自己発見した少年のこと   天田 弘之

 日本工芸会正会員,高橋和三郎氏(63才)の個展が県近代美術館で開催され久しぶりに観せてもらった。―「陶芸を志して50年,その間,良き師,良き先輩に恵まれ,自然に恵まれた四国で,好きな“やきもの”作りができました。時に苦しみ,そして喜びに生れ変り繰り返しの中から数々の表情を見せてくれる「土と釉」の魅力は尽きることなく作陶の励みになりました。」と言っている。
 どっしりとした体,おおらかでにこにこして接する雰囲気は作品と共に見る人の心をつかむ。彼の作品は体に似せて,どっしりとして力強く,側に置く作品はやっつけられてしまう。一面繊細で美しく魅力がある。展覧作品はヴィビッドで品格が感じられた。
 彼にはエピソードがある。小学校で“やきもの”に魅せられた。5年生の夏休みに京都で一番えらい“やきもの”の先生を探したと言う。紫香楽窯四世上田直方(人間国宝)先生の門を叩き坐り込んだ。くる日もくる日も坐り込みついに先生に見留められ,指導を受ける。その間京都の中学校にかよう。3年後,「方山」の号を与えられる。その後,清水卯一先生(人間国宝)に入門,内弟子として8年間薫陶を受ける。……といった経歴の持ち主である。
 私はこの話を彼が23才で故郷鴨島町に帰り 方山窯 ( ・・・ ) を築き,製作を始めた時に本人から聞いて, 少年の志 ( ・・・・ ) の思いの強さと具体的に行動する一本筋金のはいった人柄に感服した。今彼は,アメリカの大学や,中国で陶芸の講師としても活躍している。


 師・清水卯一先生が,弟子・高橋和三郎氏に送った直筆

天香具山 ( あまのかぐやま ) の風物を称える文
      香具山地区十二社宮司 橘 豊咲

  遠方 ( おちかた ) の奈良の 群山 ( むらやま ) 青垣 ( あおがき ) 群青 ( ぐんじょう ) を,藤原京跡の側から眺めると,背後の連山の前方の低き処の ( こぶ ) の様な所在地は,吉野山系 山塊 ( さんかい ) の一つとして,古来からの伝承を引き継いで,神秘的な山容を間近に見せている。
 取り分け樹間の新緑を撫でる様に ( にわか ) に陣風が吹き荒れて,新緑の万葉の森の如く,初春の浅緑,盛春の濃緑,晩春,初夏と季節の移ろいが早く感じられて,視覚を疑う様な,なだらかな 面貌 ( めんぼう ) と急峻を兼ね備えた登山道である。
 南浦町の 東垣内 ( ひがしがいと ) 辺りから152米の山頂までの香具山のたたずまいは,準亜熱帯の樹林の様相を呈していると思う所以である。宮司として十五年間,山頂及峯続きのイザナギ・イザナミの両社も,登拝している。
 中高年の男女の団体小グループの 木霊 ( こだま ) が,間を置いて聴こえてくる,名勝地である。香具山へ,もっと多くのハイカーが,登拝するのが願望である。

思いこみの錯覚     近藤 隆二

 ある朝ラジオ放送で,目の錯覚について話していた。
 ある大学で,バスケットの選手がボールを何回パスしたか,数10人の学生にバスケットのパス廻しをビデオで見てもらって,後で学生に答えてもらったら,50%の学生が何回パス廻しをしたか正確に答えた。
 そしてその後でバスケットボールのパスの途中に「異様なものがテレビに映っていなかったか?」と尋ねると,50%の学生が「何も映っていなかった」と答えたそうである。
 実はバスケットのパス廻しの途中,ゴリラが両手を上げて,何回か映っていたのである。約半分の学生はその映像が見えなかったのです。
 以前,原子力潜水艦と宇和島水産高校の実習船との衝突・沈没事故も,潜水艦の潜望鏡で何回も見渡して確認したが60m先の実習船が見えなかったのです。
 こんな所にいるはずがないと思いこんで見ると見えないのです。

「ママありがとう」
文・絵  幼稚園 年長組 澤田 優志

 ママ,いつもピアノやてつぼう,なわとびやボールつきの練習を見てくれてありがとう。ボールつきは,181回もできるようになりました。
 平がなやカタカナも教えてくれたので,全部読んで,書けるようになりました。
 小学校に行ったら,今度は漢字をがんばりたいです。
 他にも,料理や洗い物,掃除,洗濯をしてくれてありがとう。
 ママ,これからおばあさんになっても元気に暮らしてください。
 パパとママが,おじいさん,おばあさんになってもけんかをしないでください。
 ママへ,優志より。

母の日のプレゼント  澤田 織世

 5月10日の母の日に,息子からプレゼントをもらいました。
 プレゼントしてくれたのは,カーネーションの花束と私の大好きなクルミパンでした。
 メッセージカードには,「まま ありがとう」と,息子からの心温まるメッセージが書かれていました。
 母となって5年。我が子からカーネーションをもらったのは,初めてでした。
 もらった瞬間,「お母さんになってよかった〜」「母の日にカーネーションをもらうと,こんな気持ちになるのだ・・・」と,これまでに味わった事のない喜びが込み上がってきました。
 母の日に,父親と車に乗って一生懸命にプレゼントを買いに行ってくれた息子の姿を見て,お兄さんらしくなったなと成長を感じました。
 「3人目が産まれたら,ママ,“お母さん”という仕事,もっともっとがんばるね。優志,本当にありがとう。そして,パパもありがとう。」