Track 3. 秘密

最近、どうも和葉の様子がおかしい。
俺の目を盗んだつもりになって、誰かとこそこそ電話してるし、メールのやりとりも増えてるようやし、俺からわざと目を逸らすようなことが何度もあり、かと思えば、無理な笑いを浮かべてみたり……

「平次、どうかしたん?」
「へ?」
「大会は明日なんやし、こんなとこでぼぅーっとしてないで、はよ、練習に行った、行った!」
「あ、ああ……」

まあええ。探偵の目を欺こうなんぞ、千年は早いわってこと、すぐにわからせてやるわ!

翌日。

「これでベスト4や! 今年もこのまま優勝まで行けるんとちゃう?」
「何、アホなこと言うてる! この大阪で俺に勝てる高校生なんか、おるわけないやろ?」
「そやったね」

試合は快勝に次ぐ快勝やというのに、和葉の顔を見てると何やイライラする。
朝から妙にチャラチャラしてたかと思うと、急にソワソワし始めたり……
そう。まるで、大切な誰かを待っているよう―――

「もうええ。和葉、お前は観客席に戻れ!」
「え? 何でなん?」
「何でもええわ! 第一、お前は元々、部外者のはずや」
「そやかて……」

「和葉ちゃーん!」
「あ、蘭ちゃん!」

はあ? ここでなんで工藤とあの姉ちゃんが現れるんや?

「和葉、どういうことや?」
「去年の近畿大会の時、蘭ちゃんたちにせっかく来てもらったのに、平次の試合、見れなかったやろ? せやから、今年こそは見てもらおう思って……」
「せやったら、何で先に俺に言わんかった?」
「工藤君が忙しいから、ちゃんと来られるかどうかわからないって、蘭ちゃんから聞いてたし。それに…」
「オメーに試合に集中してもらいたかったから、不確定要素は伝えたくなかったんだろ。だよね、遠山さん?」
「あ、うん……」

和葉の奴、なんでそこで顔を赤くするねん。
工藤も工藤や。こんなところで猫被って涼しい顔しようて。ホンマ、感じ悪いわ、コイツ……

「まあええわ。けど、和葉。せやったらなんで近畿大会に呼ばんのや?」
「だって、去年あんな事件があったし、なんや縁起が悪いやもん……」

「服部君、すごく気合入ってるみたいだね」
「ああ。服部の相手はアンラッキーだよな……」
「え?」
「本人は相当イラついてるんだろうけど、その苛立ちをしっかり集中に繋げてるようだし、今日の服部じゃ、勝てる相手は高校生でなくても、早々いないだろうな」
「そうね」
「これも、遠山さんのおかげってとこか。まあ、当の本人たちは気付いてないだろうけど」

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無茶をし過ぎて、完全に自滅したって感じですね、これ(苦笑)。
新一の和葉ちゃんの呼び方については、最後まで悩んだんですけど、フェミニストな新一なら名字かなってことで。コナンは和葉ちゃんって呼んでいたんですけどね。

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