雑草事始め |
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記録:平成15年6月19日 | ||||||||
掲載:平成15年7月12日 | ||||||||
大学の先生 秡川 | ||||||||
6月19日、10時30分すぎ東北農業研究センター着。10時50分ごろ伊藤さんに会えたが、会議中で席が外せないためセンター内のリンゴ園を見せていただく。
リンゴ農家でもある菅原さんとセンターの職員の方との話を漏れ聞く限りでは、作業効率の向上は必ずしも農家の快適さの改善につながらず、消費者の味に対するニーズと安全性に対するニーズも一致せず、どうも人間のやることには矛盾がつきまとうようだ。 故中島元場長の発案による北辰興農閣を見せていただいた。ここでは古代米品種「朝紫」が展示してある。丸森町の新規参入者の川端さん
農業研究に対する菅原さんの認識は深まった様子。問題解決への道は、問題を直視した人が拓いて行くのだろう。農家が研究所との距離を縮めて行く。興農閣にはそんな思いも込められているのではないだろうか。 伊藤さんに会い、持参した雑草を見てもらう。ホタルイとイボ草だけ抜いて来たつもりだったが、先端が丸く、指でつぶすと「プチプチ」と音の出るクログワイも混じっていた。両者とも菌による病気に弱いという話に思わず身をのり出す。 菅原さんの持参した見事なホタルイは株から増えたもの。耕起による株の破砕や土中への埋込以外に手はないらしい(クログワイには耕起も効かない)が、稲の紋枯れ病のように葉の中ほどを茶褐色に変化させ、枯死ないし生育を抑制する菌が存在するらしい。 その菌を製品化しようと、日本タバコ産業の研究所が開発に取り組んだそうだ。効果が不確実なため製品化は見送られたということだが、病変した茎葉をとり、乾燥後、破砕して圃場にばらまけば菌が蔓延し、抑草効果が発揮されるという。やってみるだけの価値はありそうだ。ただし、種ができてからまけば播種になる点に注意が必要。 イボ草は水を落とすと発芽し、数日で根が定着する。発芽直後が一番弱い時期で、この時に水を動かせば根を定着で
田植え時の落水時間を短くすればイボ草は発芽できない。何か工夫できそうだ。越冬株が深刻なら耕起するしかないかもしれない。しかし、耕起すればイボ草やコナギの発生が心配される。何もしない方が田んぼの神様(生態系)が助けてくれるかもしれない。 菅原さんの田んぼで菌は発生するのだろうか。そもそもホタルイは本当に悪さをしてるのだろうか。肥料の効きすぎでイネが成人病に罹るのを防いでくれているのではなかろうか。人間と寄生虫の関係だって近頃は見直されている。雑草はイネのコンパニオン・クロップ(共生作物)なのかもしれない。 自然に任せればお盆過ぎにご先祖様たちと一緒に旅立つ運命の草たちに除草剤をかけ、機械でかき混ぜ、人間が悪霊のようにしてしまっているだけなのかもしれない。 雑草対策で大豆粕をまいた1枚からとったホタルイ、クログワイの生育は旺盛、葉色も濃い。肥料効果のある大豆粕をまけばイネも育つが雑草も育つ。雑草の繁茂を招きながら、防除に苦しむ。菅原さんの近頃の持論「人間がすることは皆余計なこと」「人手を加えると後から余計に手間がかかる」を裏付けるものかもしれない。 「収穫時の圃場視察で偉い方を案内した時、中途で除草を諦めた農家の圃場を見てもらったら意外と雑草も少なくとれてんだな。その後、きちんと除草をしていた農家の圃場をみてもらったら、これがなんと草だらけ。お前、見せる順番が逆だろうと言われたけど、まぁそんなもんさ」と伊藤さん。 コナギやイボ草のように落水しないと発芽しない雑草には冬期湛水が有効。但し、均平、畦直し、深水などで地表面を出さないことがポイント。(この方法はオモダカにも応用できる。発芽直後、活着前には比重が1以下で水に浮く。水を張って代かきをした後、浮いたイモを集めれば一網打尽!)田植え時に落水しなければならない場合は、発芽直後に活着させないようにするのが決め手。出てしまったら圃場の特性を考えながら工夫する。
そんな技術に関する情報は、農文協で現代農業の編集をしていた山下さん(兵庫県在住)が主催しているML(除草剤を使わない稲作)上で紹介されている。 岩手から帰り、菅原さんの圃場へ向かう。6日ぶりに稲と雑草の生育状況を観察。稲の葉色は周辺の慣行圃場と変わらなくなってきた。ピッピ草(スズメノテッポウ)はかなり弱ってきている。イヌホタルイ、クログワイらしき雑草を見つけたが、伊藤さんの話を聞いた後ではまったく違った存在に見える。 |
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