ストーリー
2005年6月5日放送 第二十二回「宿命の上洛」(演出:柳川強) 寿永2年夏。 鎌倉を出た義経(滝沢秀明)は、軍勢約500騎を率いて西へと向かっていた。 武士としての役目らしい役目のなかった義経にとって、兄・頼朝(中井貴一)からの出陣命令は大きい喜びであった。 自ら同行を申し出た景季(小栗旬)が、平家勢が北国から敗走を続けているとの鎌倉からの知らせを義経に報告する。 一気に都へと気鋭を上げる弁慶(松平健)達を、当面は義仲(小澤征悦)の抑えと嗜める義経。 都や義仲の様子をもっと詳しく知りたいという義経に、物見を出すことを進言する継信(宮内敦士)。 妙な動きをしては危ないと心配する忠信(海東健)に、戦支度を外せば良いと鎧を脱ぎながら告げる三郎(南原清隆)。 次郎(うじきつよし)に物見に行く気かと問われた三郎は、三河辺りを駆け回った自分が相応しいと物見役を義経に願い出る。 義経の承諾を得た三郎は、偵察の為に都へと向かう。 義仲率いる木曾勢は倶利伽羅峠の戦に勝ち、平家の軍勢を完膚なきまでにに叩いていた。 兵の半分以上を失った平家勢は、総大将の維盛(賀集利樹)をはじめとして敗走を続けていた。 木曾勢には加賀国の武将から味方に加わりたいという申し出が多数あり、義仲は都を目指して気鋭を上げる。 北国に援軍をと息巻く宗盛(鶴見辰吾)に、今回の戦に10万の兵を出して倶利伽羅峠などの戦で7万を失った為、援軍は無いと告げる知盛(阿部寛)。 戻った3万の兵を出せばという時忠(大橋吾郎)の問いに、知盛はその3万の兵を出せば都の守りは手薄になると答える。 知盛から敗戦の報告を聞いた時子(松坂慶子)は、都と幼い帝を守ることが大事と告げる。 敗戦の報告を受けた丹後局(夏木マリ)や平知康(草刈正雄)は、激しく宗盛を叱責する。 状況に頭を痛める後白河法皇(平幹二朗)。 知康から最近公卿邸を襲っている夜盗についても叱責を受ける宗盛。 宗盛は維盛を都に戻らせずに近江に留まらせ、時忠に夜盗の群れを一掃するよう命ずる。 ある雨の夜、経子(森口瑤子)が時子の屋敷を訪れる。 黄金百袋、米千石の金子を拝借したいとの経子の申し出に、使い道を尋ねる時子。 一瞬口ごもる経子だが、意を決して理由を時子に話す。 小松谷の屋敷に経子の里方の雑色が1人を男を連れて現れ、経子に見せたい物があると告げる。 それは、維盛が重盛(勝村政信)から受け継ぎ今回の出陣に着けて行った紅裾濃縅の鎧兜だった。 その男がどういう経路で手に入れたかは解らないが鎧兜は本物で、経子は亡き重盛の形見の鎧兜を何としても取り戻したいと泣きながら時子に訴える。 義経一行は尾張に陣を敷いていた。 義経と弁慶は尾張にいることを懐かしむ。 次郎に理由を尋ねられ、近くの内海の庄は義経の父の義朝(加藤雅也)の最期の地で、義経は尾張で元服したと答える弁慶。 義経はあの頃の自分は新しき国を求めていたと話す。 どんな国かと問われ、いがみ合いも争いも無い穏やかな国と答える義経に、平泉がその国に思えたと告げる次郎。 しかし天下を見渡せば争いは止まず、自分も同族の義仲と戦になるかもしれないと嘆く義経に、新しき国を作る為に戦うと思うように諭す弁慶。 戦わなければ新しき国はできないのかと苦悩する義経。 そこへ三郎が偵察から戻ってくる。 木曾勢の勢いに平家は阻む力も無く木曾勢は都に迫っており、4、5日もすれば都に到着する勢いだと報告する三郎。 このまま木曾勢が都入りした場合の自分達の行動について尋ねる弁慶に、頼朝の下知がなければ動けないと答える義経。 できることなら戦は避けたいと言う義経は、三郎に再び木曾勢の近くに物見に行き、鎌倉の軍勢が都に向かっているとの噂を義仲の耳に入るように流せと命じる。 その噂を聞いて義仲が兵を退けば戦を避けられるという義経の考えを聞き、三郎は義仲の元へ向かう。 そして三郎は、義仲の陣営に向け噂を流すことに成功する。 しかし噂を聞いた義仲は頼朝より先に都へ入る為に、兼平(古本新之輔)に延暦寺に木曾勢に付くか否かの返事を急がすよう命じる。 都では義仲の軍勢が攻めてくることへの恐怖からか、平家の夜盗狩りが度を越して行われ、怪しいと見た者や抗う者は悉く斬り捨てられていた。 ある夜、時子の前にお徳(白石加代子)が現れる。 清盛(渡哲也)からお徳のことを聞いていた時子は、お徳に用向きを尋ねる。 お徳は時子に、夜盗の取り締まりに謂れの無い者を巻き込むことを辞めるよう願い出る。 朱雀の翁(梅津栄)が激怒している為だったが、お徳は自分の申し出を聞き入れてくれるのなら、重盛の鎧を手に入れて届けると告げる。 鎧のことを知るお徳に驚く時子だったが、お徳の申し出を受け入れる。 重盛の鎧を持っている黒漆(大村波彦)らの前に、朱雀の翁が烏丸(高橋耕次郎)と共に現れる。 朱雀の翁は手下に弓矢を射たせて黒漆を脅し、鎧を手に入れる。 周りの目を憚るように都に戻った維盛は時子に呼び出される。 維盛と同じく呼び出された経子と資盛(小泉孝太郎)は、目の前にある紅裾濃縅の鎧兜に驚く。 方々に手を尽くして手に入れたと告げる時子に感謝する維盛達。 そこへ鎧が戻ったと聞きつけた宗盛が現れる。 宗盛は維盛に紅裾濃縅が代々嫡流に受け継がれてきた鎧で、その大事な鎧を他人に手渡したその時から嫡流から離れたも同然と告げる。 驚く維盛や時子に、維盛は嫡流の座を自ら降りた、そうなれば鎧を受け取るのは平家の跡継ぎの自分だと言い放つ宗盛。 止むを得ず手放したと維盛を庇う資盛に、宗盛は僅かな兵糧と代々受け継いだ鎧を取り替えるなど武士に有るまじきことと話す。 宗盛は嗜める時子を無視し、維盛はその場を立ち去る。 維盛の後を追う資盛とその場で号泣する経子。 宗盛は嫡男の清宗(渡邉邦門)に紅裾濃縅の鎧を着けさせ、2人は喜び合う。 そこに現れた知盛は、宗盛の行為を責める。 空腹を満たす為なら獣を狩ったり魚を取るべきだ、そのような知恵も裁量も持ち合わせないことが維盛が嫡流として相応しくない証と言い切る宗盛。 知盛は戦の場に出ない宗盛には、維盛の舐めた辛酸は解らないと告げて立ち去る。 一方、義仲は比叡山延暦寺に味方に付くようにと、度々催促の文を出していた。 そして延暦寺を味方とした義仲は、いよいよ都を目指すこととなった。 戻って来た三郎から、木曾勢が越後から近江へと動き西へ向かっているとの報告を受ける義経。 弁慶達は延暦寺が木曾勢に味方し、木曾勢は都に向かっていることを知る。 義経は他に打つ手はないかと悩む。 義仲の行動が急過ぎると疑問に持つ次郎に、義高(富岡涼)を人質に取られたことが義仲を突き動かしているのではと答える三郎。 木曾勢と戦になり、義仲を討ったとなれば自分は義高の敵になるという義経の言葉に、黙り込む弁慶達。 義経が義仲を討たなくても平家が討つと話す弁慶に、義経はそうなれば今度は平家と一戦を交えることになると告げる。 弁慶の躊躇っているのかという問いに、躊躇っているのではなく運命ということを思ったと答える義経。 義経は頼朝と義仲の挟間、頼朝と平家の狭間に自分はいる、そのような絡まった糸の中に我等は足を踏み入れようとしていると弁慶達に告げる。 平家は義仲の軍勢が都を目指していると見極め、迎え撃つ為の兵を集め始めていた。 比叡山に陣を敷いた義仲軍に向けて出陣をする知盛は、出陣の前夜、妻の明子(夏川結衣)と向かい合っていた。 平家に知盛がいる限り都は安心と微笑む明子に、もしもの時の心得として聞いてほしいと話し出す知盛。 自分に万が一のことがあっても養育を引き受けている守貞親王を手元から放さず役目を全うしてほしい、母の時子の相談相手になってほしいと頭を下げて明子に頼む知盛。 まるで遺言だと笑う知盛に、涙を流しながら頷く明子。 翌日、平家勢は義仲の入京を阻止するために出陣するが、戦わずして軍勢を引いて戻る。 何故戻ったのかという宗盛の叱責に、平家軍は1千、義仲軍は1万だった為と答える知盛。 激怒する宗盛に、重衡(細川茂樹)は多くの兵を失った今は兵を惜しまねばならないと告げる。 知盛は宗盛に、都を一先ず義仲に明け渡すことを進言する。 驚く一同に、平家に縁の深い西国まで引いて兵を募り、再度都に攻め上り敵を蹴散らすのが賢明と話す知盛。 三種の神器と共に朝廷の方々も移ってもらうことは困難だと渋る宗盛を、知盛は福原遷都の時と同じと説得する。 宗盛は承諾し、重衡は時子や領子(かとうかずこ)らに都を出て西国へ移ることを告げる。 敵に後を向けて逃げるのかと怒る時子に、頼朝の首を墓前に供えよという亡き清盛の遺言を果たす為には、木曾勢と戦をせず力を蓄えねばならないと話す重衡。 時子は都落ちを承諾する。 平家一門の都落ちが決まりその準備で慌しい最中、一条長成(蛭子能収)が宗盛を訪ねて来る。 長成は平家一門が都を出ると聞き、福原の泊が描かれた屏風を届けに来たのだった。 屏風を見て、幼い頃に屏風に落書きをした牛若(神木隆之介)に福原への夢を語った清盛、自分が屏風に石を投げつけたことを思い出す宗盛。 宗盛は今日の平家の無念は福原から始まったと、屏風を燃やそうとする。 燃やそうと松明を近づけたその時、突風が吹き宗盛の手から松明を飛ばしてしまう。 自らの手で処分するのを断念した宗盛は、部下に屏風の始末を任せてその場を去る。 義経一行は比叡山が見えるところまで来ていた。 継信は義経に都は何年ぶりかと尋ね、義経と共に都を出た喜三太(伊藤淳史)が12年ぶりと答える。 山の向こうには懐かしき都があり、その都では何が義経を待っているのか。 義経には新たな試練の時が近付いていた。 |
2005年6月12日放送 第二十三回「九郎と義仲」(演出:柳川強) 鎌倉を出立した義経(滝沢秀明)は都の様子を探る為、近江に陣を置いた。 次郎(うじきつよし)の「曲者!」という声が響き、様子を見に出た義経達の目の前にはうつぼ(上戸彩)がいた。 朱雀の翁(梅津栄)の知り合いから義経を近江で見たと聞き、1人訪れたのだった。 久しぶりの再会を喜ぶ義経、弁慶(松平健)、三郎(南原清隆)、喜三太(伊藤淳史)。 うつぼから平家の都落ちを知らされた義経は、景季(小栗旬)に自ら都の様子を見に行きたいと告げ、景季も承知する。 都では平家が西国に落ちるという噂が広まり、大変な騒ぎとなっていた。 御所に出向いた宗盛は、西国落ちの同行を求めた後白河法皇(平幹二朗)が密かに御所を抜け出たことを知る。 法皇は丹後局(夏木マリ)らと共に比叡山延暦寺に身を隠していた。 木曾軍が延暦寺に陣を敷いていると知った法皇は、都に残っている安徳帝(市川男寅)、建礼門院徳子(中越典子)、三種の神器のことを心配する。 宗盛(鶴見辰吾)と知盛(阿部寛)から法皇が平家から逃げたと報告を受けた建礼門院徳子は、主上だけは何としても守って欲しいと頼み、知盛は命に代えてもと誓う。 宗盛は法皇に見捨てられた悔しさに涙を流す。 時子(松坂慶子)の元を、領子(かとうかずこ)と能子(後藤真希)が訪れていた。 領子は能子に、平家一門と共に西国落ちするつもりか問い質す。 生母の常盤(稲森いずみ)は都に残り、異父兄の義経も源氏の中にいるのだから平家一門に従わなくても良いと告げる領子に、自分の父は清盛(渡哲也)で、その血を引く自分は何があっても平家と運命を共にする覚悟だと答える能子。 能子の言葉に頷く時子。 この日、都の大路といわず小路といわず、都を落ちて行く平家の人々の車や輿、その供の者達の列が続いていた。 建礼門院徳子と安徳帝も三種の神器と共にその列の中にいた。 偵察の為に都へ入った義経主従らの前を平家の列が通るが、その中に妹の能子がいたとは義経には知る由もなかった。 偵察に出た弁慶達の帰りを待つ義経と喜三太。 弁慶が戻り、平家と袂を分かった法皇が比叡山にいることを義経に報告する。 三郎と次郎も戻り、平家が一先ず福原に留まる様子だと告げる。 そこへうつぼに伴われたお徳(白石加代子)が現れる。 七条の家で会いたい人との再会をしてはと申し出るお徳に、今回は物見だから断わる義経。 義経は都の異変や義仲(小澤征悦)の様子を近江の陣へ報告してくれるよう頼み、うつぼがその役目を引き受ける。 都に異変があったのは平家の都落ちから3日後のこと。 義仲の軍勢が都に入り、尾張にいた行家(大杉漣)も義仲の軍勢に合流していた。 自分が源氏の棟梁と喜ぶ義仲と巴(小池栄子)。 都に戻った法皇はこの日、義仲と行家を御所に召し出した。 作法を知らずいきなり名乗ろうとする義仲を、「直答はならない」と嗜める行家。 法皇の「平家に代わって都のことを頼む」との言葉に感激する義仲と行家。 行家の都に宿所を賜りたいとの申し出を聞き、慌てて自分もと申し出る義仲。 御所から戻った義仲から、法皇に都を頼むとの言葉を賜ったと聞き喜ぶ巴と兼光(堤大二郎)。 平家や頼朝(中井貴一)を討てとの言葉がなかったことを不満に思う巴と、行家の態度が気に入らない義仲。 法皇は粗野な義仲に不安を覚えるが、意のままに動くならば良いと丹後局に告げる。 鎌倉には頼朝がいるし、持ち駒は多ければ多いほど良いという法皇の言葉に頷く丹後局。 福原に立ち寄った平家の人々はこの夜、時子の発案で清盛の供養の為に管弦講を催す。 宗盛らが奏でる管弦の調べに聞き入る時子達。 廊下に1人佇む維盛(賀集利樹)は知盛に声をかけられる。 維盛は法皇の五十の賀に「青海波」を舞った頃の平家一門の誉が幻のようになったのは、戦で負け続けた自分の不甲斐なさのせいではと自分を責める。 知盛は、いつの頃からか平家一門の者が武門ではなく公家になっていたのが原因だと告げる。 琵琶の音に耳を傾ける時子の目に、清盛の幻影が映る。 時子は清盛に平家の現状を詫びるが、清盛は「これで良い」と告げて姿を消し、1匹の蛍が時子の前に現れ飛び去っていく。 翌日、清盛が築き上げた福原に自ら火をかけ、平家の者は西国へと落ちて行った。 そのことは近江の義経にも間もなく届いた。 清盛の夢の都が燃えたことを憂う義経の前に、1匹の蛍が現れ飛び去ってい行く。 8月に入り、法皇は平家と共にいる安徳帝の廃位を決める。 新たな帝を法皇が決めると知った義仲は、以仁王の子で法皇の孫に当たる北陸宮を推す。 皇位のことに口を挟む義仲に激怒する法皇や公家達。 武門の者がのさばる以前の昔の姿に戻したいと嘆く法皇に、法皇を守るのが武門の役目と同意する丹後局。 法皇は、これからは出すぎた武門は他の武門に潰させるのが良いと告げる。 8月20日に安徳帝の弟が践祚、後鳥羽天皇となった。 これにより、西国と都に2人の帝がいることなった。 三郎から北陸宮を推していた義仲が自分の意が通らなかったことに立腹し、兵を率いて都を出ると法皇を脅したとの報告を受ける義経主従。 義仲の出方に驚いた法皇は、義仲を従五位下左馬頭兼越後守に任じるが、越後は元々自分の物と義仲は不満をぶちまける。 恐れを知らない義仲には法皇も打つ手が無く、義仲を新たに伊予守に任じる。 法皇も自分には逆らえない、自分の天下だと酒を飲み気勢を上げる義仲主従。 その場にいた行家は、踊りの輪に加わりはしゃぐ義仲に呆れる。 鎌倉の頼朝の元には、法皇から上洛を促す書状が届いていた。 法皇は手こずっている義仲の抑えに自分を遣うつもりだと話す頼朝に、上洛するのか尋ねる時政(小林稔侍)。 断わると答える頼朝に、時政は法皇の気分を害するのではと心配する。 「上洛のお誘い恐れ多き限りでございますが、鎌倉の様々なことで目下手一杯。それらの目処が付き次第上洛仕ります」と返事すると告げる頼朝に、満足気に同意する政子(財前直見)。 頼朝は上洛する場合は法皇に請われてという形にする方が恩を着せ易いと話し、時政も頷く。 秋の都は荒れていた。 義仲が都に入って2ヶ月、木曾兵の行状は乱れ始め、乱暴狼藉が日増しに酷くなっていたが、義仲にはそれを抑える術はなかった。 暴れる木曾兵の現場に遭遇した義経は、乱暴を止めようとするが弁慶に引き止められる。 義経は弁慶に義仲と1人で会いたいと告げ、弁慶の制止も聞かず1人で義仲に会いに行く。 従兄弟の義経と名乗る者が会いたがっているとの申し出に応じ、1人で現れる義仲。 義仲の前に姿を現した町人姿の義経を、義仲は本人と信じない。 義経は数年前、越後と信濃の国境で会ったことを話し、義仲もその時のことを思い出す。 義経が頼朝の下にいると聞いた義仲は、義経に刀を突きつけて自分を討ちに来たのかと尋ねる。 従兄弟として来たと答える義経に、刀を収める義仲。 義経は木曾勢の都での目に余る行動を鎮めて欲しいと願い出るが、義仲は都のことは行家に任せていると答える。 他に言うことがあるのではと尋ねる義仲に、頼朝と手を携え1つになるよう告げる義経。 人々の争いの無い穏やかな輝くような新しき国の為にと話す義経に、義仲は1つになるのなら源氏の棟梁の自分の下に頼朝が来るべきと告げ、自分の父は義経の父に謀られて殺された、身内の絆に頼っても裏切られると声を荒げる。 親兄弟叔父甥には美しき情愛のみがあると思うのは幻、義経は幻をつかもうとしているという義仲の言葉を否定する義経。 義仲は「身内はその情に甘えて図に乗り、やがて裏切る。他人の裏切りは所詮他人故と諦めがつくが、身内の裏切りは信用もし情愛もあると思うが故、その憎しみも大きくなる」と告げる。 義経は義仲と頼朝の間に万一のことがあれば義高(富岡涼)が哀れだと話し、その言葉に動揺する義仲。 義高の「息災にしております」という言伝を聞いた義仲は心動かされるが、源氏の子として都をこの手にするという夢が叶おうとしている今、それを邪魔するものは嫡流といえど容赦しないと義経に告げる。 立ち去ろうとする義経を呼び止めた義仲は、義高に会う折があれば「すまぬ」と伝えるよう頼む。 屋敷を出て歩く義経は、かって見た義仲は明朗で磊落であったと思い起こしていた。 ところが今はその面影は薄れ、頑なな意地と荒ぶる心に捕らわれていた。 義経には少し哀しい秋の宵であった。 |
(一部敬称略)
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