F子の母親からの便り  松林 幸二郎

 金髪に髪を染めたF子が,両親に連れられて我家の戸口に立ったのは2001年8月の夏の日でした。
 F子は,岐阜県の山間地の僻地に生まれ,中学の国語教師である聡明な母親と,私の卒業高校同期生である優しい父親の愛に育まれ,中学時代では生徒会役員まで努め,純粋培養された花のように素直に育ってきました。異変が起きたのは,町の高校に入学して暫くしてからのことでした。田舎では無縁だった物質文明や,低いモラルに曝され,思春期のアイデンティティクライシスも加わり,生活は乱れ,ついに登校拒否に至りました。いくら説得をしても玩として聞き入れぬ娘を前に,成す術を知らないまま,彼女の両親は途方に暮れてしまいました。その絶望の中で娘を外国旅行に連れ出し,一途の希望を抱いて,我家の戸を叩いた訳です。と言っても,私たちにも彼女を“更生”させる妙案を持っていたわけではなく,荒れた“金髪娘”を前に期待に応えられる自信は正直言って全くありませんでした。
 多くの日本の若者のようにF子には,“人は何のために生きるのか”という人生の目的が掴めていないことも“荒れた”生活に堕ちた一つの大きな原因であったに違いありません。人には,人に尽くして生きる人生もあることを知るために,障害者施設に一時身柄を預け,その後,一年間英国の語学学校で学ばせ,親に替わってF子に付き添い,ロンドン郊外にある日本高校への編入手続きをしに行ったものでした。F子は,無事ロンドンの高校を卒業し,帰国後,日本の大学で学んでいることを知り,私たちも肩の荷を卸したかのようにホッとしたものでした。
 “自分達の育て方に自信をなくしていた私達に,ハイディさんが,「F子ちゃんがあなた達の下に生まれてきたことに感謝をする日が必ずやって来ます。大丈夫です。あなた達は決して間違っていません。」と言ってくださいました。本当にそんな日が来るのだろうかと思ったのがあの頃でした。最近,ハイディさんが言ってくださった言葉を口にするようになっていました。本当にそんな日が私達のために準備されていたのだと感謝しています・・・。”F子の母親から彼女の結婚を知らせる便りが届いたのは,未だ厳しい冬の2月下旬のことでした。
 米国海軍に勤務し,国を護る気概と独立心を持ち,信仰心豊かなJ君は,F子の心を射止めました。J君が黒人ゆえ,差別意識が深く残る地域社会に生活する両親はその結婚に頑として反対していたものの,“F子と長い時間をかけて話し合い,J君とも会ってみて,それまで私たちを縛っていた問題が非常に些細な事だと思われました。娘に変化をもたらしている彼の素晴らしさが分かりました。”と,二人の新たな人生の船出を祝福をもって送り出す決心がついたとのことでした。
 私は,母親からの便りを読んで,F子が欧州で信仰を持ち,信仰を礎に,J君と苦楽をともにする良き結婚生活を営んでくれるであろうことを信じ,本当に暗いニュースの蔓延する世の中に,一筋の暖かな光明を見る思いがしています。

小さいため息ひとつ  西山 欣子

 ここ2週間あまり,出かける用もできるだけ延ばして仕事場にこもって仕事(イラストレーターの)に集中の日々。
 かなり頑張って描き続けましたよ,私。。けど,それも今日でひとやすみ・・・ってな感じかなあ。
 今夜は,小さいため息をひとつ。。。
 人には「好きなことで食べていけていいね〜」ってなことを言われたりするけど・・・。
 好きな事を仕事にして,しかもそれで生活を支えていくっていうことは,結構キビシイことなのですよ。
 少しずつだけど仕事をいただけることに感謝しつつ,描き続けていくということについて,ちょっと考えてしまったことでした。

2009.03.09

空の鳥,野の花を見よ     石渡 修司

 鳥の姿を見て,自分がどんなにか幸福であるかを知ることができたと,吉野川市の粟飯原左十三さんは徳島新聞「読者の手紙」(3/10)に書いていました。何と幸せな境地かと思いました。
 アシジのフランシスコは,空を飛ぶヒバリのような生活をしたいと願い出て,当時の法皇イノセント3世から修道院設立を許可されました。生活の基盤である財産を一切持たない修道生活など考えられないという常識をくつがえすようにして,フランシスコ修道会は始まりました。
 フランシスコは,『空の鳥を見てご覧なさい。彼らは種も蒔かず,刈ることもせず,倉に納めることもしていない。神が彼らを養ってくださっている。野の花をご覧なさい。働きもせず,紡ぐこともしない。栄華を極めたソロモンでさえ,この花ほどにも着飾ってはいない。明日は火の中に投げ入れてしまう野の草でさえ,神はこのように装ってくださる。どうして,私達にそれ以上良くしてくださらない筈があるだろう』と言いました。
 空の鳥や野に咲く花を見る時,そこに希望のメッセージが込められていることを発見できる人は幸いです。希望は私達を支え,生きる力を与えてくれるからです。

ニューモラルを読んで・・・
他に喜びを与える
   相原 詩恩

 「がんばってね!」で,田中雄介さんの娘さんは,幼稚園の運動会に向けて,リレーの練習で,娘さんは,バトンタッチの時に,「がんばってね」と言っていたそうです。なぜ言うのか聞くと,「だって,みんなにがんばってほしかったもん」と言った。この娘さんは,次の人にもがんばってもらって楽しくやろうと思いをこめながら言ったのだと思う。私なら,たぶんそんな事言わないから,とてもすごいなぁと思った。
 「他に喜びを与える生き方」で,自分からお手伝いやボランティアを進んでやって行く人たちは,きれいな心を持っていると思う。それは,犠牲を払ってでも,人々のために,役にたちたい!という気持ちからできてるんだと思っている。
 私も,そんな人のように,きれくて,やさしい心でいる,心豊かな人になりたいです。