ストーリー
2005年4月24日放送 第十六回「試練の時」(演出:柳川強) 鎌倉。 義経(滝沢秀明)が富士川の戦いで再会した静(石原さとみ)を鎌倉に連れ帰ってから、1ヶ月が経とうとしていた。 静の足の怪我は、もう少しで杖がなくても歩けるようになるまでに回復していた。 義経と静が歩く姿を、木陰から政子(財前直見)と侍女の手古奈(上原美佐)が見ていた。 政子は義経を想う幸せそうな様子の静を羨む。 その日、義経の館を平泉へ向かう途中の吉次(市川左團次)が訪れる。 吉次との久しぶりの対面を喜ぶ義経、弁慶(松平健)、三郎(南原清隆)、次郎(うじきつよし)、喜三太(伊藤淳史)、継信(宮内敦士)、忠信(海東健)。 そこへ静が現れ、次郎に京の様子を問われた吉次は、京の無残な有様を話す。 その頃、人の少なくなった京の町中には数多の盗賊が出没していた。 京に残った人々の中には飢えて亡くなる者もあり、人殺しや盗みなど不法がまかり通っていた。 福原の清盛(渡哲也)は、五足(北村有起哉)から京の様子を聞いていた。 福原・籠の御所。 宗盛(鶴見辰吾)は嫡男の清宗(塩顕治)を連れ、後白河法皇(平幹二朗)に拝謁していた。 法皇は清宗を見て幼かった頃の宗盛を懐かしみ、荒れ果てた京を嘆き悲しむ。 法皇の様子に心を痛めながら退出する宗盛だが、法皇は宗盛を手懐けるのは容易いとほくそ笑む。 宗盛は清盛に都還りを進言するが、清盛は跡継ぎが世情に惑わされて物事を覆していては、平家に仇なす者の餌食になると叱責する。 庭で時子(松坂慶子)に声をかけられた宗盛は、自分は本当は清盛と時子の子ではなく、法皇の子ではないのかと問い質す。 自分の眉にある旋毛と同じものが法皇にもあると話す宗盛に、時子はそれが事実なら宗盛はもっと早く官位を登りつめていたと一笑する。 それから数日後、清盛は一門の者を集め、都還りについての意見を求める。 時忠(大橋吾郎)は都還りなどと笑い飛ばすが、宗盛をはじめ知盛(阿部寛)、重衡(細川茂樹)、頼盛(三浦浩一)、維盛(賀集利樹)、資盛(小泉孝太郎)は都還りを願い出る。 その3日後、清盛は京に都を戻すことを命じる。 鎌倉。 義母の牧の方(田中美奈子)からある噂を聞いた政子。 噂を確かめる為に道を急ぐ政子を、偶然1人で野の花を摘んでいた義経が見かける。 義経が政子の後を追うと、そこにはとある家で亀の前(松嶋尚美)の足の爪を切りながら寛ぐ頼朝(中井貴一)の姿があった。 驚いて慌てて身を隠す義経。 楽しそうな頼朝と亀の前の姿を見て嫉妬に打ち震える政子は、その場を走り去る途上に義経に気付く。 政子に謝り頼朝の気の迷いと慰める義経だが、政子は無言で立ち去る。 その夜、燃えている家の外にいた女子を助けたと、三郎達が亀の前を連れて義経の館に戻る。 確かめもせずに火をかけた政子を咎める頼朝に対して、家さえ無くなれば命までは取らないと開き直る政子。 政子が怖いと怯える亀の前は、頼朝に知らせるという義経を止め、伊豆の親兄弟の元へ戻りたいと告げる。 焼け跡で亀の前を想う頼朝。 亀の前は伊豆へ帰って行き、その後2度と頼朝の前に現れることはなかった。 義経の館。 義経と静は2人揃って笛を奏で、頼朝と亀の前について語る。 白拍子の生活について話す静に、鎌倉での暮らしと京での暮らしとどちらが良いか尋ねる義経。 静を都へ帰したくないと告げる義経に、自分も義経の側にいたいと答える静。 足が治らなければいいと願っていたと告げる静を抱きしめる義経。 治承4年(1180年)12月12日。 頼朝の新居が大倉の地に完成し、300人を越す武士が出仕して引き移りの儀式が行われる。 この日を境に東国では頼朝ただ1人を主とし、頼朝は「鎌倉殿」と称されることとなる。 儀式に出仕した300人の武士の中には、石橋山の戦いで敗れた頼朝達を見逃した梶原景時(中尾彬)と嫡男の景季(小栗旬)もいた。 儀式後、義経は景時、景季と挨拶を交わす。 頼朝は時政(小林稔侍)、政子と共に酒を酌み交わしながら、景時を侍所所司に登用すると話す。 政子は義経の人を引きつける魅力が、後々に頼朝を脅かす勢力を持つ危険性を告げ、時政も義経を重用すれば今まで仕えていた御家人から不満が出ると頼朝に進言する。 奥州から駆けつけた義経を無下にはできないと答える頼朝に、時政は義経に仕える佐藤兄弟は藤原秀衡(高橋英樹)の意を受けているかもしれないと告げる。 義経をも疑う時政を咎める頼朝に、頼朝の母の言葉通り嫡流と庶流のけじめをつけることを勧める政子。 しばらく後、鶴岡八幡宮の若宮本殿の上棟式が行われ、造営に携わった大工達に褒美として馬が与えられることになった。 名を呼ばれた者は大工に与える馬を引くよう命じられ、天野遠景(真夏竜)、土肥実平(谷本一)らの名が呼ばれた後、頼朝の口から義経の名が付け加えられる。 匠達への馬を引くのは本来家来のすることで、鎌倉殿の弟がすることではない為、義経のみではなく他の御家人にとっても思いも寄らないことだった。 戸惑う義経に再度馬を引くことを命じる頼朝。 義経は返事をして立ち上がり、他の御家人と共に馬を引く。 頼朝の傍らで満足そうに微笑む政子。 義経の館では、弁慶達が義経の帰りを待っていた。 そこへ義経が戻り、弁慶達は義経が馬を引いたことは事実かと問い質す。 義経の受けた扱いに憤慨する郎党。 義経は自分はまだ何の働きの無いのだから当然だと話し、今後自分を頼朝の弟ではなく御家人の1人と思うよう言い渡す。 弁慶達は義経の為にも、自分達が1つになって働き武勲を立てることを誓い合う。 皆で唄い気炎を上げる郎党達を見守りながら、義経は陰からそっと見ている静と頷き合う。 |
2005年5月1日放送 第十七回「弁慶の泣き所」(演出:柳川強) 義経(滝沢秀明)が鎌倉に入って2ヶ月が経った。 弁慶(松平健)達郎党が畑仕事をしていると、日頃三郎(南原清隆)が遊び相手をしている子供の親が野菜を持って訪れる。 野菜を受け取り奥へ持って行く静(石原さとみ)に、足も治ったので早く京へ戻るよう告げる弁慶。 義経と静の関係に気付いている三郎と次郎(うじきつよし)は、弁慶を納屋に連れて行き男女の仲について説明する。 弁慶は2人の言う意味が理解できず、怒って納屋を出て行く。 海に向かった弁慶は、海水で顔を洗っていた時に波に足を取られて溺れてしまう。 助けを求める弁慶に気付き、船から誰かが海へと飛び込む。 小屋で目を覚ました弁慶は、目の前にいる女の裸を見て驚く。 女は千鳥(中島知子)といい、溺れた弁慶を助けて小屋まで運び込んだと話すが、裸を見て気が動転した弁慶は羽目板を突き破って逃げるようにその場から走り去る。 その夜、いつもと様子が違う弁慶を心配する継信(宮内敦士)と忠信(海東健)だが、三郎と次郎は自分達の説教が身に応えたのだと笑う。 そこへ千鳥の父親の杢助(水島涼太)が、弁慶が千鳥の肌を見たと怒鳴り込んでくる。 娘は弁慶に無体なことをされた、何とかしろと怒鳴りつけて去って行く杢助。 三郎達に詳細を聞かれ困る弁慶に、杢助と千鳥に申し開きすることがあれば伝えに行くよう諭す義経。 千鳥の家を訪れた弁慶は千鳥に対して、自分は幼い頃から仏門に入っていた為に泳げない、女の肌を見たのは初めてなので狼狽したと必死に弁明する。 千鳥は弁慶が自分を女と言ったことを嬉しそうに笑う。 千鳥が笑ったことの意味が解らず混乱する弁慶。 ところが数日後、千鳥の元に足繁く通う弁慶の姿を、三郎、次郎、喜三太(伊藤淳史)の3人が見てしまう。 仲良く網を縫う弁慶と千鳥をそっと覗き見する3人は、弁慶に対しては知らなかったことにしようと話し合う。 福原。 都が福原から京に戻ることになり、人々は次々と福原を去って行く。 京に戻る為に挨拶に訪れた知盛(阿部寛)と明子(夏川結衣)に、暫くは福原に留まると話す清盛(渡哲也)。 淋しそうに夕陽を見る清盛の前に時子(松坂慶子)が現れ、明日京に戻ると告げる。 福原で新しい国を作るという夢を見たと時子に語る清盛。 やがて清盛は自らが手にしていた政を法皇(平幹二郎)に返し、ここに院政が復活する。 鎌倉。 頼朝(中井貴一)の元に集まった御家人の住む屋敷が次々と建てられ、頼朝を要とする武士達の新しい町造りが始まる。 鎌倉は町も人も活気に溢れていた。 その頃、政子(財前直見)は義経を呼び出し、頼朝が義経に嫁を取らせることを考えている様子だと告げる。 誰か相手がいるのかと聞かれた義経は否定するが、急な話なので心が定まるまで猶予が欲しいと答える。 帰り道、義経から頼朝が嫁を取るよう言っていると聞かされ、驚く弁慶と喜三太。 その夜、納屋に集まり、頼朝から出た嫁取りの話や静のことを話し合う弁慶達。 しかし弁慶達の話を、薪を取りに来た静が聞いてしまう。 思いつめた表情で海を見つめる静。 政子は頼朝に、義経に嫁取りの話をしたと告げる。 義経の返事を聞き、ためらいの原因が静だと確信する頼朝。 平家の陣に従って来たのに、助けられた義経と良い仲になる静に嫌悪感を抱く政子。 男に縋って生きる女を嫌う政子は、男がいなくても凛としていると侍女の手古奈(上原美佐)を褒める。 政子の言葉を聞き、傍らに控える手古奈を見る頼朝。 頼朝は義経は都ぶりが抜けていない、鎌倉に相応しい嫁を娶るのが道理と政子に話す。 夜、弁慶達が酒を飲む中、1人庭を見つめ考え込む義経。 そこに静が現れ、頼朝から嫁取りの話があるのに自分がいては迷惑になるから京に戻ると告げる。 京に戻らず鎌倉の他の所に移ってはと勧める三郎と次郎だが、静の決心は固い。 並んで一緒に笛を奏でる義経と静を、弁慶が陰から見ていた。 義経の館に、千鳥を連れて杢助が怒鳴り込んで来る。 弁慶が千鳥にもう会わないと告げたと聞き、義経は理由を問い質す。 弁慶は静と離れ離れになる義経の無念を考えれば、自分と千鳥の関係を続けることはできないと話す。 義経は自分達と弁慶達とは別で、千鳥に対して実の無い振る舞いをする家来はいらないと弁慶に告げる。 静は千鳥に自分が去った後の義経主従の世話を頼み、千鳥も承諾する。 その頃、都では平家が各地で次々起こる反乱を鎮める為に、知盛を頭に出陣を繰り返していた。 奈良では平家が攻めて来るという噂に興福寺の衆徒が騒ぎ出し、清盛は重衡(細川茂樹)を奈良に攻め入らせる。 重衡は火を放ち、興福寺を始め東大寺や大仏までも焼失するという前代未聞の所業に及ぶ。 重衡に仏の罰が下るのではと、泣いて縋る重衡の妻の輔子(戸田菜穂)を慰める時子。 京に戻って西八条第にいた清盛は、蓬を見ながら飾りのないものは清々しいと五足(北村有起哉)に語る。 五足は清盛がいつも手にしていた菩提樹の数珠が無いことに気付き、清盛に問う。 福原に忘れて来たと答える清盛。 最近の平家への災いは数珠を忘れたせいではと気に病む五足は、自分が福原に取りに行くと申し出るが、清盛はまた福原に行くからと退ける。 鎌倉。 夜、旅姿の1人の女が義経の館へ駆け込んでくる。 怪しむ三郎の声に振り返った女は、手古奈であった。 義経主従の前に通された手古奈は、自分を匿ってほしいと願い出る。 理由を聞かれた手古奈は、最近の頼朝の様子が怖ろしいので屋敷を出奔してきたと話す。 政子が留守の時に頼朝から話の相手にと何度も呼び出しを受け、いつ閨に召されるかと解らない、亀の前(松嶋尚美)に対する政子の仕打ちを知っているので政子が怖いと訴える手古奈。 出奔して何処へと義経から問われた手古奈は、生まれ育った京へ戻ると答える。 義経は手古奈に静を連れて行ってほしいと頼み、手古奈も承諾する。 別れの前夜、義経と静は京での再会を誓い合い、互いに名残を惜しむ。 翌日、手古奈と共に京へと向かう静を崖の上から見送る義経、弁慶、喜三太。 思わず静の名を叫ぶ弁慶の声に気付いた静が振り返る。 手を振る義経に頭を下げ、京へと去って行く静。 治承5年正月、鎌倉の朝は冷え込んでいた。 |
(一部敬称略)
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