資金会計理論の部屋

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資金別貸借対照表・ニュー資金別貸借対照表を使う

資金別貸借対照表・ニュー資金別貸借対照表を使う

A社貸借対照表・損益計算書です。


A 社貸借対照表
単位:百万円
資産 勘定科目 金額 負債 勘定科目 金額
流動資産

流動負債


現金預金 220
買掛金 160

売掛金 300
短期借入金 280

棚卸資産 150
未払金 30

未収入金 6
預り金 10

仮払金 2



立替金 1



貸倒引当金 ▲4
流動負債小計 489

流動資産小計 675 固定負債

有形固定資産


長期借入金 1070

建物 700 負債合計
1550

建物付属設備 200 純資産


構築物 170
資本金 50

機械装置 400
資本準備金 100

車両運搬具 140
利益準備金 5

工具器具備品 130
任意積立金 50

減価償却累計額 ▲1300
繰越利益剰余金 100

土地 500



有形固定資産小計 940


投資等





投資有価証券 240 純資産合計
305
資産合計
1855 負債・純資産合計
1855


A社損益計算書

A社 損益計算書 単位:百万円
売上高 1600
売上原価 1300
売上総利益 300
販売費及び一般管理費 280
営業利益 20
営業外収益 15
営業外費用 40
経常利益 ▲5
税引前当期純利益 ▲5
法人税等 0
純利益 ▲5

(注)正しい表記としては、経常損失、税引前当期純損失、当期純損失として、表記すべきですが、マイナス表示した方が、分かりやすい と思いましたので、経常利益のマイナス、当期純利益のマイナスのような形で表示しました 。

財務諸表を、一見して感じた点です。

・貸借対照表を見ると、、純資産の金額の割には、 有形固定資産、長期借入金の額が多いように思われます。

・売上高に対して、営業利益が、少ないように思われます。

・経常利益がマイナスになっていますが、これは、借入金の支払利息が、多額であるからではないかと、思われます。

・長期借入金、短期借入金の返済原資があるかどうかが、課題になりそうです。

上の損益計算書、貸借対照表を使って、資金別貸借対照表、ニュー資金別貸借対照表を作成します 。

ニュー資金別貸借対照表は、2つの固定資産の表示方法で、二つ作成します。

一つは、取得価額と減価償却累計額の両建ての方法

もう一つは、簿価表示の方法

の2種類です。

1.資金別貸借対照表です。


A社 資金別別貸借対照表

単位:百万円

現預金 資金運用 金額 資金調達 金額
   損益資金の部


引当金 4


利益準備金 5


任意積立金 50


前期繰越利益剰余金    105


小計 164


差・繰越損益等    164
売上原価   1300 売上高   1600
販売一般管理費    280 営業外収益    15
営業外費用    40 (税引前利益) ( ▲5 )

    (当期利益) ( ▲5 )
159 運用額合計   1620 調達額合計   1779

固定資金の部
棚卸資産    150 長期借入金   1070
(有形固定資産)
資本金 50
建物 700 資本準備金 100
建物付属設備 200

構築物 170

機械装置 400

車両運搬具 140

工具器具備品 130

減価償却累計額 ▲1300

土地 500

(投資等)


投資有価証券   240
   
▲110 運用額合計   1330 調達額合計   1220

売上仕入資金の部
売掛金   300 買掛金   160
▲140 運用額合計  300 調達額合計  160
  ▲91 安定資金

流動資金の部
未収入金 6 短期借入金   280
仮払金    2 未払金 30
立替金 1 預り金 10
 311 運用額合計  9 調達額合計  320
220 現預金合計


まず、最初に目につくのは、安定資金が、マイナス91であることです。

安定資金が、マイナスであるということは、この企業は、資金繰りが、切迫していることが予想されます。

安定資金が、マイナスであると、資金が切迫するということは、以前に、説明してありますので、そこを参照してください。

資金別に、見ていきましょう。

創業以来、今まで獲得してきた利益は、159あります。

固定資金の調達額が1220、運用額が1330、となっており、資金不足が、固定資金では110あります。

この資金不足110を、損益資金159が、カバーしています。

次の売上仕入資金が、サイト負けしており、140の資金不足を起こしています。

これが、安定資金を、▲91にしています。

難しいことですが、得意先に対して、回収サイトを短くしてもらい、仕入先に対して、支払サイトを長くしてもらう、という交渉を行 ない、売上仕入資金の改善が、必要であると考えられます。

新規の得意先、新規の仕入先・得意先に対してからでも、行うべきでしょう 。

安定資金のマイナスは、流動資金の短期借入金280によって、補填されています。

220の現金残高は、貸借対象表上の金額になっています。

長期借入金、短期借入金の返済原資を、確保することが、課題であると思われます 。

次に、ニュー別貸借対象表を作成します。

2.取得価額と減価償却累計額の両建ての方法


ニュー資金別別貸借対照表

単位:百万円

現預金 資金運用 金額 資金調達 金額
損益資金の部



減価償却累計額 1300


引当金 4


利益準備金 5


任意積立金 50


前期繰越利益剰余金    105
小計
小計 1464


差・繰越損益等   1464
売上原価   1300 売上高   1600
販売一般管理費    280 営業外収益    15
営業外費用    40 (税引前利益) ( ▲5 )

    (当期利益) ( ▲5 )
1459 運用額合計   1620 調達額合計   3079


売上仕入資金の部
売掛金   300 買掛金   160
▲140 運用額合計  300 調達額合計  160
1319 継続損益資金
固定資金の部
▲150 棚卸資産    150
1169 実質損益資金


資本金 50
資本準備金 100
150 調達額合計 150
1319 真正損益資金

(有形固定資産)

建物 700
建物付属設備 200
構築物 170
機械装置 400
車両運搬具 140
工具器具備品 130
土地 500
投資有価証券   240
▲2480 運用額合計 2480
▲1161 正味損益資金


長期借入金   1070
1070 調達額合計 1070
▲91 安定資金
流動資金の部


短期借入金   280
280 調達額合計 280
189 修正安定資金

未収入金 6 未払金 30
仮払金    2 預り金 10
立替金 1

31 運用額合計  9 調達額合計 40
220 現預金合計


損益資金、継続損益資金、実質損益資金の関係を図示したものです。



実質損益資金、真正損益資金、正味損益資金、安定資金の関係を、図示しました。


実質損益資金は、1169あり、資本金等が、150、合計すると、真正損益資金(資本金を含めた会社として所有している資金=会社の 持分)は、1319になります。

設備投資が、2480行行われており、正味損益資金(設備投資後の会社の持分)は、▲1161になります。

正味損益資金の穴埋めをするため、長期借入金が、1070行われていますが、それでも、穴埋めしきれず、安定資金が、▲91になって います。

このままでは、会社が、存続できませんので、短期借入金280を実行しています。

これによって、やっと修正安定資金が、189になりました。

安定資金が、マイナスであるということは、設備投資に使った資金が、短期借入金で、一部まかなわれている状況にあ るということです。

3.簿価表示の方法


ニュー資金別別貸借対照表

単位:百万円

現預金 資金運用 金額 資金調達 金額
損益資金の部
  

引当金 4


利益準備金 5


任意積立金 50


前期繰越利益剰余金    105
小計
小計 164


差・繰越損益等    164
売上原価   1300 売上高   1600
販売一般管理費    280 営業外収益    15
営業外費用    40 (税引前利益) ( ▲5 )

    (当期利益) ( ▲5 )
159 運用額合計   1620 調達額合計   1779
売上仕入資金の部

売掛金   300 買掛金   160
▲140 運用額合計  300 調達額合計  160
19 継続損益資金
固定資金の部
▲150 棚卸資産    150
▲131 実質損益資金


資本金 50
資本準備金 100
150 調達額合計 150
19 真正損益資金

(有形固定資産)

建物 700
建物付属設備 200
構築物 170
機械装置 400
車両運搬具 140
工具器具備品 130
減価償却累計額 ▲1300
土地 500
投資有価証券    240
▲1180 運用額合計 1180
▲1161 正味損益資金


長期借入金   1070
1070 調達額合計 1070
▲91 安定資金
流動資金の部


短期借入金   280
280 調達額合計 280
189 修正安定資金

未収入金 6 未払金 30
仮払金    2 預り金 10
立替金 1

31 運用額合計  9 調達額合計 40
220 現預金合計



損益資金、継続損益資金、実質損益資金の関関係を図示しました。


実質損益資金、真正損益資金、正味損益資金、安定資金の関係を、図示したものです。


1のニュー資金別貸借対照表と違って、このニュー資金別貸借対照表の表示では、実 質損益資金が、マイナスになっています。

実質損益資金は、マイナスですが、貸借対照表の純資産は、プラスです。

実質損益資産のマイナスは、資本金、資本準備金に食い込んでいる、と説明したと思いますが、A社の 純資産は、プラスです。
これが、資金上の話であるということが、 お分かりいただけたでしょうか。

継続損益資金、実質損益資金、真正損益資金欄まで、2のニュー資金別貸借対照表とは。違って状態の悪い数字が出ています。

正味損益資金以降からの数字は、同一の数字が使われています。

通常の会社が、減価償却累計額に該当する資金を、会社に残しているとは思えません。

減価償却累計額に該当する資金を、会社に残せるような企業は、相当裕福な会社であると言えるのではないでしょうか。

私は。簿価表示のニュー資金別貸借対照表の方が、財政状態を、よりシビアに見ることができ、こちらの方が、良いのではない かと考えて います

ニュー資金別貸借対照表の説明をいたします。

実質損益資金が、▲131になっています

実質損益資金が、▲131であるということは、資本金、資本準備金に、その分だけ食い込んでいるということです 。

会社としての持分である真正損益資金は、19しかありません。

その状況で、設備投資を1180しています。

設備投資後の会社の資金、正味損益資金は、▲1106です。

長期借入金を、1070調達していますが、それでも足りません。

短期借入金を280調達し、修正安定資金が189になっています。

長期借入金、短期借入金の返済原資を、どう確保するか、が課題です 。

貸借対照表、損益計算書を、見ただけでは、見れない側面が、見れたのでは ないでしょうか。

ニュー資金別貸借対照表で、会社を分析すると、財政状態が、よく見えてくると思います 。