籾が苗になるまで |
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記録:平成16年4月 4日 | ||||||
掲載:平成16年4月17日 | ||||||
志波姫町の農家 菅原 | ||||||
昨年は無頼な田んぼで米作りを行った。無頼というくらいだから「明日は明日の風が吹く。」と自分を誤魔化しながらのやせ我慢農法であったが、幸いしてイトミミズ君達の活躍があり、冬期湛水水田の効果が発揮され、それなりの結果を得ることができた。 昨年の稲作を振り返ると、ホタイル、ヒエ、イボクサなど雑草軍団の活躍に圧倒されそうになったことを思い出す。雑草対策は水田の水管理とトロトロ層の土作りがポイントである。 次に思い出されるのが、出穂前後に稲の葉色が薄くなってきたこと。これは肥料切れが原因であると考えられる。これの対策として水田残留物の藁をできるだけ熟成させ、肥料効果を期待できるよう10月から湛水を始める「神無月湛水水田」を試してみることにした。そういえば、登熟期に稲が倒伏寸前の状態になったこともある。これは深刻な問題で、もし台風が勢いを逞しくしていれば、ある程度の稲は打撃を受けていただろう。倒伏の原因は苗が浅植になったためと考えられ、田植え方法も検討していく必要があるかもしれない。 このように俺の無頼な田んぼにはいろいろ検討していくべき課題もあるが、最大の課題は苗づくりにある。できるだけ丈夫な苗を作る。
ということで、前置きが長くなったが、今回は今年の苗作りについて解説する。 まずは種籾であるが、これは無肥料水田で収穫したヒトメボレを用いた。無肥料水田の籾を選んだのは、無肥料という自然に近い状態で育った籾であるので、それだけ丈夫な遺伝子が受け継がれると期待したためである。 用意した籾はトウミにかけ、ゴミを吹き飛ばす。トウミにかけた後は、今度は脱亡機にかけ、籾についている枝を取り払う。このようにして、純粋に籾だけを選別する。
次に、籾の消毒である。以前は薬により消毒するのが一般的であった。最近では低農薬・無農薬ということで、お湯により消毒する場合も多い。この場合、籾を60℃のお湯に5分間浸し、消毒する。いわば籾に我慢大会みたいなのを強いるわけである。昔、水着のオネーチャンが熱い風呂に何分間入ってられるか、みたいなテレビ番組をやっていたが、この消毒もそれと同じ感じで、見ていて少々痛々しい。 このようにして厳選された籾を今度は水に漬け、種蒔きまでそのままの状態にしておく。水に漬けたままにする理由は2つある。一つは種蒔き後の発芽促進である。籾は乾いたままだと発芽を抑制する性質がある。そのため、できるだけ水に漬けておき、いざ種蒔きとなったら、落ちこぼれなく、発芽できるようにする。
もう一つは寒水にさらすことで、寒さに強い苗を作ることにある。寒中水泳するとその年は風邪をひかなくなると言われるが、籾も寒中水泳すると苗が病気に罹りにくくなるようだ。 というこで、塩水に入ったり、熱湯で入ったり、あげくの果てには寒中水泳をさせられたりと、籾が苗に成るまでの道筋は厳しく、多くの試練が待ちかまえている。 試練を受けるのは俺でなくて、籾諸君のほうだが、これも全ては農薬未使用の無肥料水田という過酷な条件で稲が育ってくれるために、私が涙しながら籾達にささげる「愛のムチ」である。 俺の田んぼにはホタルイやイボクサ等の雑草が徘徊し、肥料も限られるので、ヤサ男ならぬヤサ苗では、生きていけない。時には冷夏にも襲われるし、台風も容赦なくパンチを打ち付けてくる。そういった修羅場を生き抜くために、籾達は過酷な試練を乗り越えなければならないのである。 | ||||||
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