定,今まで以上に賑やかで活気のある年に成りそうです。
 そこで,私,今年こそは,「忙しい」「忙しい」を連発してもたもたしない事に。何事にも余裕を持って対処出来るように少し早めに行動を開始しようと思っています。
 気持ちゆったりとして,あせらないで笑顔でやって見ようと思っています。

石コロ動物アート    平 澄子


 楽しみにしていた「石コロ動物アート展」が,ドクターエンドー徳島店で1月18日より始まりました。
 イヌ,ネコ,イノシシ,ウサギ,ふくろうなど,数々の石の動物が400点ほど並んでいます。
 動物好きの私としては,毎日眺めて想像しているだけで楽しくなってきます。
 もしかしたら,この動物達が夜中に騒ぎ出し,ネコはニャオニャオ,イヌはワンワン,・・・イノシシは,ウサギは何て鳴くのでしょう。
 そんな事を空想しながらいつも眺めています。