田力つながり水田の記録

■木村水田 場所:石巻市和渕(旧河南町内)   
〜昭和の時代から無農薬〜

(1)地域概況
大河川が合流する背後の低平地
ほ場整備で整備された農道と木村水田

 木村水田は遠藤水田のある広渕沼の北側に隣接した区域にあり、北東側には北上川と江合川の合流部が位置する。地形は低平である。(H19.9記)

(2)用水源
河川からの直接取水
平成19年7月29日、水田状況

 かつては広淵沼や名鰭沼から取水していたが、これら沼が干拓された後は北上川からポンプ取水し、水路を通じて広域な水田地帯に灌漑している。
 平成8年には、ほ場整備事業により用排水が整備されたことで、小規模なポンプにより排水からの水を汲み上げ、用水の循環利用もされている。(H19.9記)
(3)農薬を使わない水田数
合計8haで10筆ある
 木村家では昭和63年より農薬と化学肥料を使わない稲作を継続している。最初は20aからの開始であったが、平成19年作において「農薬を使わない稲作」を営む水田は合計8ha、10筆となっている。(H19.9記)
 平成20年作では、さらに2筆の水田(J,K)で農薬を使わない稲作を開始した。(H20.8記)
図−1
(4)水田構造
平成8年にほ場整備を実施済み
 平成8年にほ場整備が実施済みであり、水田施設も近代的な水田に整備された。
 水田区画は1haを標準とし、長辺125m、短辺80mを基本とする。用水路はパイプラインで水田に直接灌漑され、排水路はコンクリートにより装工されている。暗渠排水も設置されている。(H19.9記)

(5)育苗方法

3/10 ノギ取り
3/15 塩水選
3/15〜3/30 水漬け
4/2 催芽
4/8 播種 150g播、有機肥料入り倍土(山土)、有機アグレット70g/枚
4/8〜5/16 育苗(苗代) プール育苗(ビニールハウス利用)、専用シート被覆
5/10〜5/20 田植え 移植時3.5〜4葉

(6)耕起状況
▼継続して耕起・代掻きを行う
平成19年7月29日、稲の生育状況

 
木村水田は、通常の慣行水田同様に、耕起代掻きを行う稲作である。(H19.9記)
 平成20年作では基本的に11月に秋耕、4月に春耕を行っているが、C・D水田では半不耕起(春耕のみで5cm程度の浅起こし)に止めた。(H20.8記)
(7)農薬使用
昭和63年より農薬を使わずの稲作を開始
 昭和63年に農薬と化学肥料を使わない稲作を開始し、現在では8haの水田で同様の稲作を行っている。(H19.9記)
 平成20年作では無農薬ほ場が約3ha増えて11.17ha、全耕作面積では12.87ha
となった。(H20.8記)
(8)施肥状況
▼田植え後の追肥は行わず
 木村水田の施肥方法は、基肥に重点を置き、追肥を行わないのが特徴である。
 基肥は市販の有機肥料(アグレット)を用いている。(H19.9記)
 平成20年作ではC・D水田で無施肥栽培を開始した。それ以外は4月に自家製ボカシを基肥として施肥している。
 また、平成19年作では、収量に影響を及ぼすほど害虫のイネツト虫が多発している。平成20年作においても、D水田で多く見られるようであるが、平成19年作に比較すれば大きなものではない。
 一般的にイネツト虫は葉の緑の濃い稲を好むとされる。このため土壌が肥沃であり、かつ肥料も十分に施肥された有機水田では、窒素が稲に十分に供給され、イネツト虫が好む稲となり易い。(参:田力本願「農薬を使わない害虫対策について」
 田力つながりの稲作ではイネツト虫が問題となることは希であるが、木村水田の土壌条件と施肥方法の特徴が、この害虫の発生に関係していると思われる。
 しかしながら土壌が肥沃であり、かつ基肥を施肥することでイネツト虫による減収が生じたとしても、木村水田では継続的に一定収量が堅持されており、イネツト虫による被害は収穫を上げるためのやむを得ない必要経費のようなものであろう。(H20.8記)

(9)雑草状況
▼主たる雑草はコナギとヒエ
 平成19年7月29日、写真は木村水田でもコ
ナギ繁茂の著しい部分。当日の観察では木村
水田内でも希な繁茂である。写真ではわかり
づらにいがコナギ繁茂部分の稲は色が薄く、
分株も少なく稲がコナギに負けている。
 木村水田の雑草は他の田力つながり水田よ
り少ない。

 
木村水田全体的に、雑草の量は多くないようである。主たる雑草はコナギヒエである。平成19年ではコナギが増加傾向にあるようだ。(H19.9記)
 平成20年作ではF水田にコナギの繁茂が目立っている。
 この水田が、他の水田に比較してコナギが顕著なのは、ほ場整備の際に山土を客土し、他の水田と土壌条件が異なること、また営農者の違いにより、除草時期と頻度の差に起因するものと思われる。
 F水田以外のほ場は、平成19年作に比較し、平成20年作はコナギなど雑草が少なくなったように見受けられる。
 また6月中旬頃には、F水田以外で藻(アミミドロ?)が多発したのも、平成20年作における雑草の特徴である。(H20.8記)

平成20年8月2日 F水田 平成20年8月2日 C水田

(10)雑草対策
▼アメンボ号、カルチ、手取りで除草を行う
▼ほ場整備の雑草対策効果
▼黒ボク土と雑草抑制の関係は?
 
木村水田では「冬期湛水」「不耕起栽培」、「田植え後の有機資材施肥」、といった他の田力つながりで取り組まれる「雑草抑制対策」は施していない。
 そのため、雑草対策の中心は除草機による除草作業がメインとなる。
 経営面積の規模が大きいこともあり、除草機は各種取り揃え、アメンボ号やカルチを用い、また補助的に手取り除草も行いながら6月中に2〜4回の除草を行う。
 これ以外に、木村水田はほ場整備が完了し、畦畔がしっかりしており効果的な深水管理が可能であり、また用水はパイプラインで水管理が容易である。こういった水田条件も、雑草対策に効果を発揮しているのかもしれない。これは「冬水田んぼクラブ」と同様の条件である。
 また水田土壌は黒く、これは「黒ボク土」のように観察される(土壌分析は未確認、観察からの推測)。このことは各地の田力つながり水田の観察結果から感じられるのだが、どうも黒ボク土の水田は、雑草が少ないように思われる。
 また木村氏によると、農薬を使わない稲作の継続年数が長い水田ほど、雑草が少ない傾向があるとのことだ。これと似た事例として、浦山水田の「雑草の少ない水田は、やっぱり少ない」との感想がある。
 木村水田が「田力つながり」となったのは、平成19年からであり、今後、黒ボク土と雑草の関係や農薬を使わないキャリアの長い水田ほど雑草が少ないといった傾向がどういったものであるか、継続的に観察していきたい。(H19.9記)

▼ダックホーによる局所重点除草

 平成20年作においても、基本的にアメンボ号とカルチによる除草を継続
ダッグホーによる除草
している。(6月初旬〜7月宇中旬 まで3〜4回程度)、平成20年作における特記事項としては、乗用型のアメンボ号による除草を行ったことである。この除草方法による作業時間は30a/時間程度である。
 また稲が成長した後の後期除草では、コナギの繁茂が著しい範囲を局部的にダックホーによる除草も行った。この作業は人力となるが腰をかがめずに除草を行えるため、肉体への負担が少なく、また機械除草では行えない稲の株間除草を行えるのもメリットである。(H20.8記)
(11)冬期湛水
▼冬期湛水は行わず
 
木村水田では冬期湛水を行っていない。(H19.9記)
 平成20年作では、C水田で隣接する排水路からポンプで揚水し、試行的に春期湛水を試みたが、揚水条件に支障が生じたため断念。(H20.8記)

(12)認証状況
▼平成元年以降、継続して宮城県有機認証を取得
 平成元年以降、継続して宮城県の認証制度を取得している。(H19.9記)
 平成20年作も同様に上記認証を取得中。(H20.8記)

(13)田力活動履歴

(14)個人ホームページ

 ・田でん虫むし田んぼのお米

(15)掲載内容更新履歴
・平成19年09月10日 本文掲載
・平成20年08月31日 「(5)育苗方法」、「(14)個人ホームページ」を追加
              その他平成20年作について追記
田力つながり田んぼの最新トピックを掲載しております。

<問い合わせ>
 本コンテンツはホームページ「稲と雑草と白鳥と人間と」に関係する農家から、農薬を使わない稲作」の方法と経過を聞き取り、また必要に応じて水田を観察した結果を記録しております。
 本記録は「農薬を使わない稲作」に取り組む、あるいは取り組もうとする「お米を作る」農家の方々への一助になればと考え掲載いたしました。そしてまた、そういった農業の現場を「お米を食べる」消費者の方々に伝えることで、新しき日本の農業を共に考えるきっかけになればと願っております。本ページに対する問い合わせにつきましては、こちらまで(←クリック)お願いいたします。(記:高奥)

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