一人で登校するのはどうも慣れません。

思い起こせば、小学生の時からずっと蘭と一緒に登校してきました(新一君も一緒ということが多かったけど)。
もちろん、ずっと同じクラスだった訳ではありません。でも、クラスが違っても、いつだって教室の手前までは一緒だったんです。

今日からその蘭は部活の朝練です。それも、全国大会に向けての朝練だからいつもより早くの登校です。
だから、私は退屈な朝を迎えてるんです。

lovey - dovey

そうそう、朝の教室に一人で入る瞬間もちょっと苦手だったりします。

「おはよう!」

気持ちを入れ替えて、いつものように挨拶したのに、こういう時に限って、男子はともかく、女子からの反応がなぜか薄かったりします。

「あ、おはよう、園子……」

朝からみんなで一箇所に集まって、何かに夢中になっているようです。
とりあえず、輪の一番外側にいた子に聞いてみると、
「心理テストだって」
道理で女の子たちが夢中になるはずです。

「園子もやってみなよ? 結構、当たるみたいだよ」
私もこういうのは嫌いではないので、気が付けば参加しているのです。

「で、どうすればいいの?」
「雪乃が色の名前は言うから、そのイメージに合う異性の名前を挙げていくだけ。とりあえず、今回は学校内の男子限定ね」
「なるほどね」

確かに、周りでは聞き覚えのある名前が飛び交っています。
次は青色のイメージのようです。

「やっぱり、青といったら工藤君じゃない?」
「私も工藤君のイメージ」
「うんうん、工藤君だよね、青は」
私も良く知る人物の名前だけが挙がっています。

「ねえ、園子は?」
「そうねえ、確かに新一君のイメージカラーって青よね。それも、深い青って感じがするのよね」
結局、私も同一人物の名前を挙げています。

「それじゃあ、満場一致で工藤君ってことで。それにしても、ここまでみんなが同じ名前を挙げるとは……」
心理テストの答えを知っている雪乃のこの言葉は意味深です。
「それで、雪乃、青がイメージする人って?」
その場にいる誰もが雪乃に視線を集中させています。

「ではでは。青色をイメージする人というのは……
あなたが『尊敬する人』です」

「 尊 敬 !? 」

私も含め、みんな意外な答えだったようで、驚きの表情を見せます。
でも、すぐに納得したみたいです。

「確かに、全国的にも有名な探偵だし……」
「普段からどこか高校生離れしてるところがあるし……」
「時々、同じ年とは思えないオーラを発することもあるし……」
「単なる推理オタクっていう訳でもないし……」
「人一倍モテるのに、蘭一筋だし……」

みんな、一様に頷いています。
ここまで同じようなイメージをみんなに持たれているとは……
工藤新一、恐るべし!

と、ここに、
「おはよう」
実にタイミングが良いというか……
おそらく、今、みんなが一番同じ質問をしてみたい人物の登場です。

「蘭、こっち、こっち!」
クラスのほとんどの女子が手招きをする光景に、さすがに蘭も困惑気味です。

「何なの、朝からみんな集まっちゃって?」
「ちょっとね。それより蘭、工藤君のイメージカラーって何色?」
「新一のイメージカラー? どうして?」

「 いいから、いいから! 」

みんなからの見えない気迫に、蘭も少し怯えているみたいです。
「う、うん…。そうだなあ…、 赤 かな?」

「 赤 な の !? 」

その場にいた誰もが驚く答えでした。
そして、そんなみんな以上に、蘭も驚いています。

「赤じゃ、変なの?」
「ううん……。ただね、ここにいるみんなは、工藤君は青のイメージって答えていたから……」
「青ねえ!? 私には何かしっくりこないけどなあ……」

「ねえ、雪乃、赤のイメージって?」

ここで、再び雪乃に視線が集中します。
どうやら、赤のイメージはまだだったようです。

「赤とは、蘭ならではの答えね」
「ということは?」
「そう、赤色をイメージする人とは…… ズバリ、『大本命の人』です」

「 大 本 命!! 」

みんなの反応に蘭が驚くのも無理はありません。

「ちょ、ちょっと、どういうこと?」
「心理テストよ」
ここでようやく事の次第を把握したらしく、蘭の顔色が文字通り"赤色"に染まっていきます。
この後、みんなから蘭は"遊ばれる"こととなったんですが、これが思いの外、短い時間で終わります。というのも、次なるターゲットが表れたからです。

「おはよう! 工藤君」
みんな、思わずほくそ笑んでしまいます。そして、先ほどの蘭と同様の手招きです。

「何だよ、朝から?」
「まあまあ。一つだけ、工藤君に答えてもらいたい質問があるだけだから!」
ここで、蘭のすぐ隣りにいた私に、みんなからの目配せが。

「質問って?」
「うん。工藤君が思う蘭のイメージカラーって何色かなっていうこと。今年の学園祭の衣装の参考にしたいから」
「学園祭って、だいぶ先の話だろうが?」
「 いいから、いいから!! 」

私の手で口を塞がれた蘭が必死に新一君に視線で訴えようとしているのですが、周りの圧倒的な気迫にもみ消されています。そんな女子に一斉に囲まれているのですから、これは一種に脅迫なのかもしれません。
これには、さすがの名探偵もタジタジです。

「ら、蘭のイメージカラーねえ……。それなら、やっぱり赤だろうな。赤は蘭が子供の頃から好きな色だし」

「 おおおッ!! 」

こうなると、一種のお祭り状態です。
ただ、この時には既にチャイムが鳴っていたらしく、いつの間にやら、教壇には先生の姿が。

「朝から、一体、何の騒ぎだ? まったく……、お前たちはもっと受験生としての自覚を持ったらどうなんだ?」
お祭りも万事休すです。

蘭はその後も赤面しっぱなしです。
一方の新一君はというと、未だに事態が掴めず、かなりイライラした様子。
ちょっと可哀相なので、新一君にはそっと私から一枚のメモを渡しておきました。
ちなみに、メモの内容は次の通りです。

さっきの質問だけど、実は心理テストだったの。
イメージした色によって、その人のことをどう思っているのかがわかるっていうの。
新一君が答えた赤のイメージなんだけど、ズバリ、大本命!ですって。
ちなみに、同じ質問に蘭も新一君のことを"赤"って答えたことを報告しておきます。
ホント、いつもラブラブですこと!

このメモを見た時の新一君の反応ですが……、予想通りのものでした。

彼は巷で有名な高校生探偵です。
そんな彼もごく普通の高校生だったりするのです(いや、やっぱりちょっと違うかな?)。

私は今日から暫くの間は、退屈な一人での登校です。
でもその分を、私の大切な親友とその彼氏とをからかうことで紛らわそうと思います。

作中の心理テストは大分前に留意が雑誌かネット上で見たものをメモしておいたなので、合っているかどうかは微妙。この心理テストは、本当は全部で6色あるんですが、6色全部書くとまとまりが悪いので今回は2色のみです。
ガンダムカラーのイメージのせいか新一(コナン)って青のイメージなんですが、蘭ちゃんなら赤って答えるかなと思って書いてみました。

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