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僕は今まで、こんな奇妙な生き物を見た事が無かった。 それは上半身から大腿までは、14.5の少女の姿をしていた。顔立ちの 整った 可愛らしい顔をしている。 しかし、彼女の肩口からは大きな翼が生えている・・・・・・いや、生えて いると言うより、彼女の両腕が翼の形を しているのだ。 そして、彼女の足はひざから下が鳥の足そのものだった。しっかりと 鋭い鍵爪もある。 確かに男の言っていた 通り、傷は彼女の太腿・・・・・・人の形をして いる部分にあった。早く治療しないと膿んでしまうかもしれない。 しかし、僕は困惑した。 人の形を しているとはいえ、彼女に人間の治療をしていいものなの だろうか? 僕の頭が迦陵頻伽という神鳥と、セイレンという妖鳥を思い出して いた。 神鳥ならば、下手に触れば崇りが起こるだろう。だが、また妖鳥で あるならば、中に入った瞬間、食われてしまうに違いない。 鳥少女は、初めて見る僕を威嚇するように、こちらをきっと睨んでいた。 「・・・・・・随分警戒されているようですが・・・・・・、中に入っても大丈夫 なのでしょうか?」 僕が恐る恐る聞くと、男は力強く頷いた。 そして、少女に向かって話し掛けた。 「この方は、町のお医者先生だ。悪い事は何もしねえ。お前の 傷を治してくれるんだ」 男の言葉が 通じているのかは不確かだが、少女は男と僕の顔を 交互に眺めた。 その少女の反応で、男は納得したらしく「よしよし」と頷いた後、格子の 扉の鍵を開け、 「先生、さあ、入ってくれ」 と言って、僕を促した。 「ちょっ・・・・・・ちょっと待ってください。彼女はまだ僕の事を 睨んでいる じゃないですか?」 「大丈夫だ、いいから早くあの鳥を診てやってくれ」 「鳥って・・・・・・鳥じゃないじゃないですかっ」 「いいから早くしろっ」 僕はいらだった男に、無理やり中に押し込まれた。 驚いたのか、少女がわさっと羽根を広げた。 「じゃあ、俺は 人が来ないか、外で見張っているからな」 「えええっ、ちょっと待って・・・・・・」 男は僕の言葉も聞かず、さっさと外に出て行ってしまった。 僕は鳥少女と二人きり、閉じ込められてしまったのだ。 彼女の視線は先程よりきつくないが、それでも僕の事を警戒する ように、 距離をおいてこちらをじっと見ている。 治療をする以上、この警戒心の強い少女に触れなければならない。 僕はひとつ深呼吸をすると、 無理やり笑顔を作った。 「彼が言っていた通り、僕は医者です」 少女の表情は変わらない。言葉が理解できているのかも分からない。 「君の怪我を治す為に来ました。傷を診せてもらえますか?」 よくよく考えれば滑稽である。自分よりだいぶ年下の少女に、丁寧に 話し掛け、びくびくしているのだから。 しかし、いくら頭と胴が少女でも、残りは鳥なのだ。怒らせれば、 どんな事をされるか分からない。 何かこの場をなごませられるものはないかと、鞄をさぐると チョコレ−トが出てきた。 これで空気が緩むだろうか? そう思いながら、 僕は恐る恐るそれを 彼女に差し出した。 |