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暫くして、男が僕のいる部屋にやってきた。 彼はひどく怖い顔つきで、僕の前に座った。 「お前さんは医者だと言ったな?」 僕は、彼の表情におどおどしながらも頷いた。 「医者は患者の秘密を守る物なのだろう?」 僕はまた頷いた。 「 看て欲しい者がおる。だか、見た事は他に言ってはならん」 僕は反射的に再び頷いてしまった。 しまったと思ったが、もう 遅かった。 「では、道具を持って付いてきて下され」 男はそう言って立ち上がり、部屋を出て行った。 僕はあたふたと バックを抱え後に続きながら、男から話を詳しく 聞こうと「あの」と声をかけた。男は振り返りもせず、僕の声を無視して 歩いて いく。 何かに巻き込まれそうだという事は、うすうす感じていた。玄関で靴を 履きながら、逃げるなら今のうちだとも思ったが このままどこに連れて 行かれるのか、興味も沸いた。 海外の童話で、王様の秘密を知る事となった床屋も、従者に連れて 行かれ る時はこんな気分だったのではないか? 男と僕は、村はずれの山道を歩いていた。 ふとさわさわと音が聞こえたので、 辺りを見回すと、滝があった。 「ここは・・・・・・」 「あんたが寝ていた所だ」 なるほど、彼は、我々がこれから向かう場所へ の途中で、僕を見つけ たのだろう。 僕らはその後もえっちらおっちら山道を登り、僕が目を回しかけた頃 やっと目的の 場所に着いた。 ・・・・・・それは、小さな土蔵だった。 男は大きな南京錠に鍵を差込み、がちゃがちゃと扉を開けた。 無言で中に入るように促され、僕はおっかなびっくり中を覗き込んだ。 中は薄暗く、入ってすぐの所に、木でできた格子が あった。 格子にはまた、大きな南京錠が掛かっており、何かを閉じ込めて いるようだった。 ・・・・・・その格子の奥の ものが、わさりと動いた。 僕は思わず後ずさりした。 何か大きな獣がいる。 一見しただけでは理解できなかった。 ただ大きな獣が、丸くなっているとしか見えなかった。 「鳥だ」 男のその言葉を聞いて、改めてまじまじと見ると、 確かに床には 羽が散らばっており、蠢いている物も鳥が寝ている姿に似ていた。 よく見ると、羽毛の下から鳥の鍵爪らしきものも 見えた。 「随分と大きな・・・・・・」 そう言いかけて、はっと思い当たった。 「もしかして、この鳥の治療をして欲しいとおっ しゃるのですか?」 男が頷いた。 それは困る。 「ぼ・僕は獣医ではありません。こんなに大きな鳥は見た事もあり ませんし 、種類も解らないのです。到底治療はできません。」 「大丈夫だ、怪我をしたのは鳥の部分じゃねえ」 男の言葉に僕は混乱した。 「ここには、見た所、この大きな鳥しかいませんが?」 「その鳥が、鳥の部分じゃねえ所を怪我したんだ」 男は益々不可解な事 を言った。 僕が再び口を開きかけたのと同時に、格子の・・・・・・檻の中の鳥が ばさりと大きく動いた。僕は反射的にそちらを見てしまった。 ・・・・・・そして、言葉を失った。 羽毛の間からあどけない少女が顔を見せたのだ。 羽根を広げたその『鳥』の上半身は 人間の女の子だった。 |