ニューモラルを読んで … No.463
育ち合う思い
      相原 詩恩

 私は,「お世話さまのひと言」で,アルバイトの人が,お茶を落としてしまって,取り変えようとしたけど順子さんは,気にしないでと言って,落ちたペットボトルを買った所で,私なら,少し文句を心で言ったり,変えなくていいですとも言わずに取り変えてもらったりする。順子さんは,アルバイトの人がペットボトルを落としたのに礼を言ったのがとても優しいと思った。私なら,言う勇気がない。順子さんは,学生時代の時,サラリーマンの人に,「お世話さま。どうもありがとう」と言われて嬉しかったので,この嬉しさをみんなにあげようと,その人のマネをするとは,すごいと思った。「育ち合う思いを大切」で,見知らぬ人でも近所の人でも,順子さんのように,みんなとあいさつを仕合ったら,とても心が楽しくなる。だから私もこれから,ただの「あいさつ」じゃなくて「優しい心」もつけて,あいさつをしていこう。

たかが一輪の花     川口 千恵

 されど一輪の花なんです。
 「お茶席のお花をお願い」と頼られ,「はいはい」と軽く受けたものの,もうふくらみ始めているだろうと思った椿の蕾は固かった。駄目だこれは,2日後のお茶席には間に合わない。木瓜の花ならいけるかも知れないと実家に走った。しかし,もう開いてしまっているのがあったが,これはだめ。下の枝にふくらみがある蕾,これなら2日間ストーブの側に置けばなんとか開いてくれるだろうか。その白の木瓜を持って帰ってずっと暖かい部屋に入れておいた。一日がすぎ,少し柔らかさを見せてくれた。「もう少し指で開けたい桃の花」という句を以前作ったが,そんな心境だ。
 お茶席にお伺いし,季節を先取りした,ちょうど見頃の珍しいお花が拝見出来る事は,ごく当たり前の様に思っていましたが,どれ程御亭主のお客様へのお心配りがあったのか,知る事が出来ました。2日目も頑張りましたが,花は見頃までは開きませんでした。たかが一輪のお花を用意させて頂くのに,悔いを残してしまいました。

マイクロ四国88カ所めぐり
               鎌田 尚之

 今日は,朝から天気も良く暖かい一日でした。
 毎年3月の第2日曜日に近くの徳蔵寺で四国88カ所のお参りが出来ます。徳島県下にはミニ四国88カ所は沢山ありますが,ここの場合ミニのミニだからマイクロ四国88カ所としました。これはあくまでも私が付けたものです。
 88の石の仏像が,それぞれ四国88カ所のご本尊さんで作られていて,わずか50m程度を歩くだけで四国88カ所のお参りが出来る。ブルーバケツのような物にお札を納めると,これをそれぞれのお寺に届けてくれます。
 10分程度四国88カ所を廻ってきました。沢山の老若男女(うまく発音できました。私は舌を噛みました)が参拝に訪れていました。
 そうそう このお寺藤棚もあり4月末から藤の花も楽しめます。

犬ふぐりの花      大西 時子

 美しい早春の季節が巡ってきました。北西方面に向かうときはザワザワと芽吹き始めた裏山を抜けて市街地へ出ます。白く大きな綿雲がちぎれたように大空に点在してふぁーッと溶け込みそうなえも言われぬ気分が広がります。休耕田に春の七草のひとつ「仏の座」が密生してそこかしこにカワイイ犬ふぐりの花が咲いていました。
 実家のすぐ北側に農業用水の水揚げ場があって小高くなったその敷地に春の雑草に混じってこの花が沢山咲いていたのを思い出します。
 初夏から水田への水の配水が始まり水利組合の管理のおじさんがこの水揚げ場に常駐して子供の頃よく遊びに行きました。
 地下へ降りると機械室があって鼻をつくマシン油の匂いがしました。子供の目には恐ろしく大きな黒光りする機械が据え付けられていました。
 おじさんが居る一階の土間には古い事務机があってその傍らに見回り用のスコップ・長靴が置かれ,炊事用の七輪や炭,やかんなどがありました。
 奥に広い座敷があって雨戸を開けると格子の桟から近くを流れる吉野川支流からの涼風が家屋を吹き抜けていきました。
 お盆が過ぎて夏休みも終わりが近ずくとこの川で精霊流しがおこなわれ,この座敷の格子戸から眺めたのを懐かしく思い出します。
 夏休みも大半が過ぎ子供心に季節の移ろいを感じてかなにかしら寂しかった思いも甦って来ます。
 春といってもまだ冷たいそよ風が水揚げ場の軒の影で咲くカワイイ水色の犬ふぐりの花弁を揺らして………,あれから幾星霜。
 今,この裏道の圃場,ぽっかり浮かぶ綿雲と大空の天蓋に覆われてひそやかに咲き継ぐ小さな花の命。自然の営みの確かさや,その大らかさに包み込まれるように心地よいノスタルジーに浸ったひとときでした。