新しき米食文化の造(後編) |
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記録:平成17年7月 8日 | ||||||
掲載:平成18年5月30日 | ||||||
栗原市志波姫の農家 菅原 |
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米粉クッキング講習会が開始されたのは、13時を半ば過ぎた時刻である。田守村で見知った親子連れが何組か訪れ、それ以外の一般の方々も加えて20数名の参加者が集まった。 講習会が始まると、俄然、クッキング講師の菅原啓
この啓子さんや高奥君とは対象的に、俺は少しばかり気後れ気味であった。やはり俺は「冬の田んぼに水を得た菅原」なのである。ゆえに今回は米粉料理をご馳になり、手短に田んぼの話をすませ、あとはお暇しようなどと考えていた。 そえ思っていると、「菅原さん!料理しないさい!」との叱咤が飛んできた。振り向くと岡野さんが米粉をこね回している。ずうずうしさに関しては人後に落ちない俺であるが、さすが岡野
そうかと思い、消極的ながらも米粉のピザ生地を練り始めた。米粉の生地を触るとサラサラとしてべとつかないので、なかなか心地が良い。そしてこの生地に全体重を乗せ、両手で押しつぶすと、グニャっ潰れるものの、しかしちぎれるわけでもなく、ガムのような強靱なコシが俺の二の腕に伝わってくる。 「米なんだろうが、全然米らしくないな〜」などと感心していると、その脇で、啓子さんが手際良く生地を練っている。そこで俺も啓子さんを真似して生地を練ってみるのだが、これがなかなか思うようにいかない。結構難しいもんである。 始めのうちは悪戦苦闘しながらの生地練りで
子供達のところに行くと、一生懸命ハート型のピザ生地を練ろうとしている。しかし、なかなかうまくいかない。岡野さんもチャレンジしてみたが挫折したようである。それを見て俺は「お嬢様方、通りすがりの者ですが、あっしにお任せ下さい。」などと仁義を切った。いつしか俺の心の中で、米粉クッキングに対するファイティングスピリッツがブレイクしていたのである。 今回の米粉クッキングでは、ピザ、ドーナッツ、グラタン、フルーツポンチ風の色とりどりな団子を作った。試食してみたが、皆いずれも美味なる料理である。小麦粉に比べ、なんら遜色が無い。 試食中、啓子さんの米粉料理の講義があったが、これもなかなか興味深いものだった。曰く「ご飯は甘味を有するが、これは米粉パンも同様であり噛むほどに甘みを増す。そして、そのモチモチなる食感は日本人の舌に良くなじむゆえ、米粉パンは、まさに稲作の国、日本の「パン」と言っても、過言ではないであろう。」とのことだ。 啓子さんの次に俺が田んぼの話をした。内容は「生き物一杯「自然に優しく」、労力も負担も小さい「自分に優しい」」の「あわよくば無農薬水稲栽培」についてである。少しでも「田んぼの力」を参加者の方々に知ってもらえたらと思った。 考えてみれば、米の料理とはいっても、ご飯、お握り、丼物だけではなく、様々な発想があってよいはずである。事実、過去に俺もバレンタインデーライスなどいうものを企画し、世間に打って出たことがあった。反響はいまいちではあったが、しかし、それでもいくつか反応があり、そういった方々と新たな米食文化を創造することで、物事にチャレンジするという楽しみを共有できたわけである。 このように考えると、世の中にはいろんな可能性が転がっているように感じてくる。「米を作る」このことに対する限界を感じていた頃もあったが、もう少し視点を変え「米を創る」、そう考えれば新しい可能性が見えてきそうである。俺はハート型の米粉ピザを食べながら、そんな気まぐれを頭の中によぎらせるのであった。 |
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