稲刈り前

記録:平成15年9月28日
掲載:平成15年9月28
志波姫町の農家 菅原 
 
 田植えが5月16日であったから、田植えをしてから既に4ヶ月以上が経過した。場合によってはいつでも除草剤をぶっかけてやる、そう思って始めた冬期湛水水田たったが、気が付けば一度も除草剤を撒かずに稲刈りができそうである。
 イモチ防除剤の散布も行わなかった。不耕起に育つ稲は冷害に強いのは経験で知っていたので、今年の冷夏にあっても、イモチに関してはさほど心配していなかった。虫達はクモとツバメが防除してくれた
冬期湛水水田に舞うツバメ
[9月14日撮影]
、だから殺虫剤は散布していない。ついでに言うと苗は温湯消毒であり、これも薬剤処理はしていない。
 つまり、今年の水稲栽培は完全な無農薬を達成できそうである。
 一時心配された稲の倒伏についても、落水し、田が乾くにつれ倒伏しなくなってきた。稲刈りはもう目前に迫っている。
 ここで稲刈り前の稲の状況、雑草の状況を一度検証しておこうと思う。
 まず、稲の状況である。実入りに関しては稲刈りしてみないと分からないのが正直なところだ。ただし、稲穂の垂れ具合を見る限りでは、決して悪い状態ではないことが判断できる。これは、有機肥料(クズダイズ、コメヌカ)を撒いた田んぼ、完全無肥料の田んぼ、いずれも同じである。
イナコウジ菌に罹った稲穂
[9月28日撮影]
 病気に関しては、イモチに罹った稲が点々とあるのと、イナコウジに罹った稲がほんのわずかだけあるだけで、収量にはあまり影響してこないであろう。
 次に草の状況である。まずホタルイであるが、これはそのほとんどが枯れてしまった。一時は冬期湛水水田最強の問題児とされたホタルイであったが、今年に関しては、決して稲作りに問題になる草ではなかったわけである。
枯れたホタルイ[9月6日撮影]

 次はクログワイ、これは現在でも青々としている。クログワイは頑強な根茎を持っており、冬を越して根茎から増殖していくので今後の動向が注目される。ただし俺の冬期湛水水田に関しては、コメヌカ肥料を撒いた水田以外、あまりクログワイは目立っていない。
 今度はイボクサであるが、田んぼでも水深の浅い畦畔側で勢いを増していた。イボクサは上に伸びず、横に広がる草であるため、ホタルイやクログワイ、ヒエに比較してそれほど目立つ存在の草ではない。
青いクログワイ[9月28日撮影]
しかし、ここにきて、最もその勢いを逞しくしていたのがイボクサである。実を言うと畦畔の草刈りは9月末まで行わず、そのため畦畔側に広がっていたイボクサも良く観察できない状態にあった。しかし、草刈りをし、改めて畦畔際を見てみると、イボクサの勢いのすごさが実感できた。一部稲はイボクサに負けている状況にもある。イボクサは陸生の草であるため、落水後にその勢いを増したものと考えられる。また田んぼの周囲を歩いてみると、四角い田んぼの四辺のうち、縦横の二辺側に
赤いイボクサ[9月28日撮影]
イボクサが集中し、その他の二辺にはほとんどイボクサが見られないことがわかった。これは田んぼの畦畔でも水深の浅い部分に集中してイボクサが繁殖していることを示している。このイボクサは稲刈り時に稲にからみつくので、少々やっかいな存在ではある。
 最後にヒエである。これは水田の草のうちでは最もポピュラーな草である。そして俺の田んぼにも盛大に繁殖している部分がある。この
ヒエの繁殖帯[9月28日撮影]
ヒエは稲より一足先に登熟したようで、既に種子が抜け落ちた状態となったものも多い。ということは、それら大量のヒエの種子が俺の冬期湛水水田に撒かれたわけである。来年、どの程度ヒエが繁殖してくるか興味のあるところであるが、ただし、ヒエは田んぼが湛水状態にある限り発芽しない。そのため冬期湛水水田を継続する限り、ヒエに関してはさほど心配しなくてもいいということになる。
 あと2ヶ月もすれば、俺の田んぼにも渡り鳥が飛んで来るだろう。
特に意識して用意したわけではないが、俺の田んぼには、ヒエの種、ホタルイの種、クログワイの根茎、イボクサの根茎、いろいろ渡り鳥をもてなす食材が揃っている。渡り鳥達は俺の用意したプレゼントを気に入ってくれるだろうか?


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