エピローグ

「ねえ、新一。今度の日曜日、新一の家に行ってもいい?」
「ああ、別に構わねーけど。ただし、事件で呼び出されなければの話だがな」
「そうだったわね。でも、一応予定に入れといてね。一緒に見たいDVDがあるから」
「わかったよ。ちゃんと頭に入れとくから」
「頼んだわよ」
「大丈夫だってーの」

日曜日、新一が警視庁から呼び出されなかった事に、私はホッと胸を撫で下ろしていた。そう、ロスでの事を話したいと思ってたから。
バッグの中に一本のDVDを携え、私は新一の家を訪れた。私の用意した昼食を『美味しかった』と言って食べ終える。急いで後片付けを済ませて、私はバッグの中からDVDを取り出した。

「おい。蘭が見たかったのって… コレなのか?」
「そう。シャロン・ヴィンヤード主演のよ」

新一が驚くのも無理が無い。そう、私達は彼女を正体を知っていたのだから……

「あのね、実はロスでおばさまと買い物に行った時に、おばさまにシャロンのお墓まで連れて行って貰ったのよ」
「シャロンの墓だって? 何でまた?」
「何でって、花を手向けたかったから……かな。深い意味は無かったんだけど、どうしても行きたいと思ったから」

新一は相変わらず不思議そうに私を見ている。

「パンドラの箱の話をしてくれたでしょ? 私、その話を聞いてから考えてた事があってね。シャロンにとっても新一が追っていた組織がパンドラの箱だったのかなと。だとしたら、彼女にとっての残された希望は何だったのかしらと思って。お墓に行けば何かわかるかもって思ったから」
「それで、わかったのか? その希望っていうのは」
「おばさまは、私達だったんじゃないかって。私も何となくそうじゃないのかなって思えたの」
「俺達が希望……か。案外、ありかもな、それ」
「私もそう思ったからもう一度、シャロンの演技が見たいなって思って、それで今日、ここに来たって訳なの。今見たら、今までとは別人の彼女が見れそうじゃない?」
「そうだな」
「それに、私は今でも女優としてのシャロンは好きだから……」

そう言って、私はDVDをセットする。
内容はサスペンスもの。犯人を追い詰めていく側の彼女は、圧倒的な存在感を見せていた。まるで、彼女にとっての真実を追求するかのように、そんな風に私には彼女の姿が映っていた。

画面の中で誰よりも輝きを見せる彼女は、二人にとって長く辛い戦いの始まりをもたらし、そして、その戦いに終わりをもたらした人物でもあった。

留意がコナンで小説を書こうと思ったとき、まず最初に組織との対決後の精神面での決着を書かなければ思い、この3部作ができました。せっかく、組織との決着が付いたのに、同じような不安をそれぞれが抱くようでは、真の決着が付いていないのでは?と思えたからです。同時に、この対決を経て、それぞれの精神面での成長を書ければとの思いもありました。とはいえ、留意の拙い文章力です。思うように書けていないのが実情ですが……

追記(04/3/19)。

肝心なことを書き忘れていました。
こんな小説を書きましたが、留意は原作でベルモットは死なないと思ってます。では、なぜ、作中で殺してしまったかというと、単に留意の想像力が不足していたためです。この小説を書く前に決めておいたルールの中に、
  ・黒の組織との戦いの初めと終わりにベルモットを絡ませること。
  ・APTX4869 の存在を、世間一般に知らせないこと。
  ・女優クリス・ヴィンヤードの犯罪歴も、世間一般に知らせないこと。
というのがあって、これらのルールを満たすために思いついたのがこの内容だった訳です。
留意はベルモットが好きですし、単なる悪人で終わらせたくないという思いもあったのかもしれません。

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