青森リンゴ       松林 幸二郎

 クリスマスまで残すところ後1週間という日の早朝,速達を届けにきた郵便配達のけたたましいベルで起こされることになりました。ドアを開けると,雪の中に郵便配達夫が大きなEMS(国際速達便)を重そうに抱え私のサインを待っていました。差出人の名を見ると,5年前に脳腫瘍で亡くなった近くのウルネシュ村在住の日本人の故Kさんの,四国徳島に住む妹さんからであることが分かりました。というのも,一ヶ月も前から,遺産相続の件で,未亡人Sさんの署名が必要なので取り次いで欲しいと幾度も電話で依頼を受けていたからでした。
 日本に旅立つスイス人宣教師に依頼され,数年間,私は日本の食べ物やCDを携え,Kさんをお見舞いしてきました。病状も進んだKさんは既に言葉を発せられなくなっていましたが,その人懐っこい笑顔で喜びと感謝を表現し,当時,リストラで荒廃していた職場でのストレスで苦しんでいた私が逆に癒されたものでした。幾度か入院先を替えたKさんの病床には,不思議なことに四国をはじめ何人もいるらしいKさんの兄妹からの見舞いの痕跡すらありませんでした。Kさんの兄妹がやってきたのは,Kさんが亡くなった数ヶ月後のことで,私は最後の御奉仕と思い,未亡人Sさんと兄妹の間に立って通訳をいたしましたが,その後全く礼状も音信もなく,何とも釈然としない気持ちが残ったものでした。それから早5年の歳月が流れていました。
 2万円近い郵送料を払って何が送られてきたのだろうと,訝りながら箱を開けると直径10cm近いと思われる大きな青森リンゴが,14個箱の中に整然と並べられていました。リンゴ畑の真ん中で生活するような私たちの所に届けられた青森リンゴは,日本でも恐ろしく高価であろうと思われますが,郵送料もいれるとスイスで最も高価なリンゴであるに違いありません。僅かな甘みを残し,酸味を極限まで除き,ありったけの人力を投入し,生育された青森リンゴの皮を剥いて一口かじると,仄かな甘みが口の中に広がっていき,確かに日本の味がいたしました。このリンゴを,死を前にあれほど日本を恋しがっていたKさんに,食べさしてやりたかったと思ったとたん,妻と10歳になった娘をこの世に残し50歳半ばで異国スイスの地で逝ったKさんの無念さが胸に沁み,涙が流れて止まりませんでした。

ヤツデ           石渡 路子

 夏,あれだけいた昆虫たちは一体どこに行ってしまったのでしょう。冬眠しているのでしょうか。冬の陽だまりの中で飛んでいる小さな蜜蜂を見つけることがあります。蜜蜂には蜜が必要です。蜜は花が咲かなければなりません。冬に咲く花は限られています。そんな中,庭の隅にひっそりとヤツデが花を咲かせています。目一杯広げた葉は冬の陽をしっかりと受け止めようとしているかのようです。八つに割れて,一枚の葉になっているのが不思議です。一つ一つがそれぞれに神の恵みを受けていることを示しているのでしょうか。
 聖書に八福の教えというのがあります。山上の説教として,知られています。幸いな人とは,このような人たちのことですと,イエスさまが教えられました。それは,心の貧しい人々,悲しむ人々,柔和な人々,義に飢え渇く人々,憐れみ深い人々,心の清い人々,平和を実現する人々,義のために迫害される人々だというのです。それぞれが目立つような人たちではありません。ひっそりと存在しています。しかし,必ずいるのです。この世界が何とか,存在し続けているのは,このような冬のような世界で,神の恵みをしっかりと受け止め,精一杯生きている人がいるからだと信じています。
「心の貧しい人々は,幸いである,天の国はその人たちのものである」マタイ福音書5:3

世界1小さな美術館のヨタ話
               澤口 基子

 「こっこいつは,ワシに一目惚れしたのか?」
 日ぃ〜にも日にも,フラフラフラ〜っとヨタリ歩きもってやって来る。緑亀の様な衣服を身にまとったM氏の顔をツラツラながめもって,澤口は,「ううう〜〜〜む???」と首をかしげたのであった。まっ当然と言えば当然ではある。才色兼備,余人の追随を許さぬ美貌と知性,品格を兼ね備えた澤口基子(断っておくが沢口靖子ではない。)であるからにして―――えっ?
 掃き溜めに鶴(誰をハキダメって言よん?),腐っても鯛(えっ? くさんりょん?やっぱしかぁ〜……???)と曖昧に,まーまー笑って……そして……深く考えないのがワシのポリシーである(ちんまいことは捨ておこう)。
 んで〜? M氏とは誰ぞや?→そーそーその通り,ミムラタカノリ氏のことである。
「Mさんは,おいべっさんと大黒さんを足して2で割った様な人相やなぁ〜」と,テキをホメ殺し??
 この男は,我が「・・・・・・・・・世界1小さな美術館」にとって,福の神なのか,はたまた貧乏神なのか? 今んとこは,まだ,ようわからんのぉ〜?と,内心しくなむ澤口基子であった。
 まっとりあえず,連チャンで日参し続けるM氏に,ワシは仁王立ちになって叫んだね。
「社長の会社は,ほやって日ぃ〜にも日にも,くんだら言うとってもまわって行く優良企業。うちの世界1小さな美術館は,吹ぅ〜けぇ〜ばぁ飛ぶよぉぉぉなぁ〜♪昨日今日始めたばっかの小さな小さな店。連日あんたのシャベクリにワシを巻き込んで,この店を潰す気かいぃぃぃ〜っ?」って。
 と,ここまで冗談もぶれの駄文を書きなぐりましたが,M氏を紹介してくれた島川文代さん曰く,
「なんじゃかんじゃ言いもってでも,社長は,澤口さんや「世界1小さな美術館」をもりたててあげようとしての言動をされよると思います。安心して清らかな交際を御続け下さいませ。」
「ほう,ほう,ほう,ほう,ほのとおりぃぃぃ〜っ!!!」
 実は,文さんのおっしゃるとおりなのかもしれません。

ニューモラルを読んで・・・No.472
家庭の温度を上げましょう
               相原 詩恩

 「家庭の日」運動で,最近家族で食事や話し合いがへって,ゆっくりと休めない農家の人のためにできた「家庭の日」というのがあるのを読んだら,それはとてもいい事だなぁと思った。家族との会話は,とても大切な事だから,これから私も,もっと人や家族とふれあっていきたいと思った。
 「家庭の温度を上げる」では,親が仲がわるかったら,家庭での会話がへり,家族の温度が下がってしまう。けど,家族みんなが仲良く,会話がふえていたら,温度が上がってとても良い家庭が生まれるという事をこのお話しから学んだ。これからも,私の家庭が仲良くしていける事を願っています。
 私は,このニューモラルで気がついた事は,家族と仲良くすることが大事とよびかけているように感じた。とても小さな事でも,家族の絆が深まったりする。私はいつも家族にあいさつをしている。あいさつは,相手から返事がくるし,会話になるきっかけにもなるから私は好きだ。これからは,もっと家族と会話や絆が深まるようにしていきたいです。