よう痩せた!      石渡 修司

 「よう痩せた。よう痩せた」と声をかけてくださった。私が走るようになって,一年半になる。朝と夕に末広大橋を目指し,新町川沿いの公園を走る。それぞれで会う人は変わるが,顔なじみになって,挨拶を交わすようになった。
 しかし,半年ほど前から,走るのを朝だけにした。そのために,夕方に会っていた人とは,会えなくなった。ところが,先日,いつものように朝走っていたところ,かつて夕方に会っていた人にぶつかった。
 その人が,私を見て,立ち止まって,わざわざ私に声をかけてくださった。その言葉が初めの言葉だ。その方も,私を見て,びっくりなさったのだろう,思わず,口から出た言葉だった。
 嬉しかった。ついに,人から見て,「痩せた」と言われるようになったのかと,我ながら感動した。体重は殆ど変っていない。それでも,痩せたと言ってもらえるということは,体が引き締まったのかもしれない。確かに,胴回りも細くなって,ズボンが緩くなってきていた。
 痩せるのが目標ではなかった。仕事をするうえで,体力のなさに気付き,体力を付け,仕事に集中できることが目標だった。しかし,今は,更に次の目標に向かっての準備と考えている。連れ合いには笑われているが,常に次のステップを考えながら,行動している。だから,毎日が楽しい。旅行も準備している時が一番楽しいと言う。準備そのものが楽しいのだ。目標に向かって,進んでいる,そのことが人を元気にし,喜びを与えるからだ。目標を持って,日々歩むことができる幸いを味わっている。
 「なすべきことはただ一つ,後ろのものを忘れ,前のものに全身を向けつつ,神がキリスト・イエスによって,お与えになる賞を得るために,目標を目指してひたすら走ることです」フィリピ3:13

カボチャは王さま   石渡 路子

 今年,牧師館の裏庭は畑になりましたと,ご紹介しました。確かに,そうでした。しかし,台風6号が過ぎ去ったあたりから,様子が変わりました。どなたも,畑の手入れをしなくなってしまったからです。肥料は十分に与えてありましたから,雑草が一緒に逞しく成長し始めました。
 気が付いた時には,畑の中に雑草ではなく,雑草の中にトマトときゅうりの蔓が頭を出して実を付けていました。それも,次の台風12号で蔓を支えていた支柱も倒れ,悲しいかな,見る影もないほどに荒れ果ててしまいました。畑の庭から,雑草の庭に,すっかり模様替えしてしまいました。
 ところが,その雑草が生い茂る中,カボチャの蔓がぐんぐん伸びていました。わずか三本の苗を植えただけでしたが,雑草をけ散らかす勢いで四方八方に成長していっています。他の野菜たちが雑草に覆われ,姿を消していった中で,カボチャだけは,我が道を行くという感じです。行きたいところに行く,その勢いは誰も止めることができません。そして,花もどんどん咲いています。
 連れ合いの父親が,「戦後,食糧のない時に、家の庭にカボチャを植えた。成長して,屋根まで伸びて,瓦を割るなどして,困ったものだが,随分と実を付けてくれて,助かったものだ。ただ美味しくはなかった,それでも腹の足しにはなった」と話してくれたことを想い出しました。
 カボチャの何も恐れず,前に前に進んでいく姿は,獣の王ライオンを彷彿させてくれます。私は雑草を抜くのが面倒だからしないのではありません。このままでいいのではないかと思って,そのままにしていますが,そんな私の思いを超えて,逞しく伸びていくカボチャに感動し,思わず,応援の声をかけてしまいます。「カボチャは野菜の王さま!逞しく育って,沢山実を付けて!」と。
 「堂々と歩くものが四つある。獣の中の雄,決して退かない獅子」箴言30:29

出会い            御堂 孝

 台風も過ぎ少し秋らしくなってきました。今まで60何年間多くの人との出会いが有りましたが,今年こそ人との出会いが心に残った事はありませんでした。それはあの暑い阿波踊りでした。私はその4日間,徳島駅前で総合案内所でボランティアの仕事をしました。阿波踊りに関する案内やら観光案内等が私たちの役目でした。県内外のお客様や外国の多くの人たちと接触する機会に恵まれました。英語,中国語,韓国語については通訳の人が別にいるので安心していましたが,居ない時,捌ききれない時は身振り手振りで対応しなんとか目的を達成出来た次第です。演舞場の場所,駐車場の場所,シャトルバスの運行状況,観光地の案内,宿泊施設の状況,飲食店の案内,電話応対では3分の1が阿波踊りの規制に関する苦情でした。高速バスに乗り遅れた人,乗ってきた観光バスの乗り場が分からなくなった人,待ち合わせ場所が分からなくなった人などテンテコ舞でした。それでも徳島に良い思い出を持って帰ってもらいたいと皆頑張りました。私はこの4日間で私なりに多くの人と接して色々と勉強をしました。良い思い出,悪い思い出それぞれ私を大きくしてくれたと思いました。今でも心に残る人との出会いこれからも大切にし,次に出会う人を楽しみにしています。

約 束          橋本 節子

 敬老の日,二男がお休みと言うので,前もって「一緒にじいちゃん,ばあちゃんのお墓参りに行けへんで?」と云っておいた。
 さて当日,天候も悪く,12時前になってもなかなかやって来ない。仕方なくメールで先に行くからという伝言を入れた。
 大麻町のお墓に行くまでの道中で,彼から「忘れとった,また今度」と返事が来た。
 やがて現地に着き,洗剤でゴシゴシ洗って,今度は水をかけて流そうとし,水道の所まで来ると,彼が車でやって来た。
 「圭司 来れたん!」と云うと,無言で頷き,さっとバケツに一杯水を入れ,水洗いしてくれた。二人して心静かにお線香を立てお参りすると,なんだかスーッと気持ち良かった。
「やっぱりお墓参りすると気持ちがええな〜」「スッとするな!」と,思わず……。
 即,彼も「ウン」と頷き,ホッとした満足げな目をしていた。たわいないお話ですが,私達が共働きしている間,祖父母が親の代わりをしていてくれたからこそ,こうやってお参りする気持ちになってやって来たのだと,両親に改めて感謝した。
 両親も孫が来てくれたので,何より嬉しかった事と思います。

               橋本 純平