ニ、再生
 弁当を食べ終わった二人は、冷たい飲み物で喉を潤し、体を休めていた。
 「嵐慈ー、そろそろ見せてくれよー。」
 さっきからもったいぶっている嵐慈に智津雄は少しイライラしていた。
 「…わかったよ、見せてやるよ。俺が苦労の末に手に入れたビデオ…香梨須マキ(かりす まき)のビデオをなっ!」
 そう言って嵐慈は鞄から一本のビデオテープを取りだした。そのテープにはラベルが貼ってなく、いかにも裏物っぽい雰囲気を漂わせていた。
 「おおおっ!これが伝説のAV女優、香梨須マキの裏ビデオか…!」
 香梨須マキは、容姿、テクニックとも最高ランクに位置づけられているAV女優なのだが、出演作品がなぜか一本しかなく、しかも限定100本というAV業界始まって以来の限定物というわけで、人物、ビデオにしてもレア物だった。しかも100本のうち、無修正はわずか数本と言われており、伝説の無修正と言われるほどレア中のレアなのである。そんなビデオを手に入れたとあらば、用事があろうとなかろうと、嵐慈を泊めるのに断る理由は見つからない。
 「すげー!すげー!嵐慈、お前って奴はすげーよ!どういうルートで手に入れたか知らんけど、あの伝説とまでうたわれたAVを手に入れるなんてさ!」
 興奮した智津雄は唾をまき散らしながら、でかい声をあげてしゃべる。しかしその興奮は男なら誰しも理解できるものだった。
 「んじゃあ、さっそく鑑賞会といきますか。」
 嵐慈は智津雄にビデオを渡すと、壁によりかかって楽な姿勢をとった。
 智津雄は嵐慈から受け取ったビデオをすかさずビデオデッキに入れた。そして智津雄も楽な姿勢で座ると、強く再生ボタンを押した。ウィーン…という音がしてビデオが再生された。最初は黒い画面しか表示されなかったが、しばらくすると画面がピンク色になり、白く輝き始めた。その白のまぶしさに思わず目を細めてしまったが、すぐに画面が変わった。
 「これ、いつ始まるの?」
 智津雄は少し興奮が冷めたような口調で嵐慈に聞いた。
 「ああ、これもう始まってるんだよ。プロローグみたいなもん。もうすぐ本番になるぜ。」
 にやにやしながら嵐慈は答えた。
 テレビに目を移すと、嵐慈が言ったとおり、少しずつ何かが見えてきた。
 「あああっ!ああん…!うぅん!はぁっはあっ!あん!あんっ!」
 激しく淫らなあえぎ声が部屋中に響いた。画面が変わったと思ったら、突然裸の女性が男優に巨根を挿入されている場面になった。
 「おおお!こいつが香梨須マキかよ!?すげー可愛いじゃん。しかもいい躰してるなー。すげえー!」
 智津雄はテレビにへばりつくように、興奮しながら一生懸命大声をたてている。早くも前かがみの姿勢になっていた。そんな智津雄の情けないというか、勇ましい姿を見て、嵐慈は何故か先程からずっとニヤニヤしていた。
 しばらく香梨須マキのHシーンが続いた後、急に画面が乱れ始めた。ザーという不快な音。そして画面がまたピンク色に染まり、白く輝くような光がでた。
 「おいおい、どうなってんだよ嵐慈。また画面が変になっちまったぞ。壊れてんじゃねーか?」
 「違うって、別に壊れてねーよ。次の話にいくんだよ。あ、ちなみに次が最後のHだから。」
 「は?まじで?」
 「ああ、マジだよ。だからちゃんと最後まで見てろよ。」
 そういうと嵐慈は手元にあるジュースを一口だけ口に含み、またニヤついた笑みを浮かべた。嵐慈の言ったとおり、しばらくするとまた画面が元に戻った。今度は香梨須マキが裸で、男優の巨根をくわえているシーンから始まった。そのテクニックのすごさに智津雄は目が離せなかった。
 「あんなフェラされてみてぇ…。」
 香梨須マキのフェラシーンを見て、智津雄はついついそんなことを無意識にボソッと漏らしてしまった。フェラシーンが終わると、挿入シーンに突入した。様々に体位を変えながらリズミカルに腰を動かす男優と、香梨須マキのあえぎ声が妙にグルーヴしていて、なんだかとてもイヤラシイ感じがした。

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