梅雨時の休日。
暇を持て余していたところにかかってきたのは、『一緒にDVDでも見ない?』という親友からの電話。もちろん、私は二つ返事でOK。
親友が借りてきたDVDは最近はやりのジャパニーズホラー。人一倍恐がりなくせに、ホラー映画とかは見たがるから不思議よね。
本当はあなたの言う『幼なじみ』と一緒に見たかったんじゃない? でも、その大切は『幼なじみ』は事件とやらに夢中だから。
1枚目のDVDを見終わる。
未だ恐怖の余韻に浸っているらしく、親友の肩は小刻みに揺れていた。いつものように少しだけからかって、時計に目を向けると午後2時の少し前。私は無意識のうちに窓の外に目を向け、ソワソワし始めていた。
「どうしたの、園子? 本当は今日、何か予定があったとか?」
「そうじゃないんだけど、ちょっとね……」
休日はいつもそう。
午後2時前後は、どうしても落ち着かない。
学校から帰ってきて、自分の部屋のドアを開け、机の上を見る時と同じくらいに緊張してしまうの。
不意にテレビから聞こえてきたのは、カーペンターズの『 PLEASE MR. POSTMAN 』。
〜 ちょっと待ってよ、郵便屋さん! その中に、私宛の手紙とか無いの? 〜
ため息と共に、思わず呟いちゃったじゃないの。「タイミング良すぎ」って。
「そっか、京極さんからの手紙を待ってたんだ!」
「う、うん、まあね」
そう、休日に郵便物を届けてくれるのは、大体午後2時前後だから。
「何か男の子ってズルイよね。先に自分だけ夢中なものを見つけちゃって。後に残された女の子は待つことしか出来ないのに……」
「蘭?」
「あ、ゴメン。何か変なことを言ってるよね、私」
そうよね、あなたもずっと待っているのよね、『単なる幼なじみ』とやらを。
「だからと言って、待つのを止めることもできないのよね? だって、誰かを好きでいることを簡単に止めるなんて出来ないから」
「え?」
「ありがとう、蘭。蘭が親友でいてくれて、本当に良かった!」
予想外の切り返しに、親友は顔を真っ赤にして困惑した様子。
今さら否定しても無駄よ? 誰が見たって、今のあなたは恋する女の子!
本当はもう少しからかってみようかとも思ったけど、大切ないわゆる同士だもの。ここは我慢しとくわ。
本日2本目のDVDもやっぱりホラー。
期待を裏切ることなく、悲鳴を上げては私に抱きついてくる我が同士は、いつにも増して可愛らしくって。
(早く戻ってきてあげないと、蘭に抱きつかれる特権を譲ってあげないわよ、新一君?)
ちなみに、私が待ち焦がれていた手紙が届いたのは、それから3日後のこと。相変わらず素っ気無い文面だけど、手紙の最後には、来週には一時帰国するとの文字が。
つらいと思うことがないとは言わないけれど、やっぱり、私には好きな人を待つことを止められないみたいね。
京極さんならメールとかよりやっぱり手紙かなってことで、こういう話を書いてみました。
園子ちゃんと蘭ちゃんの関係は凄く好きなんですけど、いざ書くと難しいですね。
ちなみに、読んでおわかりかとは思いますが、新一はコナンになっている時の話です。