忍び寄る雑草の影

記録:平成15年6月 3日
掲載:平成15年6月16日
志波姫町の農家 菅原 

 6月3日、晴れ、田植えをしてから既に3週間近く経過した。田植えをしたときは通称ピッピという雑草が湛水した水田のあちこちに顔を出していた。まだひ弱な茎で、ところどころに申し訳なさそうに散在している。そんな雑草でも2週間程度で手の終えない雑草となってしまう。俗に言う雑草魂というもののたくましさを実感させられる瞬間だ。だから、俺は田植えの時は不耕起栽培を目指していたとは言え、やむおえず部分耕を行いながらの田植えを行った。
 普通であれば田植え後に除草剤を散布するところだが、今回は冬期湛水水田の除草効果により、除草剤は散布していない。つまり現段階では無農薬栽培を継続しているのだが、冬期湛水水田の除草効果をまるまる信じているわけではない俺としては、雑草が繁茂する懸念が生じた場合には躊躇なく除草剤を散布するつもりだ。
 それで3週間が経過し、現在の雑草の繁茂状況である。 我が菅原ファームではおおよそ4.8haの水田で、冬期湛水水田不耕起無農薬水稲栽培を実施している。筆数で言えば7筆だが、それぞれの田んぼでは雑草の生え方が異なっている。いずれの田んぼにも雑草は生えているが、大部分はピッピだ。このピッピという雑草はもともと畑に生える陸生の雑草で、点在しながら田んぼに生えている分には心配はない。湛水でいずれ枯れ行く運命にある。ピッピについては7筆の田んぼのうち、6筆は小さなやつが点在しているだけなので、俺としては冬期湛水水田の除草効果に感心させられている。この分だったら除草に関する限り、無農薬を継続していけそうだ。ただ、残り1筆については、ピッピが勢いよく繁茂してる状態で、このままでは水稲がピッピに負けてしまう可能性がある。養分をピッピに奪われてしまうからだ。
 俺の見る限り、それぞれの田んぼでのピッピ繁殖の違いには、それぞれに原因がある。一番ピッピの少ない田んぼは、たまたま用水取り入れの関係で水深を深くとっていた。もともとが水が苦手なピッピだけに、深水状態では生長し難い状態になっているだろう。
 それと、一番ピッピの繁殖している田んぼ。この田んぼは他の田んぼより遅い時期から冬期湛水を開始した、冬期の湛水時期が一番短い田んぼである。この湛水期間の長短がピッピの繁殖に影響しているのは間違いがないと考えている。ということは、稲刈り後、できるだけ早い時期から田んぼを湛水状態にしておけば、それだけピッピの繁殖を抑えることができることになる。これがわかっただけでも冬期湛水水田を試したかいがあったというものだ。
 ところで、ピッピの話ばかり続いたが、水中を苦手とするピッピは水田にとって、それほど怖い雑草ではない。怖いのは水中専門に生育するホタルイだ。このホタルイはすでに、ピッピが一番繁茂している水田にポツポツと芽を出している。このホタルイの繁殖状況によっては、少なくとも冬期間湛水水田7筆の田んぼのうち、1筆は無農薬栽培を断念しなければならないかもしれない。

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