「あらたえ」とは (1)          三木 信夫

1.あらたえ(阿良多倍・粗栲・荒妙・麁妙・麁服)とは
 天皇が,即位後初めて行う践祚大嘗祭で悠紀殿・主基殿の神座に神衣(かむそ)として祀る織物で,上古より阿波国麻殖忌部氏の役割として,指名された忌部氏人達が御衣御殿人(みぞみあらかんど)となり,麁服神服(あらたえかむみそ)として神祇官に調製・供納する麻織物をいう。御殿人は,上古より阿波忌部氏人達から卜定によりその都度選定されていたが,鎌倉時代にはすでに御殿人の家筋も三木家などにほぼ固定している。尚,阿波忌部氏以外のものが調製した場合麁服ではない。
 御殿人=麁服奉仕者で麁服と共に京師へ上る人を云う
 御衣人=麁服奉仕者で麁服を調製する人を云う
 麁 服=現在は4反(1反は鯨尺で幅9寸・長さ2丈9尺)
       由加物の麁布(あらぬの)とは別

2.あらたえ貢進の仕組み
 大嘗会には,その都度朝廷から阿波国に「官宣旨」を下し,同時に太政官からは「太政官符」を阿波国に申下し,麻殖忌部氏人に麁服の御衣を織らしめ,神祇官から下向する勅使「荒妙御衣使」(従五位クラス)に手渡して進上することになっており,御殿人は京師へ同行する。

 三木家資料1 後醍醐天皇大嘗会官宣旨案


 左弁官下す阿波国司
 應に早く荒妙御衣を織り進(まいら)しむべき事
 右,大納言藤原朝臣師信宣す,勅を奉ずるに
 大嘗会主基所料,宜(よろ)しく彼の国に仰せ
 先例に依って常(いつも)の氏人を以て織り備え令(し)め
 神祇官の使いに附して,早く以て進上すべし者(てへれば),国宜しく
 承知して宜(むべ)に依って之を行え,會日(えじつ)限り有り延怠することを得不(えざれ)。
 文保二年九月廿六日 右少史高橋朝臣 在判
 右少辨藤原朝臣  在御判

つづく

新潟県中越沖地震          天羽 達郎

 安酒で青春語りし君が家こたびの地震でいかになりしや

 君逝きて妻子残りし長岡の家に襲いし二度目の震災

裕紀と悦光の焼物展        森 悦光・裕紀

 暑中御見舞い申し上げます。
 暑い長い参議院議員選挙も終わりましたね。
 御無沙汰しておりますが,お元気に御活躍のことと思います。
 さて,私悦光と息子の裕紀の作品展をドクターエンドー徳島店で8月1日より8月11日まで開催いたします。 詳細はこちら
 私は,夏色を出しまして,風鈴・阿波踊りの箸置や,阿波踊りのかざり皿,かべかけ等も出品販売いたします。
 裕紀は端正に作った茶碗や菓子器,その他色々出品販売いたします。
 お暑い中恐縮ではございますが,時間がありましたら,ドクターエンドー徳島店まで足をおはこび下さいますよう,お願い申し上げます。

親孝行が子供を育てる      近藤 隆二

 生涯教育の先駆者,廣池千九郎博士のお母様(里ゑ)は博士の幼少の頃,「お前はどうぞ親孝行をして下され,親孝行者に悪い者はいない。他人に親切な者にはなまけものがいる。正直者にも悪人がいるが,孝行者に悪い者はいない。親孝行な者は必ず出世する」という言葉がお母様の口ぐせであったそうです。お母様のお里のお父様武信幾助という方は親孝行で殿様からほうびをもらっています。お兄様の武信郡平様も殿様から二度も表彰してもらっています。
 廣池千九郎博士が生涯のうちで一番貧しかった京都時代に歴史の調査でお寺へ行った時,三時にお茶とお菓子を頂いた時,めずらしい京菓子を郷里(大分県)のご両親に送ってあげたら喜ぶであろうと思って家へ帰ってすぐに飛脚便で送ったそうです。その時は長男の千英先生がお生まれになっていたが,一度も子供に与えずに全部九州の両親に送られた。あまり見かねた奥様の春子夫人が「私は親孝行は反対しませんが,子供には一度もお菓子を与えたことがない。三度に一度位はやってもバチはあたらないと思います」と博士に言われ,博士は「わしもやりたい。しかし親は先が短い。子供は先が長い。私達が出世したらどんなものでも与えてやれる。しかし親は明日亡くなるかも知れない」と言って心を鬼にして子供には一回もやらずに全部両親に送られました。その子供の千英先生も大人になり,博士が晩年温泉療養していた時,千英先生が奥様と子供(千太郎)にメロンを持たせて見舞いに行きました。奥様が「お父様,主人からメロンを持って参りました。召し上がって下さい」「ありがとう。早速よばれよう。あなたも食べなさい。孫にもやってくれ」と言われましたが,奥様も孫の千太郎様も食べませんでした。博士がどうして食べないのかと聞くと,「主人から,お父さんはお前たちも食べよと言うであろうが,遠慮しなさい。お父さんはお年だから先が短い。お前たちは先が長い。だからお父さんに全部食べてもらいなさい」と言われた。博士は瞬間に自分の京都時代のことを思い出して「神様はある」と大変お喜びになられ,「息子たちがやさしいことを言ってくれて思わず涙した」と言われました。親孝行したら親孝行され,親よりも実行した子供の方が幸せになる。