河南町から

記録:平成15年8月 2日
掲載:平成15年8月12日
志波姫町の農家 菅原 

 7月26日 0時13分、震度6弱
   同日  7時13分、震度6強
   同日 16時56分、震度6弱

 史上稀な連続大地震が休日の宮城県を襲った。今回の連続地震は宮城県の遠田郡、桃生郡を中心に甚大な被害をもたらしたが、「本震を上回る余震なし」との私達人間の一般常識をぶち壊した意味でも改めて自然の恐ろしさを感じさせる出来事であった。
 今回の震災で被害に遭われた方々に対し、一日も早く生活の場が復旧し、平穏な毎日が訪れること、この場を借りしてお祈り申し上げます。
 さて、今回の地震は宮城県でも石巻市にほど近い河南町
河南町、遠藤氏の冬期湛水水田、
遠藤氏の冬期湛水水田も緑が濃い
と南郷町の境界に位置する旭山を震源とした直下型の地震であったが、河南町には冬期湛水水田を実施中の遠藤氏が在住している。
 8月2日、俺と「冬期湛水水田に集まる人間」の高奥君とで遠藤氏を訪れた。遠藤氏は今回の地震の震源地である旭山背後に在住しているため、自宅にも少なからず被害があったようである。しかし遠藤氏は何事もなかったように笑顔で俺達を迎えてくれ
遠藤氏の冬期湛水水田を見つめ、しばし
の稲作談義にふける菅原と遠藤氏
た。さすがデコボコチームの監督らしく物事に動じない性格なのだろう。俺も冬期湛水水田のデコボコチームの監督として、この遠藤氏の性格を見習っていきたいものだ。高奥君などは、冬期湛水水田で勢いを逞しくする「草」諸君を見る度に、「しっかしホタルイ君も元気ですね〜」とか「気が付かないうちにイボクサ君が勢力を拡大しております。」などと一々動揺しているのでまだまだ修行が足りない。もっと暖かい目で「草」諸君達を見守ってほしいものである。
 それで、遠藤氏の冬期湛水水田である。もともと水田の耕作は
作業委託していた遠藤氏であったが、本年より一部水田を自分で耕作することとした。
遠藤水田水稲生育状況

 遠藤氏の自作一年目は冬期湛水不耕起により始まったが、不耕起水田での田植えについては専用の田植え機が必要である。そこで俺は志波姫から田植機を運び、遠藤氏の田植えを手伝った。田植えは5月25日であったから、通常より2〜3週間程遅い。
 8月2日、遠藤氏冬期湛水水田の状況である。まず稲の生育状況
であるが、田植えが2〜3週間遅かったため、背丈、分けつとも慣行栽培よりも遅れいる。が、既に皆さんもご存じのとおり、今年は冷害の気配濃厚であるゆえ、生育は少々遅れていた方が都合がよい。なぜなら稲の出
金色に輝く冬期湛水水田
穂の時期が遅れることで、8月初旬まで続くであろう天候不良時期の出穂を避けることができるためだ。
 生育状況の遅れている遠藤氏の稲であるが、注目すべきは稲の開張状況である。上に広がらず、横方向に扇形に広がる姿、稲の理想形を実現しつつある。
 
つい2週間ほど前までは菅原水田に見劣りのした遠藤水田の稲であるが、着実に菅原水田に追いついている。いや、追いついているというより既に追い越されたと言うほうが現状を正確に表しているだろうか?
カエルもゴールド

 
遠藤氏の冬期湛水水田で、もう一つ注目されるのが水の色である。写真のように黄金色に濁った色をしているが、これは光合成細菌が活溌に活動しているためと思われる。この光合成細菌は土壌に豊かに栄養分を与えてくれる。これが遠藤氏の稲を良好にしている原因なのかもしれない。
 
水底に広がるサヤミドロ
またサヤミドロも盛大に繁殖しているが、このサヤミドロは抑草効果があると言われ、またミジンコ等微生物の絶好の住みかにもなる。これを裏付けるように、遠藤氏の水田に雑草はほとんど見られず、ミジンコが大量発生している部分もあるとのことだ。ついでに言うとイトミミズも多い。
 
 それにしても遠藤氏の水田には草が生えていない。俺の持論として「水田は人を表す」というのがある。小粒ながらも逞しく育っている稲、律儀なまでに草のない水田、好人物遠藤氏らしい水田である。
 ちなみに俺の菅原水田、ホタルイが繁栄し、イボクサが闊歩する。少しばかり脇役の草達が活躍しすぎる感あるが、これは俺の
徳(人徳、草徳?)をあらわしていると考えたい。


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