冬期湛水から神無月湛水へ

記録:平成15年10月 7日
掲載:平成16年 1月 5
 志波姫町の農家 菅原 
  
 今期は1月から冬期湛水水田を始めた。始める時は、それはそれなりに苦渋の選択ではあった。なんだんかんだ考えているうちに1月に冬期湛水水田を始めようと決断したのだが、本当はもっと早く水をかけたほうが冬期湛水水田の効果がより発揮されるようだ。今年
秋晴れの下、水に沈みゆく稲刈後の田んぼ
の冬期湛水水田を考察してみると、河南町の遠藤さん、色麻町の浦山さん。いずれも俺より早い時期に田んぼに水をかけているが、俺より良い結果が得られているようだ。
 そこで、俺は考えた。この刻々と米価が推移している時代にあっては、何事も先取りして稲作に取り組む必要がある。冬期湛水水田は、無農薬稲作にとって画期的な方法であるが、もう古い。これからは10〜11月に水をかける「神無月湛水水田」だと。
 神無月湛水水田で羽根を休めるトンボ
    もう少しで冬が来る。
 今年一年、冬期湛水水田を観察してみてわかったことは、冬期湛水水田の効果が、単に渡り鳥の糞から得られるだけではなく、カエルやミミズや雑草や昆虫や、目に見えない細菌なんかの働きが複雑に絡み合い得られる効果だということだ。これらの複雑な関係をひもとき、その結果として「神無月湛水水田」という結果にたどり着いたというのであれば、俺もたいしたものだと思うが、さすがに俺はそこまでかしこくない。だいたい、そんな複雑なもの、人間がいくら考えたってわかるわけがない。だから、通常12月から始める冬期湛水水田を1月以上早め、10〜11月から始める「神無月湛水水田」に換えただけでいい結果が得られるかどうかは保証の限りではないが、それでも「神無月」でいくのは、俺の脳味噌の中でモヤモヤとした考えがあるからだ。
 一つ言えるのは、できるだけ長期間湛水したほうが、水田残留物の
湛水したばかりの藁、これがトロトロ層
になる。
藁が熟成し、肥料効果が高まるであろうこと。今年の収量は反当5.5俵と稲がほとんど病気にならなかった割に少なかった。これは、無肥料、あるいは追肥を行わなかった俺の冬期湛水水田の稲が、途中から肥料切れを起こしたためと俺は睨んでいる。これを裏付けるように7月以降は田んぼの水が濁ることもなく、光合成細菌が活発化していなかったようだ。これに比べて遠藤氏の田んぼは8月でも黄金色に輝いていた((参)河南町から)。
 もう一つは田んぼができるだけ均平になるようにすることだ。天候にもよるが、コンバインで稲刈りを行うと、コンバインのキャタピラが田んぼに盛大に凸凹を作ってしまうことがある。不耕起を継続している俺の田んぼにあっては、この凸凹は水が田んぼ全面に均等に行き渡る障壁となる。この凸凹も長期湛水で自然と水平になって
      神無月湛水水田
くれないかと俺は期待している。
というわけで、俺は10〜11月から始める「神無月湛水水田」を始める。ちなみに俺は「神無月湛水水田」を特許申請するつもりはないので、もしこの方法を試みようと考えている方がいらっしゃいましたら、マージンを要求しませんゆえ、安心して取り組んでいただきたい。

 

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